2020年02月17日

蓼食う虫


「蓼食う虫」は、

蓼食う虫も好き好き、

ともいう。どうも、

蓼食う虫は辛きを知らず、

は、

蓼虫不辛(りょうちゅうぼうしん)、

ともいい、大言海には、

孔叢子(くぞうし)、蓼蟲賦「是蟲幼長、斯蓼不為辛」
白氏長慶集、自詠「食蓼蟲不知苦是苦」

が挙げられているが(叢子は魏晋の頃の偽書とされるし、白氏は唐の人であるので)、

邊城使心悲、昔吾親更之
冰雪截肌膚、風飄無止期、
百裏不見人、草木誰當遲、
登城望亭燧、翩翩飛戌旗、
行者不顧反、出門與家辭、
子弟多俘虜、哭泣無己時
天下盡樂土、何為久留茲、
蓼虫不知辛、去来勿與諮、

という王粲の詩「七哀詩」の一節、

蓼虫不知辛、

が出典ではないか、とみなされる。

人の好みはそれぞれで、一概には言えない、

という意味であるが、

人の好き好き笑う者馬鹿、
面面の楊貴妃、
割れ鍋に綴じ蓋、

等々も似た意味になる。ちなみに、王粲は、

中国後漢末期の文学者・学者・政治家。字は仲宣。曹操から招かれて丞相掾となり、関内侯の爵位を授けられた。後に軍謀祭酒へ昇進した。建安18年(213年)、曹操が魏公になると侍中に任命された。王粲は博学多識であり、曹操が儀礼制度を制定するときは、必ず王粲が主催した。建安22年(217年)、41歳で病死した。

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8E%8B%E7%B2%B2。「七哀詩」は代表作の一つ。

南宋時代の「鶴林玉露」には、

氷蚕は寒さを知らず、火鼠は厚さを知らず、蓼蟲は苦さを知らず、蛆虫は臭さをしらず、

とある(語源由来辞典)、とか。

「蓼」(リョウ)は、

会意兼形声。翏(リョウ)は、ばらばらに離れる意を含む。蓼はそれを音符に艸を加えた字で、細い葉がバラバラに生えた草、

とある(漢字源)。「たで」の意である。

タデ(蓼)は、

タデ科イヌタデ属の総称

であるが、狭義にはサナエタデ節の、

ヤナギタデ(柳蓼)、

を意味するhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%87、とあり、本来の「タデ」はこの種で、「蓼食う虫」の蓼もこの種であるらしい(仝上、語源由来辞典)。

ヤナギタデの花.jpg

(ヤナギタデの花 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%87より)


ヤナギタデは、別名、

マタデ、
ホンタデ、

といい、

カシコグサ(蓼草)、

ともいう(たべもの語源辞典)。

石龍、
苦菜、
辛菜、
紅草、
葒草、
天蓼、

とも書く(仝上)。

「特有の香りと辛味を持ち、香辛料として薬味や刺身のつまなどに用いられる。野生の紅タデがもっとも辛く、栽培種の青タデは辛さが少ない」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%87

「茎葉ともに赤みを帯び、葉の形が丸いものは、柔らかで辛味が強く、葉の厚いものは辛味は辛味は少ない」

とある(たべもの語源辞典)。かつて、武士はその宅にタデを多く植えてもっぱら飯の菜にした、という。松平伊豆守も武士の宅には蓼を多く植えるべきだと訓(おし)えている、とか(仝上)。

ヤナギタデの葉.jpg

(ヤナギタデの葉 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%87より)


さて、「たで」の語源であるが、

二葉のときから辛味をもってでるところから、タテ(持出)の義(柴門和語類集)、
葉の色がホテル(火照)からタテ(たべもの語源辞典)、
病を絶つところの草というのでタデとなった(仝上)、
シタアジアレ(舌味荒)という意からタデとなった(仝上)、
トカタケ(咎闌)の転訛(仝上)、
十勝のアイヌ語で「蓼」をダンテという(北海道あいぬ方言語彙集成=吉田巌)、

と、諸説あるが、たべもの語源辞典は、

「『ダデ食う虫も好き好き』ということわざがあるように、これを噛むと口中がタダレルほど辛いというタダレ(爛れ)がタデとなったというのが良い」

とし、大言海も、

爛れの意にて、口舌に辛きより云ふと云ふ、

と同説を採る。

タダアレ(直荒)→タダレ(爛れ)→タデ(蓼)の変化(語源辞典・植物篇=吉田金彦)、

も同じである。この感覚が語源とするのでよさそうである。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 05:11| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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