面妖


「面妖」は、

不思議なこと、
奇妙なこと、

という意である(広辞苑)。

「めいよう(名誉)」の転。「面妖」は当て字、

とどの辞書にも載る。で、「めいよう(名誉)」を見ると、

メイヨの転、

とあり、

ほまれ、
奇妙、不思議、

の意が載る(広辞苑)。で、「めいよ(名誉)」を見ると、

ほまれ、
名高いこと、
すぐれていると認められて得た尊厳、体面、面目、
功績をたたえて与えられる称号、身分などを表す名詞に付けて用いる、
有名であること、名高いこと(善悪ともにいう)、
すぐれていること、上手なこと、
不思議であること(さま)、奇妙、

と載る(大辞林)。つまり、「めいよ(名誉)」に、

めんよう、

の意が既にあるのである。「名誉」は、漢語である。

名聲、
名聞、

とほぼ同義、

ほまれ、

の意である。「列子」天瑞に、

矜功能、修名誉、

とある。

大言海には、「めいよ(名誉)」とは別に、

めんよ(名誉)、
めんよう(名誉)、
めんよう(面妖)、

がそれぞれ別に項を立てている。

めいよ(名誉)→めんよ(名誉)→めんよう(名誉)→めんよう(面妖)、

と転訛していったとみられる。片言(慶安)に、

名誉、メイシャウ、メンヨ、

とある。「名誉」を、

メイシャウ、

とも訓んだらしい。すでに江戸初期には、

メンヨ、

と訛っていたことがわかる。式亭三馬の「浮世床」(文化)には、

名誉男と云ふものは、新しい着物が出来ると、古いのには目もかけねえよ、

とあり、「名誉男」の「名誉」に、

メンヨウ、

と訓ませている。更に、同時期の式亭三馬の「浮世風呂」(文化)には、

たった今汲んできたが、はてめんようナ、

と、「面妖」の意でも使っている。

ほまれ、

の意が、

体面、面目、

称号、

の意を含み、

すぐれていること、上手なこと、

の意から、善悪両用に、

名高いこと、

になったあたりから、

奇妙さ、
不思議感、

の含意が生じたものだろうか。

名誉、

では言い尽くせず、

面妖、

と字を当てたことで、

名誉、

の意味の紐が切れた。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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