2020年02月27日

どんぶり勘定


「どんぶり勘定」は、

予算を立てたり決算をしたりせず、手元にある金にまかせて支払いをすること、またそれに似た、大まかな会計、

の意とあり(広辞苑)、この「どんぶり」は、「どんぶり鉢」の「どんぶり」ではなく、「どんぶり」http://ppnetwork.seesaa.net/article/473755393.html?1582660985で触れた、

更紗・緞子などでつくった、金などを入れる大きな袋の意、



職人などの着ける腹かけの前かくし、金などを入れた意、

からきている、とする。

「どんぶり烟草入りに落とし木綿、手拭長にもふきたらず」(耳袋)

の用例だけでは、いずれとも決めかねるが、大言海は、「どんぶり」の項で、

職人の腹掛の前に附けたるかくし。即ち、布帛もて、小長方形にて一方口なる袋を作り、金子、紙何となくいれおくもの、

の用例としているので、腹かけの「かくし」、つまりポケットを採っている。つまり、

職人の腹かけの隠しの別名を、何でも入れておくのでドンブリといいました。その丼+勘定が語源で、大雑把な金の出し入れをすることを言います、

とする(日本語源広辞典、語源由来辞典)のや、

昔の職人が前掛けの腹の部分についていたポケット(どんぶり)から金を出し入れしていたところからきた言葉、

とする(笑える国語辞典)のが、ひとつの考え方である。他方、

「丼」は江戸時代に、お金や小物を入れて懐に持ち歩いていた大きめの袋のことで、この袋にお金を入れて、無造作に出し入れしたことから「丼勘定」という言葉が生まれたとされる、

とする(由来・語源辞典)のが、もう一つの考え方である。

しかし、どんぶりhttp://ppnetwork.seesaa.net/article/473755393.html?1582660985で触れたように、この袋の意の「どんぶり」は、

「だんぶくろ」を言い変えたものと云ふが、さていかがか」(江戸語大辞典)、
「だんぶくろの転訛と云ふ」(大言海)、
「商人の前掛けについたポケットを意味する『どんぶり』は、駄荷袋(だにぶくろ)の訛り」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%BC%E9%89%A2

等々とあり、「だんぶくろ」からきている。「だんぶくろ」は、

段袋、
駄袋、

と当て、

駄荷袋の音便、

である(広辞苑)。しかも、その意は、

布製の大袋、信玄袋に似た、荷物袋、

である。その袋から、

腹かけのかくし、

を、「どんぶり」と呼んだものと思われるが、「どんぶり勘定」の語感からすると、職人の腹かけの隠し、から無造作に出し入れするイメージの方があっている気がする。

腹掛けをつける大工.jpg

(腹掛けをつける大工。紐を背中でクロスしている。歌川国芳『東都三ツ又の図』 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%85%B9%E6%8E%9B%E3%81%91より)

ちなみに、腹掛けは、

胸当て付きの短いエプロンのような形状で、背中部分は覆われておらず、紐を背中で交差させることによって体に密着させる。腹部には『どんぶり』と呼ばれる大きなポケットが付いており、腹掛けそのものをどんぶりと呼ぶこともある。古くは火消し、大工、商人などが着用していた。素肌の上にそのまま着用することもあれば、着物の上から着用することもある、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%85%B9%E6%8E%9B%E3%81%91が、

小児用と職人用がある、

とあり(江戸語大辞典)、

かみなりをまねて腹掛やつとさせ(明和二年)、

という句もある(柳多留)

子供用の腹掛け.jpg

(子供用の腹掛け。湖龍斎『犬にまたがる童子』 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%85%B9%E6%8E%9B%E3%81%91より)

地域によって、

どんぶり、
寸胴、
前掛け、

等々の呼び名があり、子供用は、

正方形の布を斜めに使い、紐をつけて、首、腰の部分で結ぶようにした、

とある(仝上)。

松浦氏伝来の紅糸素懸威腹当.jpg

(松浦氏伝来の紅糸素懸威腹当 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%85%B9%E5%BD%93より)

腹当姿.jpg

(鎌倉時代『十界図』に描かれた腹当姿 図説日本甲冑武具事典より)


腹掛けは鎧の腹当と似た形状をしており、やはり背中で紐を交差させている。腹当は、

胸部と腹部を覆う胴鎧に小型の草摺を前と左右に3間垂らした形状で、着用者の胴体の前面及び側面腹部のみ保護する構造となっている。軽量で着脱は容易であるが、防御力は低い。のちに腹当の胴体を防御する部分が背部まで延長し、腹巻に発展していったと考えられている。鎌倉時代ごろに、主に下級兵卒用の鎧として発生したとみられ、室町時代の後半には軽武装として広く使われるようになった、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%85%B9%E5%BD%93。腹掛けの出自は、腹当かもしれない。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
笠間良彦『図説日本甲冑武具事典』(柏書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 05:07| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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