2020年02月18日

ぺけ


「最下位の意味の『ぺけ』(中略)も使うが、ふだんは最下位の意味では『びり』を使うことが多い。(東京女子大学教授の)篠崎(晃一)氏によれば『びり』は東日本に多い言い方ではあるが、全国に広がっていて共通語に近いという。ちなみに西日本では『どべ』が優勢だそうだ」

とあるhttps://japanknowledge.com/articles/blognihongo/entry.html?entryid=110が、

「ぺけ」は、

どべ、
びり、

とは異なり、

×、

の意が強い気がする。「×」は、

かける、

の意もあるが、

ばつ、
ぺけ、
ばってん、

と訓むことが多い(一般的には関東ではバツ、関西ではペケと読む傾向がある)。また、「ぺけ」は、「びり」の、

一番下の順位。最下位の者、

を表す東京での言い方として、

「かけっこでペケだった」

というように使い、他方関西では、「×」のしるしを、

「ぺけをつける」

というように表現する、とある(大辞林)。

ところで、江戸語大辞典には、「ぺけ」は、

マレー語ベッギ(pergi)の訛り。横浜の居留地で外国商社の売買手合わせが破談になることをいうにはじまる、

とある。

だめ、
ばか、

の意とある。

「少しぺけさね。ト新助を見て嘲笑ふ」(万延元年・縮屋新助)

という用例が載る。大言海は、

馬來語。ベッギ(pergi)より出づと云ふ説、

と並べて、

支那語「プコ」(不可)の転訛なりと云ふ説、

の二説を挙げ、

されど、前説を是とすべし(新村出の説)、

と、マレー語説を採り、

「かんじんの間にあはねへじゃ、ペケだとだらふし」(文久「滑稽道中膝車」)、

の用例を載せつつ、

「元治元年刊の、横濱みやげ、巻末附載の異国言葉語彙表に、『きにいらぬ、ものをすてる、人をかいす、じゃまになる、うりかひはたん(商談破裂)に、ペケの語をあてたり』」

とある、とする。これで決まりのようだが、多く、

中国語のbuke不可から、
と、
マレー語のpergiで「あっちへ行け」の意から、

の二説が並立している。広辞苑も、日本語源広辞典も、由来・語源辞典も、二説併記する。

日本語源大辞典も、

マレー語pergiの転訛(外来語の話=新村出・大言海・ことばの事典=日置昌一・上方語源辞典=前田勇)、
中国語「不可(puko)」の訛(ことばの事典=日置昌一・すらんぐ=暉峻康隆・外来語辞典=楳垣実後)、

と各語源説の主張者を整理している。

ところで、隠語大辞典は、「ぺけ」に、

不可、

を当て、

①支那語不可の訛、よからぬこと。悪しきこと。「ぽこぺん」。
②不可。不成立。破談。悪い。などの意。不可の支那音の訛りとも、又馬来語Pergiの転化なりともいふ。横浜神戸辺の商業用語としては、買主(主に外国商館)が商品買取りの談合を中止し受渡しを拒絶する事を云ひ、その商品を「ペケ品」などといふ。
③駄目だといふこと。支那語のぽこぺんから転訛したもの。
④駄目だといふこと。
⑤マレイ語のpergiの転じたものであるといはれ、又和蘭人が馬鹿をBakaと記したのを英人がペケと誤読したのだといふ説もある。明治初年横浜の居留地から起つた言葉である。可からずといふ意で、愚案、失敗、拒絶、不採用、軽い排斥等の意味がある。
⑥マライ語のPergiの転訛したもので、不可、不成立、破談など駄目なることに広く用いられる。

と、諸説を併記するhttps://www.weblio.jp/content/%E3%81%BA%E3%81%91。「ぽこぺん」は、

中国語で「元値に足りない」の意味から、

話にならない、

という意で、

「ポコペンは兵隊シナ語と呼ばれている言葉の一種であり、日清戦争の時代に既に使われていた言葉でもある。語源は清朝時代の中国語の『不彀本』(元値に足らずの意)が有力である。森鴎外の『うた日記』の中には『不彀本(ぷうこおぴえん) 很貴(へんくい)と 値(ね)をあらそひて さわぐ聲(こゑ)』とある (很貴は『とても高い』の意)」

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%82%B3%E3%83%9A%E3%83%B3。「ペケ」と似た意味で、

取るに足らない、くだらない、だめ、

という意味で使われる(これが転じて、屋外で行う遊びの一種「缶けり」や、それに似た遊びをポコペンと呼ぶ場合がある)。

「大阪弁」は、「ぺけ」「ぺけぽん」を、

「『×』印。たすき印。不可、悪しの意。江戸時代末期に外国商社との破談で使われはじめた。近畿、東海、山陽、北四国での表現。土佐、甲信、関東、南奥羽で「ばつ」、北陸、北奥羽、紀伊、安芸、九州で『かけ』『かける』、山陰で『しめ』、出雲で『じぃもんじ』、津軽で『えっきす』などという」

とあるhttps://www.weblio.jp/content/%E3%83%9A%E3%82%B1?edc=OSAKA。仮名垣魯文の「安愚楽鍋」(1871‐72)に、

「相談のできかかったきゃくにペケにされたり」

とあるように、この言葉は、どうやら、幕末開国以後に起こったようである。どちらとも決めがたいが、大言海に載る、

横濱みやげ、巻末附載の異国言葉語彙表、

を見る限り、マレー語『由来・語源辞典』見ていいのではないか。中国との交易は江戸時代を通して続いていたのだから、不可説は、後の付会に思える。

「一外交官の見た明治維新」(アーネスト・サトウ)」には、

(当時の横浜居留民が商用のために一種の私生児的な言葉を案出していて)中でも、マレー語の駄目(ペケ)peggi、破毀(サランバン)は大きな役をつとめ、

とある由http://e2jin.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/71-1a75.htmlで、peggiはpergiと思えるので、マレー語由来の傍証にもなりそうである(仝上)。

なお、「びり」http://ppnetwork.seesaa.net/article/454260852.htmlについては、触れたことがある。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

【関連する記事】
posted by Toshi at 05:12| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください