2020年03月25日

痛し痒し


「痛し痒し」は、

掻けば痛いし、掻かねば痒いしの意、

で、

片方を立てれば、他方に差しさわりが生ずる状態で、どうしたらいいか迷うときにいう、

とあり、

どのようにしても、結局自分に具合の悪い結果になる、

とある(広辞苑)。ジレンマを言い表す似た言い方に、

頭押さえりゃ尻上がる、
あちらを立てればこちらが立たず、
彼方を祝えば此方の怨み、
彼方に良ければ此方の怨み、
出船に良い風は入船に悪い、
河豚は食いたし命は惜しし、
右を踏めば左があがる、
両方立てれば身が立たぬ、

等々あるが、いずれも、決断を迷っている状態を指しているが、

痛し痒し、

のもつ、

どっちをとっても不都合さの含意はなく、むしろ、強いて言うなら、

前門の虎閘門の狼、

の方が似ているのではないか、という気がする。

痛し痒しの痘瘡、

という言い方もあるらしいhttp://kotowaza-allguide.com/i/itashikayushi.htmlが、この語意の通りとすると、リアルすぎる。

痛し痒しも瘡にこそよれ、

という言い方は、

痛し痒しと迷っていられるのも、そのできものの程度によるのであって、本当にひどいときは苦痛のためにその余裕はない。どうしていいか判断に迷うときは、時と場合による。危急の差異まで優柔不断というわけにはいかない、

と、「痛し痒し」の反対の意味になる。

痛くも痒くもない、

となると、

痛痒を感じない、

つまり、

少しも感じない、

意になる。

痛いところを衝く、

というと、

相手の弱点を捕えて攻める、

意になり、

痒いところへ手が届く、

となると、

細かな点にまで行き届く、

意になる。

隔靴掻痒、

は、

靴の上から足の痒いところを掻くように、はがゆい、もどかしい、

意味になる。

「痛い」http://ppnetwork.seesaa.net/article/454441352.htmlについては、触れたが、

甚い,

とも当て、大言海は,「いたし」を,

痛,

を当てる項と,

甚(痛・切),

を当てる項とを区別し,後者については,

(前者の)転意,事情の甚だしきなり,字彙補「痛,甚也,漢書,食貨志,市場痛騰躍」(痛快,痛飲)、

としている。前者については,

至るの語根を活用せしむ(涼む,すずし。憎む,にくし)。切に肉身に感ずる意。…身に痛む感じありて,悩まし(痒しに対す)、

とある。しかし,日本語源広辞典は,

イタイ(程度が甚だしい)、

が語源とし,激しい程度の意を先とする。日本語源大辞典も,

「痛むと同根の,程度の甚だしさを意味するイタから派生した形容詞、

とする。とすると,必ずしも,痛みを指していたのではなく,

ひどい,
はげしい,
はなはだしい,

という状態を指していた状態表現から,「傷み」や「悼み」という感情表現(価値表現)が分化してきた,ということになる。岩波古語辞典の「いた」では,

極限・頂点の意。イタシ(致)・イタリ(至)・イタダキ(頂)と同根。イト(甚・全)はこれの母音交替形、

とあり,どうやら,大言海の「至る」とも重なることになる。

「痒い」は、大言海は、

掻かま欲しき意の語、

とする。日本語源広辞典も、

カ(痒)+ユシ(形容詞化)です。皮膚を掻きたい気持ちの表現、

と、ほぼ同趣旨である。

カキユユシ(掻忌々)の義(言元梯)、
掻ユスル(和訓栞)、
カキユルシキ(掻動如)の義(名言通)、

等々、多く「掻く」とつなげている。まさに、

痛し痒し、

なのである。

参考文献;
尚学図書編『故事ことわざの辞典』(小学館)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:20| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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