2020年05月25日

五里霧中


「五里霧中(ごりむちゅう)」は、文字通り、

五里の間に立ち込める霧、

の意で、

五里にわたる深い霧の中にいる、

という意から、、

現在の状態がわからず、見通しや方針のまったく立たない、

ということの喩えとして使われる。さらに、

こころが迷って考えの定まらない、

意にも使う(広辞苑)。

五里霧中に迷う、

ともいう(故事ことわざの辞典)

暗中模索、
霧煙模糊、

等々が同義語になる。

五里霧中.JPG

後漢書・張楷(ちょうかい)伝に、

性好道術、能作五里霧。時關西人裴優亦能爲三里霧。自以、不如楷。從學之。楷避不肯見、

とあるhttps://kanbun.info/koji/gori.html。張楷は、

能く五里の霧を作(な)す、

というので、

五里四方を霧に包む道術、

を使ったらしい。それにしても、

能く五里の霧を作(な)す、

が出典にしても、これを、

五里霧中、

の、

五里にわたる深い霧の中にいる、

という状態表現から、

現在の状態がわからず、見通しや方針のまったく立たない、

こころが迷って考えの定まらない、

の意の価値表現に展開して使った人がいるはずだが、それは伝わらない。張楷は、

字は公超、嚴氏春秋、古文尚書に通ず、門徒は常に百人たり、

とある。

賓客之を慕ふ、父が党の夙儒(しゅくじゅ)自ずから、偕(とも)に門を造る。
車馬街に填ち、徒従の止まる所無く、黄門及び貴戚の家、皆な舎を巷次(こうじ)に起す、以て過客往来の利を候(うかが)ふ。
楷、其の此の如きを疾(にく)み、輒(すなは)ち徒(しりぞき)て之を避く。
家貧にして以て業を為す無く、常に驢車(ろしゃ)に乗り県に至りて薬を売り、食を給するに足らば、輒(すなは)ち郷里に還る。
司隸、茂才に挙ぐ、長陵の令に除せらる、官に至らず。
弘農の山中に隠居す、学者之に随ひ、居る所に市を成す、後に華陰山の南に遂に公超市有り。
五府連に辟(へ、)され、賢良方正に挙げらる、就かず、

とありhttp://www.kokin.rr-livelife.net/classic/classic_oriental/classic_oriental_244.html#note_g_56、更に、

漢安元年(142)、順帝特に詔を下して河南尹に告げて曰く、
故(もと)の長陵の令、張楷は行に原憲(げんけん)を慕ひ、操は夷、斉に擬(なぞら)ふ、貴を軽しとし賤を楽しみ、跡を幽藪(ゆうそう)に竄(かく)し、高志確然にして、独り群俗を抜く。 前に比(しきり)に徴命するも、盤桓(ばんかん)として未だ至らず、将に主たる者の常に於いて翫習(がんしゅう)し、賢を優す、其れをして進めて難からしむるに足らざらんか。 郡時に禮を以て発せしめ遣はせよ、と。 楷、復た疾を告げて到らず、

と、順帝が張楷を原憲の風ある人物とみなして、河南尹に命じて召し出させたにもかかわらず、病と称して行かなかった。

時に関西の人裴優、亦た能く三里霧を為す、自ずから楷に如かざるを以て、之に従学せんとす、楷、避けて肯(あへ)て見せず。 桓帝即位す、優、遂に霧を作なして賊を行ふ、事覚あらはれて考せられ、楷を引きて言ふ、術を従学すと。

張楷は、

五里霧を作す、

が、

三里霧を為す、

裴優は、それを使って盗賊行為を行った。 発覚すると、裴優は「張楷に道術を教わった」と供述し、ために張楷は、連座し、

楷、坐して廷尉の詔獄(しょうごく)に繋がる、二年を積む、恒(つね)に経籍を諷誦(ふうしょう)し、尚書の注を作す。 後に事の験無きを以て、原(ゆるさ)れ家に還る。
建和三年(149)、詔が下され安車を備へ禮して之を聘へいす、辞するに篤疾(とくしつ)を以て行かず。
年七十、家に於いて終はる、

とある(仝上)。恬淡とした人物だったらしいが、人に見せびらかすことのない人なのに、

五里霧を作す、

とは、誰が見たのだろう、とふと疑問に思う。張楷のもとに行って学ぼうとした裴優を避けて会おうとしなかったために、裴優の罪に連座した。

「五里夢中」は誤字とあるが、そう書く人がいるのだろうか。「夢中」では、迷う意ではなく、熱中の意に転じるような気がする。

因みに、「里」は、

現在の中国では500m、日本では約3.9km、

だが、里は、

元々は古代中国の周代における面積の単位であり、300歩四方の面積を表していた。のちにこの1辺の長さが距離の単位となった。周・漢の1歩は1.3m余りであったと推定され、したがって1里の長さは400mほどであった、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8Cので、「五里」は、

二キロ程、

になる。

参考文献;
尚学図書編『故事ことわざの辞典』(小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:五里霧中
posted by Toshi at 03:36| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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