柏手


「柏手(かしわで)」は、

拍手、

とも当てるが、

「柏」は「拍」の誤写か、

という説(広辞苑)もある。

神を拝むとき、手のひらを打ち合わせてならすこと、

であり、

開手(ひらて)、

ともいう、とある(仝上)。逆に、

柏手と書かれることもあるが、誤りである。

とありhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8B%8D%E6%89%8B_(%E7%A5%9E%E9%81%93)

正確には、柏手が誤りなのではなく、柏手と拍手を混同している書物等があり、柏手と拍手は別物、

ともある(仝上)。「柏手」の語源説に、

神への供え物を柏の葉に盛って供えたのがカシワの語原です。供えた後拝礼の時の手打ちをカシワデと言いました。後に、中国語の拍手を当てたものなのです。柏と拍の誤り説は疑問です(日本語源広辞典)、

一説に、古代では柏の葉を食器で用いたことから、宮中の食膳を調理する者を「かしわで」(「で」は「人」の意)と呼び、その料理人が手を打って神饌(しんせん)を共したことに由来する(由来・語源辞典)、

等々とあり、神前への供えと、拝礼をセットと考えると、「柏手」は「柏手」で、「拍手」とは異なる、というのはあり得る。

「拍手」(はくしゅ)は中国語であり、

拍掌(はくしょう)、

とも言う。

拍手喝采、

とも使う。

なお「拍子」(はくし)も中国語で、

音曲の抑揚疾徐の調子を助けそろへる義、

である(字源)。わが国では、それを、

拍子(ひょうし)、

と言い、同じ意味で使う(仝上)。広辞苑には、「拍手」は、

手を打ち鳴らすこと、激励、祝意などを表すために手を打つこと、

とある。「柏(栢)」(漢音ハク、呉音ヒャク)は、前に触れたが、

会意兼形声。白の原字はどんぐり状の小さい実の形を描いた象形文字。柏は「木+音符白」。円く小さい実のなる木、

とあり(漢字源)、「ひのき」「このでかしわなど、ひのき類の常緑樹の総称」である。わが国では、

かしわ、ブナ科の落葉高木、

に当てる。「拍」(漢音ハク、呉音ヒョウ)は、

形声。「手+音符白」で、博(ハク)と同じく、手のひらをパンと当てて音を出すこと、

とある。

あくまで、手を鳴らす意の「拍手」と、神前で手を打つ「柏手」を混同することは、かつてはあり得ないのではないか。このことは「かしわで」http://ppnetwork.seesaa.net/article/448880057.htmlで触れた。

明治以前の日本には大勢の観衆が少数の人に拍手で反応するといった習慣はなく、雅楽、能(猿楽)、狂言、歌舞伎などの観客は拍手しなかった。明治時代になり西洋人が音楽会や観劇のあと「マナー」として拍手しているのに倣い、拍手の習慣が広まったものと推測される、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8B%8D%E6%89%8B。つまり,わが国には,「はくしゅ」というものはなく,いまいう,「かしわで」のみが,「手を打つ」習慣であった,からだ。だから、

魏志倭人伝には、邪馬台国などの倭人(日本人)の風習として「見大人所敬 但搏手以當脆拝」と記され、貴人に対し、跪いての拝礼に代えて手を打っていたとされており、当時人にも拍手を行ったとわかる。古代では神・人を問わず貴いものに拍手をしたのが、人には行われなくなり、神に対するものが残ったことになる、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8B%8D%E6%89%8B_(%E7%A5%9E%E9%81%93のは、今日言う「拍手」ではなく、「柏手」ではないか。大言海も、

饗膳(カシハデ)より,酒宴に手を拍(う)つ拍上(ウタゲ)に移りて成れる語なるべし、

とし、貞観儀式鎮魂祭儀に、

大膳進就版申云々,御飯賜畢,共拍手三度,觴三行,亦拍手一度

等々を引き,

然れども,カシハデとは,古へに聞こえぬ語なりと云へば,いかがあるべき,拍(うつ)を柏(かしは)と誤読せしに起こる云ふは,拙し、

とする。拍手,拍子と使う「拍」と間違えようはない気がする。

むしろ、「柏手」と同音の、「膳」を、「膳」http://ppnetwork.seesaa.net/article/471403391.htmlで触れたように、

カシハデ、

と訓ませ、

供膳、
饗膳、

の意であるが、

饗膳を司る人、

の意にも使う(漢字源)。「かしわで(膳・膳夫)」は、

古代、カシワの葉を食器に用いたところから、

いうのである。これとのかかわりで、

古く手を打って噛み拝むことを拍手と書いたが,後に『柏』と『拍』の混乱,またカシハデ(膳夫)との混合により誤ったもの(貞丈雑記・漫画随筆・類聚名物考・古事記伝・隣女唔言・かしのしず枝),
神供をカシハの葉に盛り,手を拍って膳をすすめるから(牛馬問),
カシハデ(膳部)が打つ手から(俗語考),
拍手する時の手の形が柏の葉に似ているから(関秘録・仙台間語・貞丈雑記),

等々「柏」「膳」とのつながりを見る説が多い。

「柏」http://ppnetwork.seesaa.net/article/474516605.html?1586545258で触れたように、「柏」も、

食物を木の葉に盛る古習からカシハ(炊葉)の義(国語学通論),
カシハ(柏・槲)の葉に食物を盛ったことから(類聚名物考・本朝辞源),
ケシキハ(食敷葉)の義(言元梯),

と,膳と深くつながる。漢字を当てないかぎり,

かしはで,

は,

かしわで,

でしかない。それに漢字を当てはめた時,当然中国語の「拍手(はくしゅ)」を当てたはずである。それに,敢えて,

柏,

の字を当てはめても,通じるだけの文化的な背景,文脈があった。いや,「柏」の字を当てた方が,しっくりしたに違いないのである。なお大言海は、

両の掌を打ちあわせて、音を立てさすること、感動の切なる餘りにするわざなるを、礼儀に移してもするなり、後に、専ら神拝に行うこととなる、

と、神前を後のこととしている。是非はわからないが、「膳」の謂れから見ると、逆ではないか、という気がしてならない。神前にしていた柏手が、饗宴のそれになり、拍手と混同した、と。

古くは、四度打つのが正式、

とある(岩波古語辞典)が、

四度拍つを一段とす、四段なるなり、八開手(やひらで)あり、軽く二つ拍つを短手(しのびて)と云ふ、長く拍つを重しとす、

とある(大言海)。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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