2020年02月01日


「豆」は、

荳、
菽、

等々とも当てる。「豆」(漢音トウ、呉音ズ)は、

「象形。たかつきを描いたもので、じっとひとところに立つ意を含む。たかつきの形をした豆の意に転用された」

とあり(漢字源)、

大豆(中国では、黄豆)、
小豆(中国では、紅豆)、
緑豆(もやしにされる)、

の意とある(仝上)。

莢の中の種の称、

ともある(字源)。「菽」(シュク)は、

「会意兼形声。『艸+音符叔(シュク 小さい、小粒)』。小粒の実の意から、豆の総称」

とあり(漢字源)、「菽(シュク)は大豆である」(たべもの語源辞典)、とある。豆=菽であり、荳は、豆の俗字、とある(字源)。

まめに働く、

の「まめ」は、「まめ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/473354169.html?1580416347で触れたように、

忠実、

と当てる。「豆」は、

マメ科に属する植物のうち、ダイズ、アズキ、ソラマメ、エンドウなど、実を食用とするものの総称、またその実、

とある(広辞苑)。ただ特に、

大豆、

をいう(和名抄)、らしい。

大豆は、中国が古代にわたって来たとも、日本と中国に自生していたツルマメが原種である、とされる(たべもの語源辞典)。ツルマメは、

ノマメ、

とも呼ばれる。

ツルマメの実.jpg



古代、現住していた人たちは、ダイズを主食としていた、という(仝上)。後期弥生遺跡には栽培していたことが分かっている(仝上)。

「まめ」の語源としては、

マルミ(丸味)・マロミ(円実)の義(日本釈名・滑稽雑誌所引和訓義解・東雅・名言通・柴門和語類集・言葉の根しらべの=鈴木潔子・日本古語大辞典=松岡静雄・国語の語根とその分類=大島正健・日本語原学=林甕臣・大言海・広辞苑)、

が大勢を占める。沖縄では、

マミ、

といい、

マル(マロ)→マミ→マメ、

といった転訛ということになる。

丸い実から芽を出すから、マ(丸)メ(芽)(語源辞典・形容詞篇=吉田金彦)、

モニタリング説といっていい。その他に、

旨き+実の意(日本語の語源・日本語源広辞典・語源由来辞典)、

がある。

uma+mi→mami→mame、

とする(仝上)。その他、

外皮に実 がはめられていることから「実填め(みはめ)」の短縮(語源由来辞典)、
マミ(馬子)の義(言元梯)、
マグレツク(塗付)などのマグ、マミル(塗)などのマミから、搦みつく、まとわりつくの意の動詞マムを推定し、その未然形ママからか(続上代特殊仮名音義=森重敏)、

等々。ひねくり廻すのは、語音に合わせようとしている感じで、如何かと思う。単純に、

まるい、

の印象から、というのでいいのではあるまいか。

「まめ」は、

オオマメ、

と呼ばれた。それを音読したのが、

ダイズ(大豆)、

である。

大豆.jpg

(大豆、日本の農業百科事典のイラスト(1804) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%BAより)


「あずき」は、

小豆、

と当てるが、大言海は、

赤小豆、

と当て、

「醫心方『赤小豆(あかつき)』、成形図説(文化)『赤小豆(あずき)、赤粒木(あかつぶき)』などの義にや。キは草の義を表し、ハギ、ススキ、フフキ(蕗)等の語成分で、またキザスの語根」

とするが、

アは赤を意味し、ツキ・ツキが溶けることを意味し、他の豆より調理時間が短いことを意味していた、地方用語でアズ・アヅとは崩れやすいという意味であり、そこから煮崩れしやすいアズキと名付けられた(日本釈名・柴門和語類集)、
アは小の義、ツキはツムキと同語で、角がある意(東雅)、
アは赤、ツキはツク(搗)か。臼でついて用いることを吉とし、またもちなどにつくる故からか(和句解)、
アツキ(赤粒草)の義(言元梯)、
アカツキ(赤着)の義(名言通・日本語原学=林甕臣)、
豆木の湯桶読みツキか(日本語源=賀茂百樹)、
アヂケ(味饌)の転。うまい食物の意(和訓栞後編・日本古語大辞典=松岡静雄)、
イツキ(斎)から出た語か(語源大辞典=堀井令以知)、
アイヌ語でantukiという。アイヌ語が日本語に入ってきてアヅキとなったか、逆に日本語がアイヌ語に入ったか、両様の解釈が可能(外来語の話=新村出)、
朝鮮語pqt-ki(小豆)からか(植物和名語源新考=深津正)、
中国からdugという音が実物のアズキとともに日本に伝えられ、dugiとなり、清音化し、接頭語アが加わった(語源辞典・植物篇=吉田金彦)、
「本草和名(ホンゾウワミョウ)」(平安時代)には「赤小豆」を阿加阿都岐(アカアツキ)と記述しており、後にアズキとなった、

と諸説ありhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%BA%E3%82%AD、日本語源大辞典)、日本語源広辞典は、

アヅ(味)+キ(重なり)で、味を引き立てるものの意、

とする。

アズキの花.jpg


しかし、「小豆」も、古く縄文遺跡から発掘されているほか、古事記に、

殺されたオオゲツヒメの鼻から小豆が生じたとする、

し、万葉集にも、

あづきなく 何の狂言(たはこと) 今さらに 童言(わらはごと)する 老人(おいひと)にして、

と、「あづきなく」(不当に)の「あづき」に「小豆」の漢字を当てており、奈良時代からあった(仝上)、と思われる。とするなら、知られていた「豆」、つまり、

大豆、

と区別して、

赤小豆(あかあづき)、

としたことは確からしく思えるが、どう訓み、どう転訛して「あづき」→「あずき」となったかは、はっきりしない。大言海の、すすき、フキの「キ」から、

アカツブキ→アカツキ→アヅキ、

といったふうな転訛が最もあり得るように思える。

「そらまめ」は、

蚕豆、
空豆、

と当てるが、慶長年間(1596~1615)に中国から渡来したが、「蚕豆」と当てるのは、

莢の形が成熟したサヤの形にているからとも、養蚕の時節に、成熟するから、

ともいい(たべもの語源辞典)、

「空豆」と当てるのは、

その実が空に向かってつくからである(大言海、仝上)、とされる。

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル: 大豆 小豆
posted by Toshi at 05:37| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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