2020年03月22日

楊枝


「爪楊枝」は、

小楊枝(こようじ)、

ともいうが、「楊枝(ようし)」は漢語である。隋書(眞臘傳)に、

毎旦澡洗、以楊枝浄歯、讀誦経呪、又澡灑乃食、食罷還用楊枝浄歯、又讀誦経、

とあるように、「楊枝」は、奈良時代、仏教とともに伝来した、とされる。

仏教では、僧侶が常に身につけておくべきその第1に楊枝が出てきます、

とありhttp://www.cleardent.co.jp/siryou/index2.html

歯木、

と呼ばれ、

お釈迦様(紀元前500年頃)が、弟子たちにこの歯木で歯を清潔にすることを教えたのが始まり、

とされておりhttp://www.sanshu-ind.co.jp/youji-gogenn1.htm、もともと

仏家(ぶっか・ぶっけ)では浴室で身体を清浄にする七物の一つ、

とされており(岩波古語辞典)、

七つの物を用ゐるといふは…こまやかなる灰と楊枝と帷(かたびら)となり(三宝絵詞)、

とある(仝上)。で(日本語源大辞典)、

中国において楊柳(ようりゅう)でつくられたことからきている。この漢語が現物とともに日本に渡来し、そのまま「ようじ」と音読され普及した、

のである(日本大百科全書)。

平安時代中期の分類体辞典『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』にすでに楊枝の名称がみえ、……10世紀なかばに藤原師輔(もろすけ)が記した『九条殿遺誡(くじょうどのいかい)』には、子孫に与える訓戒として、毎朝楊枝を使えといっているので、少なくとも貴族社会には普及していた。大きさについて室町時代中期の辞書『嚢鈔(あいのうしょう)』は、「三寸(約9センチメートル)ヲ最小トシ、一尺二寸(約36センチメートル)ヲ最大トス」と記し、現在の妻楊枝よりもかなり長いものであった、

とある(仝上)。これは、

ヤナギの枝を細長く削り、先をとがらせたもの、

で、

本来は歯ブラシのように使用する、

もので、

楊柳の枝に呪術的な意味があり、病を治し、歯痛を止める効果があるとされたために、楊枝がつくられたと考えられる、

とある(日本語源大辞典)が、

鎮痛解熱剤としてもちいられる「アスピリン」という物質がヤナギ科の植物に含まれていることから、噛むことは虫歯の痛みにきく、

という説(語源由来辞典)もあり、もしそうなら、実用的でもあった。

庶民の間に普及したのは、江戸初期(1624~1704年)で、柳や黒文字の木の一端を木槌で叩き、針を並列した器具で梳いて繊維状にした、

総(ふさ)楊枝、
房楊枝、

が生まれhttps://www.dent-kng.or.jp/museum/ja/hanohaku02/た。房楊枝の考案は、京都の郊外の猿屋が商品として売り出した、とされる(仝上)。で、小さいものは、

小楊枝、
爪楊枝、

と呼び、歯磨き用と区別した。「つまようじ」を、

黒文字、

と呼ぶのは、黒文字の木で作られた楊枝を指して言ったからだが、柳の他、

杉、竹なども用いられたが、江戸時代には特に黒文字を皮をつけたまま楊枝としたものが貴ばれた。大きさも三寸から六寸以上のものもあり様々であったが、中世後期には尖端を削ってとがらせた小さなものが作られ、ふさ楊枝などの大きなものに対して爪楊枝、小楊枝と呼ばれることになった、

とある(日本語源大辞典)。なお、

使用後には折って使い捨てにしないと悪いことが起こる、

という俗信があったらしい(仝上)。

「爪楊枝」とあてている「つま」については、「つまようじ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/444901278.htmlで触れたことと重なるが、「つま」http://ppnetwork.seesaa.net/article/443211797.html?1477684696で触れたように、

「端(ツマ)、ツマ(妻・夫)と同じ」

で、「端」は、

「物の本体の脇の方、はしの意。ツマ(妻・夫)、ツマ(褄)、ツマ(爪)と同じ」

で、その意は、「つま(妻・夫)」を見ると解(げ)せる。

「結婚にあたって、本家の端(つま)に妻屋を立てて住む者の意」

つまりは、「妻」も、「端」につながり、「つま(褄)」も、

「着物のツマ(端)の意」

「つま(端)」につながる、とする説と、もう一方、「つま(端)」は、

「詰間(つめま)の略。間は家なり、家の詰の意」

で(大言海)、「間」とは、

「家の柱と柱との中間(アヒダ)」

の意味がある。さらに、「つま(妻・夫)」も、

「連身(つれみ)の略転、物二つ相並ぶに云ふ」

とあり(仝上)、さらに、「つま(褄)」も、

「二つ相対するものに云ふ。」

とし(仝上)、「つま(妻・夫)」の語意に同じ」とする説がある。これと関わる言葉に、

爪櫛(つまぐし)、

というのがあり、それは、

歯の目の細かい櫛、

の意だが、

ツマ(爪)は櫛の歯が密で、閒が迫っている意(古事記伝)、

という解釈もある(日本語源大辞典)。

つまり、「つま」には、

はし(端)説、

あいだ説、

があるのである。その意味で、「つまようじ」の「つま」を、「爪」としていいかどうかは疑問がある。

妻楊枝、

と当てているものもあるが、これも「つま」の由来から考えると、間違いではない。日本語源広辞典は、「つま」を、

説1は、『ツマ(物の一端)』が語源で、端、縁、軒端、の意です、
説2は、『ツレ(連)+マ(身)』で、後世のツレアイです。お互いの配偶者を呼びます。男女いずれにも使います。上代には、夫も妻も、ツマと言っています、

と二説挙げるように、つまようじ」の「つま」が、

はし、

関係(間)、

と、「端」の意味に、(歯の)「間」という意味が陰翳のように付きまとっているという気がしてならない。どちらと決めない陰翳が、面白いのかもしれない。

房楊枝で歯を磨く女.jpg

(房楊枝を使って歯磨き 月岡芳年『風俗三十二相』 https://edo-g.com/blog/2016/01/tooth.htmlより)


ところで、最近の楊枝の、「こけし」様のものは、

つまようじは、もともとノコギリで切断して生産されていました。ところが、このような作り方だと精度が悪く、切断面が必ずざらざらした状態になってしまい、ケバだってしまいました。
そこで今度はグラインダー(砥石)で切断するようになりましたが、そうするとケバ立たなくなったものの、摩擦で黒く焦げてしまうようになりました。そこで、この黒い焦げ目を逆手に取り、ごまかすために、オマケのみぞをつけて「こけし」に見立てて装飾したのがそのはじまりだったようです。
切断のついでにミゾをつけるので、特別なコストはかからず、しかも綺麗に仕上がるため業者としては、都合がよく、以後日本のつまようじにはこけしが装飾されるようになりました。

とあるhttps://mag.japaaan.com/archives/94846

現代のつまようじ.jpg

(現代のつまようじ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%88%AA%E6%A5%8A%E6%9E%9Dより)


参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:26| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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