2020年05月14日
めちゃくちゃ
「めちゃくちゃ」
は、
滅茶苦茶、
目茶苦茶
などと当てる。当て字である。
めちゃめちゃ(滅茶滅茶)、
めたくた、
めためた、
めっためた、
というのも同義である。
秩序・道理などがひどく乱れていたり統一がとれていなかったりするさま、
原形を止めないくらいものが徹底的に破壊されている様子、
程度が非常に大きいさま、
といった意で使われる(擬音語・擬態語辞典)。
秩序・道理などがひどく乱れていたり統一がとれていなかったりするさま、
が本来の意味で、そこから、
原形を止めないくらいものが徹底的に破壊されている様子、
程度が非常に大きいさま、
の意味が派生したと考えられる(仝上)。
原形を止めないくらいものが徹底的に破壊されている様子、
意では、
めためた、
という言い方もする。「めちゃくちゃ」は、
近世からみられる語。道理に合わないことを表す「めちゃめちゃ」と紙などが無造作に丸められて皺だらけである「くちゃくちゃ」とが合わさってできた語だと思われる、
とある(仝上)。「めちゃくちゃ」の類義語、
めちゃめちゃ、
は、
どちらかといえば、「めちゃくちゃ」の方が乱れる程度が大きく、
原形を止めないくらいものが徹底的に破壊されている様子、
の意は、木っ端微塵に破壊される感じがある(仝上)、とある。
めちゃくちゃ、
も
めちゃめちゃ、
も、いずれも、
めちゃ(滅茶・目茶)、
を強調して、「くちゃ」「めちゃ」と語調を整えるために添えたと思われるが、かつては、
めちゃ、
だけで通用した、とされる(仝上)。江戸末期、「めちゃ」の訛った、「めっちゃ」の、
めっちゃ踊り、
という言い方があった(江戸語大辞典)。この、
めちゃ、
は、
むちゃ、
の転訛で、
ムチャ(無茶)は、「ム」の母交[ue]でメチャになった。これを重用して「メチャメチャ」(滅茶滅茶)という。メチャ(滅茶)はメッタ(滅多)に転音、
となる(日本語の語源)。江戸期、擬人化した、
むちゃ助、
という言葉が、
物を知らない、
ばか、
の意で使われている(江戸語大辞典)
「めちゃめちゃ」「めちゃくちゃ」は、
むちゃくちゃ、
が変化したものだが(仝上)、「むちゃ」は、
無茶、
と当てる。これももちろん当て字である。「むちゃ」については、
仏教語の無作(因縁によってつくられたものではない)が語源とする説、
がある(国語音韻論=金田一京助・上方語源辞典=前田勇)が、こじつけではないか。他に、
ムタイ(無体)が語尾を落としたムタは「タ」の拗音化でムチャ(無茶)になった。原義の「すじみちが通らない。道理をかえりみない」から、「度合いが強い。たいへん」に転義して多用されている、
という音韻変化説がある(日本語の語源)が、この方が自然ではないか。
なお、「無体」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/464167011.html)、については、触れた。
ここからは少し憶説かもしれないが、
めためた、
という言葉に着目したい。
多勢が無勢に、または、強者が弱者に攻撃を加え、物や秩序が原形を止めてはいられないほど、徹底的に壊したり乱したりする、
という意だが、転じて、
むやみやたら、
めちゃくちゃ、
の意でも使う(広辞苑。日本永代蔵「名医に替へてみしにめためたと悪くなり」)。「めためた」は、室町時代から見られる語で、日葡辞書には、
「人を殺すために大勢でその家に撃ちかかったり襲いかかったりする様子、または、物を倒したり崩したりする様子」という解説がある。ただし、必ずしも暴力的でなく、単に程度が悪い方に甚だしいことを表すこともあった、
とあり(擬音語・擬態語辞典)、古くは、
めた、
だけで程度の甚だしさを表した。その意味で、
めた、
と、
めちゃ、
むちゃ、
とは意味が重なる。程度を表す言葉には、
めった(滅多)、
めったやたら(滅多矢鱈)、
もある。どうも、
めた→むちゃ→めちゃ、
か、
めた→めちゃ→むちゃ、
という転訛もあり得るのではないか、という気がした。「めたくた」は、過渡期の言い回しに思える。いずれも、擬態語由来と考えていい気がする。
参考文献;
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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