「初夢」は、
元旦の夜に見る夢、又、正月二日の夜に見る夢、
古くは、節分の夜から立春の明け方に見る夢、
とある(広辞苑)。
元旦の夜、
と
正月二日の夜、
では違い過ぎる。普通は、今日、
二日の夜、
ではないかと思うのだが、
「現代では、『元日、または2日の夜に見る夢』とか『新年最初に見る夢』とされていますが、実は諸説ありました。昔は立春を正月としていたため、『節分の夜から立春の朝』までに見る夢を初夢と呼びました。やがて、暦が変わると『大晦日の夜』に見る夢ということになり、その後大晦日は年神様をお迎えするために眠らない習慣が定着すると『元日の夜』に見る夢ということになりました。さらに1月2日が物事をはじめる日であるという考えから、『2日の夜に見る夢』も一般的になっていきました。」
とある(http://www.i-nekko.jp/nenchugyoji/oshougatsu/hatsuyume/)。
つまり、
節分の夜から立春の朝に見る夢
↓
大晦日の夜に見る夢
↓
元日の夜に見る夢
↓
二日の夜に見る夢
と変遷してきたことになる。鎌倉時代の山家集に、
「年くれぬ 春来べしとは 思ひ寝む まさしく見えて かなふ初夢」
とある。ここでは、節分から立春の夜に見る夢を初夢としている。この時代は、初夢に限らず、立春を新年の始まりと考えることが多かったから(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%9D%E5%A4%A2)、としている。
「暦上の元日を新年の始まりと考えるようになったが、単純に、大晦日から元日の夜に見る夢が必ずしも初夢とはならず、江戸時代には『大晦日から元日』『元日から2日』『2日から3日』の3つの説が現れた。『元日から2日』は、大晦日から元日にかけての夜は眠らない風習ができたことが理由とされる。『2日から3日』の由来ははっきりしないが、書初めや初商いなど多くの新年の行事が2日に行われるようになったのに影響されたためとも言われる。江戸時代後期には『2日から3日』が主流となったが、明治の改暦後は、『元日から2日』とする人が多くなった」
ともある(仝上)。江戸語大辞典では、既に、
正月二日の夜の夢、
という意味に変わっており、嬉遊笑覧には、
「いつにても節分の夜のを初夢とするなり、今江戸にて元旦をおきて二日の夜とするものは其故をしらず、晦日は民間には事繁く大かたは寐るものなし、この故に元旦の夜はいたくこうじていぬめれば、さるまじなひ事などは麁略にしたるよりの事にや」
とある(仝上)。面白いことに、大言海は、
元旦の夜の夢、
とし、
今は、正月二日の夜の夢とし、寶船の絵を枕の下に敷くことあり、若し悪夢を見るときは、其絵を水に流すとぞ、
とする。寛文年間の、佐夜中山集には、元旦として、
門松は今朝の初夢合はせ哉、
の句を載せる。大みそかの夜の夢を「初夢」としているようである。考えれば、もともと、
節分の夜から立春の朝までに見る夢を初夢、
といったのなら、
大晦日の夜から元日の朝に見る夢を初夢、
という方が、二日の夜よりは、自然なはずなのだが。
ところで、初夢は縁起良いものとして、
一富士二鷹三茄子、
と言われる。これは、
「江戸時代に最も古い富士講組織の一つがあった『駒込富士神社』の周辺に鷹匠屋敷(現在の駒込病院)があり、駒込茄子が名産であったため、当時の縁起物として『駒込は一富士二鷹三茄子』と川柳に詠まれた」
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%9D%E5%A4%A2)。この先は、所説あり、俚言集覧によると、
四扇五煙草六座頭、
としている(初夢については、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%9D%E5%A4%A2に詳しい)。
因みに、「節分(せつぶん、せちぶん)」は、
「各季節の始まりの日(立春・立夏・立秋・立冬)の前日のこと。節分とは『季節を分ける』ことも意味している。江戸時代以降は特に立春(毎年2月4日ごろ)の前日を指す場合が多い。」
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AF%80%E5%88%86)。本来、季節の移り変わる時、つまり、
立春、
立夏、
立秋、
立冬、
を指したが、
特に立春の前日の称、
を言うようになり、この日の夕暮、柊の枝に鰯の頭を刺したものを戸口に立てて、鬼打豆をまいた(広辞苑)、とある。
「(旧暦)では、立春に最も近い新月を元日とし、月(太陰)の満ち欠けを基準(月切)にした元日(旧正月)と、太陽黄経を基準(節切)にした立春は、ともに新年ととらえられていた。したがって、旧暦12月末日(大晦日)と立春前日の節分は、ともに年越しの日と意識されていたことになる。」
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AF%80%E5%88%86)。元旦は、旧暦で言うと、
朔、
つまり、
新月、
を言い、2020年で言うと、
1月25日、
が正月となる。立春は、
立春(りっしゅん)は、
二十四節気の第一、
で、2020年で言うと、
2月4日、
に当たる。立春と元旦は、年によってずれ、旧正月より早く立春が来るのを、
年内立春、
旧正月より後に来るのを、
新年立春、
というらしい(https://jpnculture.net/kyushogatsu-risshun/)。なお、正月と立春が重なる時が30年に一度くらいにあるらしく、それを、
朔旦立春、
という、とある(仝上)。新古今に、年内立春を詠んだ、
年のうちに 春は來にけり 一年(ひととせ)を去年(こぞ)とやいはむ 今年とやいはむ(在原元方)
という歌があり、(一月一日から節分まで)の一年を去年と言おうか、今年と言おうか、歌っている。
(「初夢 一富士二鷹三茄子」礒田湖龍斎 https://paradjanov.biz/art/favorite_art/favorites_j/3719/より)
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:初夢