2020年02月04日


「柱」は、

材を垂直に立てて建築物の支え(ささえ)とするもの、

の意である。

真木柱(まけばしら)、讃めて造れる、殿(との)のごと、いませ母刀自(ははとじ)、面(おめ)変(か)はりせず

と、万葉集にもある。「真木柱」は、

まきばしらの轉、

で、「真木(まき)」は、

槙、
柀、

とも当て、「マ」は接頭語で、

檜・杉・松・槙など、硬くて建築に適する木、

をいい、「真木柱」は、

檜・杉り立派な柱。宮殿、貴族の邸などに用いる、

とある(岩波古語辞典)。「柱」の、

上の荷重を支える材、

の意をメタファに、

頼りになる人、

の意で、

一家の柱、
計画の柱、

等々と使う。その意からか、

この三柱の神は、

などと、神・霊などを数えるのにも用いたりする。また「柱」は、図書用語で、

洋装本で、版面の周辺の余白に印刷した見出し。
和装本で、各丁の折り目に当たる所に記した書名・巻数・標題など。版心、柱刻、

の意でもある。

また「柱」は、

ヂ(ジ)、

と訓むと、琴柱(ことじ)のように、

琴などの弦楽器の弦をのせる駒、

の意となり、

チュウ、

と訓ますと、琴柱(ことじ)の意もあるが、

数学用語で、柱面もしくは柱体(ちゆうたい)のこと、

となる。

エンタシスの柱(法隆寺).jpg

(法隆寺・エンタシスの柱(円柱下部もしくは中間部から、上部にかけて徐々に細くした形状の柱) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%B1より)


さて、「柱」の語源である。岩波古語辞典は、

「立って本体を支えるもの、ハシ(箸)と同根」

とする。どうであろうか。「箸」は、

古くは、一条のものを折り曲げて、その両端で挟んだ、

とある(日本昔話事典)。

食事のあとなどで、神慮を祈願し、箸をだいちにさすと芽をだし、大木になったという箸杉や箸立て松の伝説が各地にある、

とあり、「柱」とつながりそうだが、そもそも、

大嘗祭などでは(一条の者を折り曲げた)形式の箸を神前に供える、

とあり(仝上)、どうも「柱」とはつながらない気がする。

大言海は、

ハシは屋根と地との間(ハシ)にある物の意、ラは助辞、

とする。「間(ハシ)」は、辞書には載らないが、日本語源広辞典も、

ハシ(間)+ラ、

を採り、

屋根と地のハシ(間)に立てるものをいいます、

とする(この説を採るものは多く、古事記傳・雅言考・国語の語根とその分類=大島正健・日本語源=賀茂百樹等々)。また、

ハシラ(間等)の義(言元梯)、

も同趣である。ほかに、「橋」「梯」の「はし」とからめて、

橋渡しとなるもの、二所間の媒介物としてのハシ(橋・階・梯)諸語と同じ原義(時代別国語大辞典-上代編)、
梯座の義(和訓栞)、

もあるが、橋・階・梯と柱とは違いを区別していたのではあるまいか。その他、

ハシルシ(端記)の義(名言通)、
家のアシであるところから、ハシはアシの義。ラは助辞(日本釈名)、
ハリシロ(張代)の義(日本語原学=林甕臣)、
ハシラズ(葉不知)の義(和句解・百草露・柴門和語類集)、
ハは永久の義、シラはシルシ(標)の義(古史通)、
バザラ(待日羅)の転で、堅固不壊の意(和語私臆鈔)、

等々あるが、どうだろう。意味だけで言うなら、確かに、

橋・階・梯、

も、

はしだて、

というとき、

梯立て、

と当て、

梯子を立てかける、

意であり、

樹梯(階)、
橋立、

とも当て、

立った梯子、

の意でもあり、捨てがたいが、

「宮城を造営する際、君主が世界を支配するために天(神)と繋がる中心点が重要であるとして太極殿を建てた。当時を模して建てたものの代表的なものに、平安神宮外拝殿がある。太極(中心点)が、万物の根源、陰陽の根源とつながるものと考えられ、万物には当然のごとく神が宿ることから、そこに建てる重要な柱を太極柱と呼ぶことになる。」

もあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%B1のだから、やはり、天地の、

ハシ(間)+ラ、

ということなのではないか。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 05:30| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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