「小倉」は、
京都市右京区の小倉山付近一帯の古称、
であるが、
小倉餡 (あん) の略、
であり、
小倉汁粉の略、
である。「小倉汁粉」は、
小倉餡で作った汁粉、
である。ふつう、
こしあんを用いたものを御膳汁粉(関西では「汁粉」)、
皮をとらぬ粒あんのものを田舎汁粉(関西では「ぜんざい」)、
砂糖煮のアズキ粒をこしあんに加えたものを小倉汁粉、
と呼ぶ、とある(世界大百科事典)。この辺の微妙な違いはよくわからないが、「餡」は、
「つぶあん(粒餡)」小豆をなるべく皮を破らないよう裏ごし等をせず豆の形を残した餡。柔らかく煮上げて渋を切り、その生餡に甘味を加えて練り上げる。
「つぶしあん(つぶし餡)」小豆を潰すものの豆の種皮は取り除かないもの。
「こしあん(漉し餡)」小豆を潰し布等で裏ごしして豆の種皮を取り除いたもの。
「小倉あん」つぶし餡やこし餡に蜜で煮て漬けた大納言を加えて加工したもの。煮崩れしにくい大納言種の小豆の粒餡と粒の小さい普通小豆のこし餡を混ぜたものが本来の小倉餡であるが、近年では粒餡の事を小倉餡と言う場合も見受けられる。
と分けるらしい(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A4%A1)。このほか、
「つぶあんの小豆のつぶをつぶして皮を取り除かないものをつぶしあんといいます。見た目がよく似ているので、このつぶしあんのことを小倉あんと呼ぶことがありますが、本来はまったく別ものです」
ともある(https://zexy-kitchen.net/columns/314)。
ただ、「小倉汁粉」の説明が
小倉餡でつくった汁粉、
であるのはいいとして、微妙に違うのはどういうことか。たとえば、
「小倉餡で作った汁粉。または白餡の汁粉の中に、蜜煮にしたあずきや隠元豆を粒のまま入れたもの」(精選版日本国語大辞典)
「みつ煮にしたあずきをあとから加えるなどして、あずきの粒の形が残るように作った汁粉。田舎汁粉をいうこともある」(和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典)
等々。しかし、小倉餡は、
「漉餡に皮を切らないように蜜煮した大納言小豆を混ぜたもの」
である。この「小倉」は、
「809年頃に空海が中国から持ち帰った小豆の種子を、現在の京都市右京区嵯峨小倉山近辺で栽培し、和三郎という菓子職人が砂糖を加え煮つめて餡を作り御所に献上したのが発祥とされる」
という説がある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A4%A1)が、
小倉山峯のもみじば心あらば今ひとたびのみゆきまたなん(藤原忠平)
にちなんで、粒餡を紅葉に縁のある鹿の子模様に見立てて、「今ひとたびのみゆき待つ」と美味をたたえたもの、とする説もある(たべもの語源辞典)。
ただ、小倉餡といえば大納言である。
「その後、小豆の栽培地が(嵯峨小倉山近辺から)丹波地方などに移り品種改良も進んで古来の小豆『小倉大納言』は亀岡でわずかに残るだけとなっていたが、近年になって嵯峨小倉山の畑で栽培も行われるようになった。二尊院境内に『小倉餡発祥之地』の碑がある」
という経緯も無視できまい。
「小倉あんの味のポイントとなる大納言は、この小倉山周辺で取れる品質のいいものが最適とされていました。小倉山で取れた大納言を使った餡だから、小倉あんというわけです。」
と(https://zexy-kitchen.net/columns/314)。ただ、単に地名由来というより、
「餡は、蜜煮にした大納言小豆をこしあんに混ぜて『鹿の子』に見立てた」
という見方(日本語源広辞典)も、なかなか捨てがたい。小倉山という大納言の産地と、鹿の子に見立てたとの、共に背景にある、と見たい気がする。
因みに、「餡」(漢音カン、唐音アン、呉音ゲン)は、
「会意兼形声。臽(カン)は、おしこめる、くぼめて中に入れるの意。餡はそれを音符とし、食を加えた」
とあり、中国の唐音が語源と見られる。
饅頭などの中に入れる、甘いものや野菜など、
の意だが、「餡かけ」のように使い方は、わが国だけのようである。
「『餡』はもともと詰め物の意であり、『字彙』では餅の中の肉餡を指すとしている。日本へは聖徳太子の時代に中国から伝来したとされ、中国菓子で用いられる肉餡がその原形となっていると考えられている。小豆を用いた小豆餡が開発されたのは鎌倉時代であるとされる」
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A4%A1)。大言海が、
「禅家にて小豆に変へたるならむ」
としているのは、このことであろう。
なお、小倉餡から小倉は小豆となったためか、小豆を使ったとき、広く、
あずきを使う料理やお菓子の総称、
となり、
小倉羹(小倉餡のようにつくった中に煮た寒天をまぜ、粒の小豆を入れて固める)、
小倉玉子(まんじゅうを卵のようにつくって煮小豆を詰める)、
小倉田楽(油揚の一方を切って煮小豆を詰めて付け焼きにする)、
のように、小豆が加えられると、その名がついている(たべもの語源辞典)。
(小豆餡(粒餡) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A4%A1より)
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:小倉