「竹輪」は、
魚肉のすり身を竹などの棒に巻きつけて整形後に加熱した加工食品であり、魚肉練り製品の一つである。中心の棒を抜くと筒状になり、竹の切り口に似ているためこの名が付いた、
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%B9%E8%BC%AA)が、「竹輪」は、
竹輪蒲鉾の略、
である(大言海、たべもの語源辞典)。「蒲鉾」は、
蒲の穂、
の意である。つまり、
蒲鉾子の義、
である。
稲穂子(いなほこ)と云ふ語もあり、コとは、大葉子(車前草)、いちびこ(蓬蔂 苺の別称)、いささこ(魦 いさざの古名)など、意味なく物につく語なり、
とある(大言海)が、単なる愛称というよりは、菓子や桃子、栗子のように、蒲の子の意味であったと見られなくもない。
「蒲」は、
カマ、
と呼び、
ガマの古名、
とある(岩波古語辞典)。名語記に、
蒲、加末(かま)、草名、似藺可以為蓆也、
とある。そのためか、大言海には、
組(くみ)の轉にて…組みて蓆とすべきものの意と思はる、菰も、組の轉にて、同語根ならむ。かまばこ(蒲鉾)、かばやき(蒲焼)は、相通ず、
とある。
「かま」が「がま」と濁ったのは、
菰(こも)をまこも(真菰)と云ふが如く、蒲も、マガマなどと云ひしを、上略せし語か、或いは蟹をガニ、蛙(かへる)をガヘルと訛る類か、清音の蝦蟇(かま)をガマと云ふ、同趣、
とする(大言海)。その理由はともかく、
「新撰字鏡」「十巻本和名抄」「観智院本名義抄」「文明本節用集」などでは「カマ」と清音であり、「かます(叺)」「かまぼこ(蒲鉾)」のように、複合語の場合、現在でも清音をとどめている。しかし、「運歩色葉集」「日葡辞書」などで濁音表記されておりの、中世末から近世にかけて、「ガマ」と濁音化したと考えられる、
とある(日本語源大辞典)
(蒲(がま)の穂 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%9Eより)
蒲の穂の「蒲鉾」が、
魚肉のすり身を竹などの棒に巻きつけて整形後に加熱した加工食品、
になったのは、
蒲の実の鉾に似たるように、魚のすり身を木につけて、蒲の鉾を模せる歟(名語記)、
とあるように、「蒲鉾」の名は、
親指の太さくらいの丸竹のまわりに、魚肉のすり身を厚保さ四分(1.2センチ)ばかりに丸くつけ、竹とともに湯煮して、揚げ、竹を抜いて用いた、
からである(たべもの語源辞典)。大言海には、
鯛、鱧、鮫などの肉を、敲き擂りて、鹽、酒などを加へて泥(デイ)とし、竹串を心とし、円く長く塗りつけて、炙りたるもの。形、色、蒲槌(かまぼこ)の如くなれば、名としたり、
とある。蒲槌(ほつい)とは蒲の穂のことである。これを意識して、形作ったか、結果として蒲の穂に似たかは、はっきりしないが、
蒲鉾、
つまり、蒲の穂に似ているから、「蒲鉾」となった。
室町時代に、すり身を竹に塗りつけて焼き、儀式に用いたのが始まり、
とある(日本語源大辞典)。その後江戸時代、竹輪蒲鉾とは別に、
板付蒲鉾、
がつくられるようになる。
板付蒲鉾が蒲鉾になると、竹輪蒲鉾は、竹輪という別な食品になってしまった、
とある(たべもの語源辞典)。もとは、いずれも、
蒲鉾、
であが、中央にさした竹を抜いて、きったきりくちが竹の輪に似ているので、
竹輪、
と別にされた。明治時代以前は、
白身魚自体が高価な食材であったため、蒲鉾や竹輪は高級品、
という扱いであった(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%B9%E8%BC%AA)、とある。
ちなみに、「はんぺん」は、
竹輪蒲鉾を縦二つに切って平らにしたもの、
で、それを、
半片(ハンペン)、
と呼んだものである(たべもの語源辞典)。
「蒲焼」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/473042467.html)は、江戸初期まで、「うなぎの丸焼きのぶつ切りを串にさしたもの」で、塩焼きや味噌焼きにして食べるもので、その「姿形」が「蒲(がま)の穂」に似ており、その蒲(がま)が蒲(かば)に代わり「蒲焼き」とよばれた。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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