2020年01月23日
かがやく
「かがやく」は、
まばゆいほどきらめく。きらきら光る、光を放つ、
という意味をメタファにして、
生き生きとして明るさがあふれる、
意になったり、
名誉や名声を得て華々しい状態にある、
という意になったり、逆に価値表現が変わり、
(眩しい意から)。照れる、顔を赤くして恥ずかしがる、
意になったりする(岩波古語辞典、広辞苑、goo辞書)。「かがやく」には、
輝く、
耀く、
赫く、
曜く、
光く、
曄く、
煌く、
喗く、
焜く、
煌く、
等々、大漢和辞典には、34字も当て分ける漢字が載る。漢字は、「かがやく」のそれぞれが細かく分かれている。たとえば、
「赫」(漢音カク、呉音キャク)は、
「赤は『大+火』の会意文字で、火が燃え上がる時のあかあかとした色を示す。赫は『赤+赤』で、あかあかとほてるさまをあらわす」
と、燃え上がる火のかがやきを示し、「輝」(漢音キ、呉音ケ)は、
「会意兼形声。軍は丸く円陣を描いた軍営。輝は『光+音符軍』で、光の中心を丸くとりまいた光」
と、火の外を丸く取り巻いて光るさまを示し、「光」(コウ)は、
「会意。人が頭上に火を載せた姿を示す。四方に発散するの意を含む」
で、光りかがやく様を示し、「曜」(ヨウ)は、
「会意兼形声。翟は、きじが高く目立って尾羽を立てること。曜はそれを音符とし、日を加えた字で、光が目立って高くかがやくこと」
で、光が高く目立って輝くことを示し、「燿」(ヨウ)は、
「会意兼形声。翟は高く上がる意を含む。燿はそれを音符とし、光りを加えた字」
で、光が高く照り輝くことを示し、「喗」(キ)は、
「会意兼形声。『日+音符軍』。軍は丸く取り巻く意を含む。喗は、光源から丸く輪をなして四方に広がる光」
で、四方に広がる光を示し、「曄」(ヨウ)は、
「会意。『日+華(はなやか)』。はなやかにかがやくこと。炎はその語尾が転じた語で、曄と同系。また『白+華』の字でも書き表す」
で、赤々と、はなやかに輝く意を示し、「焜」(漢音コン、呉音ゴン)は、
「会意兼形声。『非+音符昆(もやもやとしてまるい)』」
で、光がまるい輪になってほんのりと輝く意を示し、「煌」(漢音コウ、呉音オウ)は、
「会意兼形声。皇は『自(はな)+音符王』かりらなり、偉大な鼻祖(開祖)のこと。大きく広がるの意を含む。煌は『火+音符抗皇』で、光が大きく広がること」
で、光が四方に大きく広がり明るいさまを示し、「燿」(ヨウ)は、
「会意兼形声。翟は『羽+隹(鳥)』の会意文字で、きじが尾羽を目立つように掲げること。擢(テキ 高く抜き揚げること)の原字。燿はそれを音符とし、火を加えた字で、火の光が高く目立ってかがやくこと」
で、高くかがやく火の光を示す(以上漢字源)。
ある意味、和語「かがやく」は、そのすべてを含めているといってもいい。そうなると、
鏡、
との関連が思い浮かぶ。しかし、「鏡」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/473097972.html?1578947450)で触れたように、「かがみ」の語源は、
「カガはカゲ(影)の古形。影見の意」(岩波古語辞典)
が有力とされた。「かがみ」は「かげ(影・陰・蔭)」は、
「古形カガの転。カガヨヒ・カグツチのカガ・カグと同根。光によってできる像。明暗ともにいう」
ともある(仝上)。「かぐつち(迦具土・火神)」は、
「カグはカガヨヒノカガと同根。光のちらちらする意」
であり、「かがよひ」は、
ガキロヒと同根、
で、
静止したものがキラキラと光って揺れる、
意である。「かぎろひ」の「ヒ」は「火」の意で、
揺れて光る意、
とある(仝上)。不安定な水鑑や銅鏡の映し出す映像を思い描くとき、この説は魅力がある、と考えた。確かに、「かがやく」と関連させて、
「赫見(かがみ)の義。鑑の初は、日神の御光を模して造れると伝ふ、古語拾遺に、八咫鏡に『鋳日像(ヒノミカタ)之鏡、(神代紀に同じ)初度所鋳不合意』。大倭本紀(釈紀所引)に、此御鏡を天懸(アマカカス)神となづくとあり、天赫(あまかがはす)なり」(大言海)
とする説があった。しかし、
かが(爀爀)、
を、
影(かげ)と通ず、
としている(大言海)ところを見ると、
かがやく、
かがよふ、
かがり(篝)、
の語根として、結局、「かげ(影)」も「かが(爀)」も同じことを言っていることになる。しかし「かがやく」は、近世前期まで、
カカヤキ、
と清音であった、とされる。とすると、「かがみ」との関連をすてて、
かかやく、
と清音の語源を考えるべきだろう。しかし、大言海は、
カガは、赫(かが)、ヤクは、メクに似て、発動する意。あざやく(鮮)、すみやく(速)、
と、鏡と同源の「赫」を採る。日本語源広辞典も、
カガ・カガヤ(眩しい・ギラギラ)+く(動詞化)、
同趣の説を採る。更に、他の語源説も、
カクエキ(赫奕)の転(秉穂録)、
カガサヤクの約言(万葉考)、
と「赫」とつなげる説が多い。
清音であることをのぞくと、やはり「かがみ」とのつながりが気になるが、濁点が落ちていた理由がつかめぬ限り、確定はつかない。
参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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