「利休煮」の「利休」は、千利休を指すが、利休が作ったものではない。「利久煮」の他にも、
利休蒸、
利休焼、
利休和、
利休蒲鉾、
利休善哉、
利休煎餅、
利休醤(びしお)、
等々利休の名の付くものは多いが、利休考案のものはひとつもない(たべもの語源辞典)、らしい。
(茄子の利休煮 https://oceans-nadia.com/user/17/recipe/1716より)
「利休煮」は、
魚貝を醤油・味醂・砂糖味で煮詰め、白ごまを煎ったものを振りつけたもの、
とある(仝上)。
利休焼、
利休和、
なども胡麻を用い、
料理法で利休の名の付くものは、胡麻を使ったものが多い、
ともある(仝上)。で、
利休煮、
は、胡麻を加えたから名づけられた、と見られている。
「利休好みだろうとか、利休にふさわしかろうということで利休の名をつけたものである。初めは利休なら喜ぶだろうと考えてつけた利休煮が、胡麻を使ったものを利休焼、利休蒲鉾などと呼び始めると、利休とは胡麻のことだというようなことになり、胡麻を使えば利休となづけられるようになった」
とあり(仝上)、それは、
千利休が取り入れた精進料理には胡麻豆腐、胡麻和えなど、胡麻を使ったものが多いことから(利休の死後)、利休が愛したであろう料理として、「利休」の名がつけられた、
と考えられる(https://www.shinsei-ip.ne.jp/rikyu/concept.html)、ともある。
だから、和食用語では、
利休、
を使わず、
利久、
を使い、
通常はゴマを使った料理の名称、
で(https://temaeitamae.jp/top/t2/kj/99992_K/05.html)、
ごま煮、
南部煮、
ともいう(世界の料理がわかる辞典)、とある。これは、
南部せんべいで知られる南部地方(南部氏の旧領地である岩手県と青森県にまたがる地域)が胡麻の産地であることから名がつけられています、
とある(https://nimono.oisiiryouri.com/rikyuuni-gogen-yurai/)。
なお、「ごま」については、「ごまをする」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/464781102.html)で触れた。
利休ではなく「利久」と表記するのは、
休の文字が商売を行う人々にとって忌み言葉だからだと云われる、
とある。「利休」にあやかったのだろうが、後世の人々が「利休好み」として考案したものが殆どで、
「利久煮」や「利久焼き」「利久玉子」のほか、汁の「利久仕立て」、ゴマ(又は揚げ油が胡麻)衣の「利久揚げ」、切り胡麻を振って蒸す「利久蒸し」、菓子では「利久まんじゅう」など、質素を旨とした利休が汁の実にしそうな「利久切り」という切り方もあれば、懐石箸の名称も「利久箸」という。
とある(仝上)。「利休好み(ごのみ)」とは、
利休の好んだ作法・道具・色彩、利休箸・利休鼠の類、
とあり(広辞苑)、広く、
茶人風、
を指す。「利久焼(りきゅうやき)」は、
材料に胡麻(ごま)をまぶしつけた焼き物や仕上げに練りごまを塗ってあぶる料理の名称、
である(https://kondate.oisiiryouri.com/japanese-food-rikyuuyaki/)。
この他、「利休」の名の付くものには、質素を旨とした利休が汁の実にしそうな
利久切り、
という切り方もあれば、懐石箸の名称も、
利久箸、
という(https://temaeitamae.jp/top/t2/kj/99992_K/05.html)。「利休箸」は、
杉で作った、両端を細く削った箸。千利休が用いたのでこの名があるとされる。利休は客を招く日の朝に自ら杉材の箸の両端を細く削り出してその芳香をもてなしとしたと伝えられる。懐石に用いるが、一般にあらたまったもてなしや祝儀の膳にも用いる。元来は杉材のものをいった
とある(食器・調理器具がわかる辞典について)。一応、
千利休考案、
とされ、
中央部をやや太く、割れ目に溝を加工して、両端を細かく削り、面を取った”中平両細”の両口箸、
が特徴で、
八寸利久箸(21cm)、
九寸利久箸(24cm)、
がある(http://web1.kcn.jp/hasikumi/syurui.html)、とか。
「懐石料理」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/471009134.html)については前に触れた。
この他、色彩にも、江戸時代に考えられた、
利休色、
利休鼠、
利休茶、
というのがあり、それぞれの色は文献によって多少のばらつきがある、
利休色…灰みを帯びた黄緑色(抹茶色よりも彩度の低い渋い色)
利休茶…やや緑みを帯びた茶色
利休鼠…やや緑みを帯びた灰色
とされるが、それぞれの説明は、バラバラで、利休色(りきゅういろ)は、
緑色を帯びた灰色(広辞苑)、
緑みのある茶色(https://washimo-web.jp/Report/Mag-Rikyunezu.htm)、
緑みの茶色(色名がわかる辞典)、
黒みがかった緑色(デジタル大辞泉)、
暗い灰緑色(大辞林)、
緑色を帯びた灰色(日本国語大辞典精選版)、
等々と色々であるが、今は、たとえば、
Webカラー値・#8F8667
RGB・143 / 134 / 103
などと決まっている。
「利休鼠」は、色としては、
りきゅうねず、
というらしいが、これも、
利休色の鼠色を帯びたもの(広辞苑)、
緑みを帯びた鼠色(https://washimo-web.jp/Report/Mag-Rikyunezu.htm)、
緑みの灰色(色名がわかる辞典)、
利休色といわれる灰色がかった黄緑色に、鼠色が加わったもの(日本大百科全書)、
等々と説明されるが、現在は、たとえば、
Webカラー値・#888E7E、RGB・136, 142, 126、
などと決められている。
この「利休鼠」は、北原白秋作詞の「城ヶ島の雨」で、
雨はふるふる城ヶ島の磯に
利休鼠の雨がふる
で歌われている。
「利休茶」も、
利休色の茶がかったもの(広辞苑)、
色あせた挽き茶のような緑がかった薄茶色(https://irocore.com/rikyucha/)、
等々と説明されるが、
Webカラー値・#98906e、RGB・152、144、110、
と決められている。
また、「利休下駄」というものもあるが、
日和下駄の一種で、木地のままで薄い歯を入れたもの、
とある(広辞苑)が、「雪駄」も、
千利休が水を打った露地で履くためや、下駄では積雪時に歯の間に雪が詰まるため考案したとも、利休と交流のあった茶人丿貫の意匠によるものともいわれている。主に茶人や風流人が用いるものとされた、
とあり(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%AA%E9%A7%84)、利休の名はつかないが、利休ゆかりである。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95