2020年05月11日
ちんぷんかんぷん
「ちんぷんかんぷん」は、
珍紛漢紛、
珍紛漢糞、
などと当てる(広辞苑)。
ちんぷんかん(珍紛漢)、
とも言う。「ちんぷんかん」は、
珍糞翰、
とも当てる(仝上)。
わけのわからないことば、
また、
それをいう人、
の意である。大言海は、
唐人の寝言、
の意とも言う。「唐人の寝言」は、
何を言っているのかわけのわからないことば、
また、
筋の通らないことをくどくど言うことのたとえ、
の意で、「ちんぷんかんぷん」とほぼ同義である。
もと儒者の用いた漢語を冷やかした語に始まる、
また、
長崎の人が紅毛人の語のわからないことから言い始めた、
という説が載る(広辞苑)。因みに、「紅毛人」(コウモウジン)は、広く白人を指すが、江戸時代は、
オランダ人、
を指し、南蛮人は、
ポルトガル人、スペイン人、
を指した。
もともと、
「ちんぷん」(珍紛・陳紛・陳糞)、
という言葉があり、
唐人のちんぷんと鼻をうごめきつくる詩(俳諧・破枕集序)、
というように、
近世、中国人の発音を形容した語、
という意味で使われ(岩波古語辞典)、それが、
心皆蓮歌なれども詞をば俳諧めかしちんぷんといふ(俳諧・佐夜中山)、
というように、
訳の分からないことばの意でも使うようになる(岩波古語辞典)。
とすると、やはり、「ちんぷんかんぷん」「ちんぷんかん」は、
主として漢語・漢文をさしていう、
という(江戸語大辞典)のが正しいのではあるまいか。
「ちんぷんかん」に「ぷん」をつけて、いわば語調をととのえた感じであろうか。あるいは、「ちんぷん」に「かんぷん」と続けて、同じ効果を狙ったという見方もできる。
ひっちゃかめっちゃか、
といったふうに。
ただ、中国語由来という説もある。
中国には聞いてもわからないという意味の「チンプトン」、見てもわからないという意味の「カンプトン」という言葉があり、「チンプトン、カンプトン」から、見ても聞いてもわからない意味になった(語源由来辞典)、
聴はティンと読み「聴く」、看はカンと読み「見る」の意味です。そうしますと、聴不得看不得はティンプタ・カンプタと読める(https://ameblo.jp/chandan-neko/entry-12394199117.html)、
等々。ただし、
「チンプトン」、「カンプトン」「は、チンブトン(ティンブトン)」「カンブトン」(puではなくてbuなど)と表記する場合もある、
とあり(https://wisdom-box.com/origin/ta/chinpunkanpun/)、ちょっと肯い兼ねる気がする。仮に、中国語でそう言ったとしても、もともと「ちんぷん」という言葉があったとすれば、
ちんぷん、
に、語呂で、
かん、
ないし、
かんぷん、
を加えたというのでいいのではないか。「ちんぷんかん」の「珍紛漢」の、
漢、
は、
門外漢、
というように、
男、
を指す。その意味では、
ちんぷんな言葉をしゃべる奴、
と、
漢、
を当て、その言葉の流れで、
ちんぷんかんぷん、
と「ぷん」を加えた、ということではないか。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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