2020年01月20日

しょぼい


「しょぼい」は、

勢いがない、さえない、ぱっとしない、みすぼらしい、

といった意味である(大辞林)が、どちらかというと、

貧乏臭い、

という含意がある気がする。ほぼ、

ちんけ、

と同義ではないか。「ちんけ」は、

さいころばくちで1の目を『ちん』ということから、

貧相な様、器量の小さいさま、

の意で使う(広辞苑)、とあるが、

程度の低いさま、
あるいは、
最低であるさま、

の意味が強い(精選版日本国語大辞典)。

「しょぼい」は、擬態語から来たとみる。たとえば、

しおしお、
しょぼしょぼ、
しょんぼり、

等々。「しおしお(しほしほ・しをしを)」は,「すごずご」http://ppnetwork.seesaa.net/article/452569207.htmlで触れたように、

萎萎,

と当てる例もあるが,

しとしとと濡れるさま,涙・雨などについていう,

とあり,どうやらその状態表現が転じて,というか,その状態をメタファに,

悲しくさびしそうなさま,悄然,

あるいは、

しかられたり、うち負かされて元気がなく、しおれている様子、

に意味を広げていったと見える。当然,

しおたれる(塩垂れる・潮垂れる),

という言葉が類推される。「塩垂れる」は,『広辞苑』には,

塩水に濡れて雫が垂れる,
転じて,涙で袖が濡れる,

さらに意味が転じて,

元気がない様子になる,

という意味になる、とあるが,『岩波古語辞典』には,

雫が垂れる,ぐっしょり濡れる,
涙にくれる,
みすぼらしい様子になる,貧相に元気のない様子になる,

の意味を載せる。「塩(潮)」は当て字ではないか。「しおたれる」に似た「しおれる」について,『日本語源広辞典』は,

「シホル(生気を失う)の下二段口語化」

とある。「しほる」は,

しをる,

であり,『岩波古語辞典』には,

「植物が雪や風に押されて,たわみ,うなだれる意」

とある。『大言海』は,

「撓ひ折る意か,或いは荒折(さびを)るるの約かと云ふ」

とある。つまり,

しおれた,

という状態表現なのである。このあたりが「しおしお」の由来と思われる。『擬音語・擬態語辞典』には,

「『源氏物語』の『しほしほと泣き給ふ』の『しほしほ』は,涙に濡れる様子を,江戸時代の女房詞『しほしほ』は涙の意を表した。室町末期の『日葡辞書』の『しをしを』には,『人が力をおとしたり,意気消沈したりして萎れるさま』とある。
 『しおしお』は,草木などが生気を失う意を表す『しをれる』の『しを』と関係がある。」

とし,「すごすご」「しょぼしょぼ」と「しおしお」を対比して,

「『しおしお』は元気なくしおれるような様子を表すのに対して,『しょぼしょぼ』は元気なく寂しそうで,しぼむような様子。『すごすご』は,目的が達成できず元気なくその場を立ち去る様子を表す。」

としている。

「しょぼしょぼ」「しょんぼり」、あるいは「しょぼん」は、「しおしお」の類義語になる。

「しょんぼり」は,

気落ちして沈んでいる様子,

だが,『日本語源広辞典』によると,

「しょぼしょぼ(擬態語)+り(副詞化)」

とあるし,『大言海』にも,

「ションボは,ショボショボの,ショボの音便化」

ともある。つまりは,「しょんぼり」は,「しょぼしょぼ」から転化した語ということになる。「しょぼしょぼ」は、

雨が弱々しく陰気に降り続けること(古くは「そぼそぼ」と言った),
木や髪,髭がまばらに生えていて,みすぼらしい様子,
疲労・眠気・涙・まぶしさ・心労・老化などのために,目を見開いていられず,力なくまばたきをする様子,
体力や気力が衰えて,弱々しく哀れな様子,

という意味がある(擬音語・擬態語辞典)が、この派生語の,

しょぼん,
しょんぼり,

と比較すると,

「『しょぼん』は,『しょぼしょぼ』よりも急に,勢いや元気をなくす様子,『しょんぼり』は『しょぼしょぼ』よりもはっきりと気持ちのおちこみが外側に現われている様子」

なのだという(仝上)。

雨が弱々しく陰気に降り続けること、

を、江戸時代「しょぼしょぼ雨」といい、

疲労・眠気・涙・まぶしさ・心労・老化などのために,目を見開いていられず,力なくまばたきをする様子、

を、やはり「しょぼしょぼ目」といった、とある(仝上)。「しょぼい」は、この、

しょぼ、

を形容詞化したものとみられる。

しょぼつく、
しょぼくれる、
しょぼたれる、

はいずれも、

侘しく、寂しげ、

な含意がある。「しょぼい」は、

悄然,

の価値表現がこめられている気がする。

江戸語大辞典に、

しょぼくない、

という言葉が載る。誤植でなければ、

塩垂れたさま、転じて、老衰したさま、また、気力のないさま、しょぼしょぼしたさま、

の意が載る。「しょぼい」には、

しおしおとした、

含意もある。

参考文献;
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 05:33| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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