2020年02月28日

どら焼


「どら焼」は、

銅鑼焼、

と当てたりする、

小麦粉・卵・砂糖を原料とした銅鑼形に焼いた皮二枚の間に粒餡を挟んだ和菓子、

のことである(広辞苑)。その形が「銅鑼」に似ていることから名付けられたが、 関西では奈良の三笠山に見立てて、

三笠、
三笠山、

とも呼ばれる(語源由来辞典)。

どら焼き.jpg



「どら焼」の由来には、

「文治三年(1187)源九郎義経が奥州へ逃れたとき、武蔵坊弁慶は手傷を負って、武蔵野の一民家で療養していたが、出立のさい銅鑼と手紙を残していった。その銅鑼で焼いたのが、『どら焼』の伝説的起源」

という俗説がある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A9%E3%82%89%E7%84%BC%E3%81%8D、たべもの語源辞典)。もちろん、この説は

「鎌倉時代に小豆餡が出来たと言われることから、1189年に死んだとされる武蔵坊弁慶との関わりは矛盾する」

とことわる(仝上)までもなく、伝説である。

饂飩粉を水にこねて、圓片とし、焼きて表裏二枚の中に餡を包みたるもの。銀つば(金鍔焼の類)の変なり。形を小さくしたるを金鍔と云ひ、四方を焼き、好き餡を用ゐたるを、ミメヨリと云ふ。見目り心の意ならむ、

と大言海にあり、これは、文化・文政(1804~30)期が「きんつば」の全盛期で、文化年間の末、浅草馬通に「おかめのきんつば」という店から「みめより」という四角な「きんつば」を売り出し、「みめより心」という俚謡から、外見より中身の良さということで評判をとった(たべもの語源辞典)、ということを指す。

江戸語大辞典は、「どらやき」について、

初め金鍔と称したが、その称は後に銅鑼焼の小型のものに変わった、

とし、

きんつば焼どら焼のうへをゆき(安永四年(1774)「当世爰かしこ」)、

と載せる。というのも、

「寛永年間(1624~44)に江戸麹町三丁目に『助惣焼』が始まる。助惣の元祖は大木元左治兵衛といい、餅にも屋号にも『助惣』の名を付けたという。この助惣の『どら焼』は、麩の焼を丸く紙のように薄く焼き、餡を真ん中に入れ四角にたたんだものであった」

とあり(たべもの語源辞典)、この助惣焼が、

麩の焼、
また、
銅鑼焼、

なのである。このどら焼きは、

「皮を一枚だけ用い、端の部分を折りたたんだため四角く、片面の中央はあんこがむき出しであった」

というhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A9%E3%82%89%E7%84%BC%E3%81%8D。まさに、現在のきんつばに似ている。

きんつば.jpg



嬉遊笑覧(1830)は、

「雍州府志ニ、焼餅ハ米ノ粉ニ煉餡ヲ包ミ、ヤキ鍋ニテ焼タル、其形ヲモテ銀鐔(ぎんつば)ト云トアリ、今ノどら焼ハ、又、金鐔ヤキトモ云フ、コレ麩ノ焼ト銀鐔ト取マゼテ作リタルモノナリ、どら焼トハ形、金鼓(こんぐ)ニ似タル故、鉦(どら)ト名ヅケシハ、形ノ大キナルヲ云ヒシガ、今ハ形、小クナリテ金鐔ト呼ナリ」

と書いている(仝上、大言海)。助惣のどら焼は四角であったが、明治初年、日本橋大伝馬町の梅花亭の盛田清が、

丸型の新どら焼をつくった。銅鑼の形をした菓子で、餡に天ぷらの衣をつけるようにして皮を焼いた、

とある(仝上)。これは、

鶏卵に砂糖を加えてよくかき混ぜ、小麦粉に膨張剤を加えたものをふるい込んで、水でどろどろに溶き、種汁をつくる。この種汁を平鍋(ひらなべ)に円型にたらし、焼き目がついたら裏返して小豆(あずき)のつぶし餡(あん)をのせ、別に用意した同形の焼き皮をかぶせ(中略)、青えんどうのつぶし餡を用いるのが特徴

とある(日本大百科全書)。現在の「どら焼」は、

編笠焼、

という焼菓子で、上野黒門町に大正三年(1914)に開店した「うさぎや」が始祖である(たべもの語源辞典)。

「どら焼」が小さくなって、「きんつば」になったのか、「きんつば」が「どら焼」の元祖なのか、はっきりしないが、最初の「どら焼」が、薄い皮の、「きんつば」に紛らわしいものだったことは確かである。

現在の「きんつば(金鍔)」は、

寒天を用いて粒餡を四角く固めたものの各面に、小麦粉を水でゆるく溶いた生地を付けながら、熱した銅板上で一面ずつ焼いてつくる「角きんつば」であるが、本来のきんつばは、小麦粉を水でこねて薄く伸ばした生地で餡を包み、その名の通り日本刀のつばのように円く平らな円型に形を整え、油を引いた平鍋で両面と側面を焼いたものである、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8D%E3%82%93%E3%81%A4%E3%81%B0

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:どら焼
posted by Toshi at 04:55| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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