2020年05月24日

最後屁


「最後屁」は、

最後っ屁、

とも表記する。また、

鼬の最後っ屁、

とも言う。

鼬などが追い詰められてくるしさのあまり放つ甚だしい悪臭、

の意だが、転じて、

窮余の一策、

つまり、

切羽詰まった時などに、非常手段に訴えて難を逃れようとすること、

でもあるが、

最後に醜態を演じる、

意でもある。江戸中期の和訓栞に、

鼬の最後屁といふ諺は、本草に畏狗、逐之急便撒屁数十、満室悪臭不可嚮と見えたり、刊本、此語を闕きたり、

とある。古来鼬は、

妖怪視され、様々な怪異を起こすものといわれていた。江戸時代の百科辞典『和漢三才図会』によれば、イタチの群れは火災を引き起こすとあり、イタチの鳴き声は不吉の前触れともされている。新潟県ではイタチの群れの騒いでいる音を、6人で臼を搗く音に似ているとして「鼬の六人搗き」と呼び、家が衰える、または栄える前兆という。人がこの音を追って行くと、音は止まるという。またキツネやタヌキと同様に化けるともいわれ、東北地方や中部地方に伝わる妖怪・入道坊主はイタチの化けたものとされているほか、大入道や小坊主に化けるという、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%81。鳥山石燕の妖怪画集『画図百鬼夜行』に、

「鼬」と題した絵が描かれているが、読みは「いたち」ではなく「てん」であり、イタチが数百歳を経て魔力を持つ妖怪となったものがテンとされている。画図では数匹のテンが梯子上に絡み合って火柱を成しており、このような姿に絡み合ったテンが家のそばに現れると、その家は火災に遭うとして恐れられていた、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%81。ちなみに、テンは、

貂、黄鼬、

と当て、

哺乳綱ネコ目(食肉目)イヌ亜目 イタチ科テン属に分類、

日本には、

ホンドテン、ツシマテン、

が生息するhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%B3、鼬は、

鼬鼠、

とも当て、

ネコ目(食肉目) イヌ亜目 クマ下目 イタチ科 イタチ属に含まれる哺乳類の総称、

で、日本には、

ニホンイタチ、コイタチ、イイズナ、オコジョ

等々が棲息するhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%81

鳥山石燕『画図百鬼夜行』より「鼬」.jpg

(鳥山石燕『画図百鬼夜行』より「鼬」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%81より)

ところで「屁」は、平安中期の字書、倭名類聚鈔(和名抄)に、

屁、倍比流(ヘヒル)、下部出気也、

あり、

おなら、

の意(岩波古語辞典)だが、それが転じて、

屁の河童http://ppnetwork.seesaa.net/article/470252609.html
屁でもない、
屁の理屈、
屁とも思わぬ。
屁も引っ掛けぬ、
屁の突っぱり(にもならない)

といった、

値打ちのないもの、
役に立たないもの、

の喩えとして使われる。変な話だが、「屁」と「おなら」とは区別される。「屁」は、

ひる、

といい、「おなら」は、

する、

という(江戸語大辞典)。これは、両者の語源と関わる。

「屁」は、大言海は、

放屁(ハウヒ)の音を名とす、沖縄にて、ヒイ、

とある。確かに、その説を採るものはある(箋注和名抄)が、漢字「屁」(ヒ)は、

会意兼形声。比は「人+人」の会意文字で、狭いすき間を残して二つのものが並ぶ意を含む。屁は「尸(しり)+音符比」で、しりの両壁の並んだ狭いすきまからもれでるへ、

の意である(漢字源)。僕は、「屁」の漢字音「ヒ」の転訛、

ヒ→ヘ、

ではないか、と思う(俚言集覧・語簏)。ちなみに大言海は、「屁」を、

轉矢氣(テンシキ)、

とも言うとする。「轉矢氣」とは、他の辞書に載らないが、大言海は、「轉矢氣」の、

矢を失とするは誤り、

とし、

放屁、

の意で、

矢氣、

とも言う、とする。もっとも、他にも「屁」の語源説はあり、

フエ(笛)の反(名語記)、
ヒリネ(放音)の義(日本語原学=林甕臣)、
ヒルの転(雅言考・名言通)、
ハフ(放)の義(言元梯)、

等々あるが、いかがなものか。

「おなら」は、

ナラは鳴るの義、

とあり(大言海)、

ナラシ(鳴)のオが付いたもの(楢の落葉物語・猫も杓子も=楳垣実・江戸語大辞典)、

ということで、音からきている

参考文献;
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:最後屁
posted by Toshi at 03:29| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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