2020年03月16日
五平餅
「五平餅」は、
御幣餅、
五兵衛餅、
とも表記する。
中部地方の山間部(長野県木曽・伊那地方、岐阜県東濃・飛騨地方、富山県南部、愛知県奥三河地方、静岡県北遠・駿河地方に伝わる郷土料理。粒が残る程度に半搗きにした粳米(うるちまい)飯にタレをつけ、串焼きにしたものである、
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E5%B9%B3%E9%A4%85)。「餅」といっているが、
粳米(うるちまい)飯を半搗き、
にしたものである。美濃地方で、
狗賓餅(ぐひんもち)、
と称して天狗に供えるのも五平餅とおなじである(たべもの語源辞典)。
五平餅の形は、代表的なものとしては、
御幣、
わらじ、
小判、
丸、
団子、
棒、
等々いろいろある(http://www.toyota-go-hey.jp/history/aji.html)。また、
タレのベースに醤油を使うか味噌を使うか、ゴマとクルミを使うかエゴマを使うかは地域による。エゴマをベースに醤油と砂糖で仕上げるのは木曽地方中北部から飛騨地方にかけての特徴である。クルミを使っていた地方では近年は入手しやすいピーナツをクルミの代わりに使うこともある、
と(仝上)。
長野県南部または美濃山間部に伝わる郷土食で、新穀を感謝して造られる、
とある(日本語源大辞典)ので、
神に捧げる「御幣」の形をしていることからこの名がついた、
と考えられる。その由来については、
宮大工の棟梁の五平が、毎日弁当に決まって握り飯に味噌を塗り、焚火に炙って食べたのが始まり、
屋根葺き職人の五平が、板の切れはしにご飯を塗り固め、その上に味噌を付けて食べたから、
日本武尊が東征のとき幣束の形にして神に供えたのを里人に分かち与えた、
尊の従者五平が焼いたのが始まり、
等々(たべもの語源辞典・日本語源広辞典・日本語源大辞典)諸説あるが、
五平の名を採った、
というのは俗説とする(日本語源広辞典)のが妥当だろう。
御幣(ごへい・おんべい・おんべ)は、
白色または金銀、五色の紙を幣串にはさんだもの。神霊が宿り、示現する依代 (よりしろ) として神に供えられた、
とされる(ブリタニカ国際大百科事典)。
幣帛(へいはく)の一種で、2本の紙垂(しで)を竹または木の幣串に挟んだものである。幣束(へいそく)、幣(ぬさ)ともいう。(中略)「幣」は麻(麻布)、「帛」は絹(白絹、絹布)を意味する。両者は捧げ物の代表的な事物であることから、本来、「幣帛」で神々への捧げ物の「総称」を意味する。
「幣帛」は「充座」(みてぐら)、「礼代」(いやじり)ともいう。「幣帛」は、広義では神饌(食物)も含むが、狭義では神饌に対する特に布類を指す。布類では麻布が主流なので、主に「幣」の字が用いられることになる。現物の代わりに「幣帛料」として捧げられる金銭を「金幣」という。
「御幣」とは、神々への捧げ物を意味し、貴重な品を示す「幣」(へい)に、尊称の「御」(ご)を付けたものである。
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%A1%E5%B9%A3)。長く、神々に対し、貴重な品々、「幣帛」を捧げてきたが、それは、
稲(米)、酒(みき、酒造技術)、塩、魚などの神饌(みけ)の他、鉄製の武器(刀剣類)や農工具(=製鉄・鍛造技術)・器・玉(=宝飾加工技術)・鏡(=鋳造・研磨技術)・衣類・布類(=養蚕・製糸・織布技術)、
等々で、これらの品々は、神々の霊魂が宿る依り代、神々の象徴でもあった。それが、奈良時代後半から平安時代前期にかけて、幣帛は特に布類を指すようになる(仝上)、とある。「五平餅」は、そうした供えた「幣帛」の一つとみられる(仝上)。
串に物を挟み、または刺して神を祀るのは日本の古い風習である、
から(たべもの語源辞典)、
御幣餅、
と呼んだとみて間違いはなさそうである。
山小屋でこの餅の焼き立てを山の神に供えるとされ、その形が神さまの御幣のようであるから御幣餅と呼んだものを、五平と当て字で書き、五平という人が作り始めたといったような伝説を考え出したものであろう」
とする(仝上)のが妥当のようである。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください