2020年04月10日

柏餅


「柏餅」は、

しんこ(新粉・糝粉)の餅に餡を包みて、又、枯らしたる柏の葉を二つ折りにして、包みて蒸したるもの、

である(大言海)。「しんこ」は、

新米の粉の意か、

とあり(大言海)、

粳米の粉を、水に捏ねて、蒸して、餅の如くしたるものの称、

とある(大言海)。

粉餈、
糕、

とも当てる。「糕」「餈」は、「餅」http://ppnetwork.seesaa.net/article/474462660.html?1586286757で触れたように、「餻」(コウ)は、

だんご(粉餅)、

つまり、

小麦以外の稗、粟、コメなどの粉から作り、蒸したもの、

「餈」(シ)は、

もち米をむして搗きたるもち(稲餅)、

を指す。

「柏」の葉の代わりに、

サルトリイバラ(山帰去)の葉、

を用いたりする(たべもの語源辞典)、とある。

「柏」の葉を使うのは、

新芽が出なければ古い葉が落ちないものなので、家系が絶えないという縁起から、

である、という(仝上)。「柏餅」のの中に入れる餡は、こし餡、つぶ餡、味噌餡などがあるが、

柏の葉を外表に巻いているものは、小豆あん、中表(裏を外向け)に巻いているものは、味噌あん、

と分けているhttp://www.i-nekko.jp/gyoujishoku/haru/kashiwa/、らしい。

「柏餅」は、平安頃から食べられたようだが、五月五日の供えとして定着したのは、中世以降らしい(日本食生活史)が、

現在のような柏餅ができたのは、徳川九代将軍家重、十代将軍家治のころ、宝暦年間(1751~64)と思われ、コ月の節句に柏餅を食べるようになったのは江戸時代に入ってから、

とある(たべもの語源辞典)。それが、

参勤交代で日本全国に行き渡ったと考えられているが、1930年代ごろまではカシワの葉を用いた柏餅は関東が中心であった。カシワの葉でくるむものが生まれるより前にサルトリイバラなどの葉で包む餅が存在し、カシワの自生が少ない地域ではこれが柏餅として普及していた、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%8F%E9%A4%85。ただ、

柏餅が広まり始めたといわれている江戸時代には「味噌餡」や「塩餡」が主流だった、

ともあるhttp://www.nikkyo-create.co.jp/food_and_health_column/column_backnumber/column0015

柏餅.jpg



もともと柏の葉で食べ物を包むというのは昔から行われていて、

古代に飯を盛るのに木の葉を縫い合わせたものの上にのせた。それを「かしは」とよぶ。すなわち「炊ぎ葉」(かしはぎ)である、

とある(たべもの語源辞典)。「膳」http://ppnetwork.seesaa.net/article/471403391.htmlで触れたように、「膳」を、

カシハデ、

と訓ませ、

供膳、
饗膳、

の意であるが、

饗膳を司る人、

の意にも使う(漢字源)。「かしわで(膳・膳夫)」は、

古代、カシワの葉を食器に用いたところから、

いう(デジタル大辞泉)が、

中世、寺院で食膳調理のことをつかさどった職制、

に転じ、

供膳、
饗膳、

の意となる。「かしはで」は、

膳部、

と当てると、

大和朝廷の品部(しなべ)で、律令制では宮内省の大膳職・内膳司に所属し、朝廷・天皇の食事を調製を指揮した下級官人、

である(広辞苑)。

たべものを盛る葉には、ツバキ・サクラ・カキ・タチバナ・ササなどがあるが、代表的なのがカシワであった、

(仝上)のであり、

カシワの葉に糯米(昔は糯米を飯としていた)を入れて蒸したのは、古代のたべものの姿を現している、

ともいえるのである(仝上)。ただ、江戸文化を反映して全国に広がった柏餅に対し、

伝統を重んじる京文化圏では粽が伝承され、今でも関東では柏餅、関西では粽が親しまれています、

とあるhttp://www.i-nekko.jp/gyoujishoku/haru/kashiwa/

ちなみに、「柏」の字は、

本来はヒノキ科の針葉樹コノテガシワを指す漢字で、コノテガシワは柏餅に使う葉とは全く異なる。柏餅に用いるブナ科のカシワには、厳密には「槲」の字を使うのが正しい、

らしいhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%8F%E9%A4%85。「柏(栢)」(漢音ハク、呉音ヒャク)は、

会意兼形声。白の原字はどんぐり状の小さい実の形を描いた象形文字。柏は「木+音符白」。円く小さい実のなる木、

とあり(漢字源)、「ひのき」「このでかしわなど、ひのき類の常緑樹の総称」である。わが国では、

かしわ、ブナ科の落葉高木、

に当てる。「槲」(漢音コク、呉音ゴク)は、

会意兼形声。「木+音符斛(コク ます、ます型)」で、実が、ます型の台座の上にのった姿をした木」

で(仝上)、「かしわ」「ブナ科の落葉高木」の意である。

くぬぎに似て、葉が大きいので、おおばくぬぎともいう、

とある(仝上)。

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:柏餅
posted by Toshi at 04:07| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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