みたらし団子
「みたらし団子」は、
御手洗団子、
と当てたりする。「みたらし団子」は、
竹串に米粉で製した数個の団子を刺し、砂糖醤油の葛餡をかけた串団子(焼き団子)、
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BF%E3%81%9F%E3%82%89%E3%81%97%E5%9B%A3%E5%AD%90)。この由来を、
御手洗詣での時、京都下賀茂神社糺(ただす)の森で売ったのが最初、
とする(広辞苑)。たべもの語源辞典は、
昔は、毎年六月一九日または二十日から晦日まで、京都市左京区の賀茂御祖(みおや)神社(下鴨神社)に参詣して境内の御手洗川に脚をひたし、無病息災を祈った。これを御手洗参りとか御手洗会(え)といったが、納涼をかねた遊びであったから、糺(ただす)の涼みとも称した。境内には茶店が並んで酒食を供したが、ここで御手洗団子を売っていた、
とする。「御手洗川」は、神社近くにながれている川で、参拝者はここで手を清め、口をすずいだ(仝上)。大言海には、
團子、毎年六月晦日、社司(賀茂)於御手洗河修祓、其前日自十九日、京師男女参詣、掬社外之井水而祓暑穢、又林閒設茶店賣飲食、其中小粉團、毎五箇以青竹串貫之、……是云御手洗團子、
を引く(雍州府志)。たべもの語源辞典も、
竹串に小粒の団子を五つさして、醤油で付け焼きしたもの、
と、五個とする。
「団子」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/475567670.html?1591900451)については触れた。「御手洗」は、
みたらし、
と訓ませるが、
神社の社頭にあって、参詣者が手や口を浄めるところ、
の意である。上記の、
御手洗川、
御手洗祭り、
御手洗詣、
の略の意もあるが、それも、「御手洗」の、
手や口を浄める、
からきている。「御手洗」は、
みたらい、
とも訓ませる。大言海は、
タラシは手洗水(てあらひし)の約、ミは神前なるに就き、尊称を加えたるならむ、
とする。「し(水)」は、
水(スイ)の音の約、水良玉(シラタマ)、水長鳥(シナガドリ)、シがらみ、シずく、シたたる、シむの類例、
とする(大言海)
ミタラシ(水垂)の義か。また御垂の義か(類聚名物考)、
も類似の説。たべもの語源辞典も、
シは水(スイ)の音の約である。「しずく」とか「したたる」のシと同じで、水の意である、(中略)ミは尊称である。タラシはテアラヒシ(手洗水)の約である。御手洗水(ミテアラヒスイ)と御をつけたとき、スイがシになり、テアがタとなって、ミタラシとヒを略していい、また、ミタラヒとスイを略したようによぶのは、ヒシが一つになって、ヒとかシといわれたものである、
とし、御手洗を、参拝者が口や手を浄める場所として、
ミタライ(ヒ)を御手洗と解して、ミタラシは御手洗ハシと説いたものがある。ハシ(端)とするならば、場所を意味することになる、ミタラシのシをハシとする説には、反対である、
と異議を唱えている。「しずく」の「し」であり、「御手洗(みたらし)」の「し」は、水でいいのではあるまいか。
江戸後期の『嬉遊笑覧』には、
鉄砲の玉、
数珠の粒、
そろばんの玉、
と称しているし、寛文(1661~73)の『狂歌咄』には、
細い竹に刺して土塗り爐に立ち並べて五十本串立てた、
とある(たべもの語源辞典)。下鴨神社の神饌菓子の御手洗団子は、
上新粉(白米の粉)でつくった直径二センチほどの白団子を十本の細い竹に刺してある。竹は扇の骨のように十本に割いてあり、その一本に団子が五つずつさしてあるから五十個ある。この五つは、いちばん先がやや大きくて、二番目との間が少しあいている。この団子は厄除けが目的である。一つ目は頭で、下の四つが手足・体である。人形をかたどった団子を神前に供えてお祈りをし、それを家に持ち帰り、醤油をつけ、火に炙って食べると厄除けになる。これが昔の団子で、堅くなったものを食べたのである。今は、始めから醤油を付けて火にあぶったものを売っている、
とある(仝上)。ただ、異説があり、
境内(糺の森)にある御手洗池(みたらしのいけ)の水泡を模して、この団子がつくられた、
とされ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BF%E3%81%9F%E3%82%89%E3%81%97%E5%9B%A3%E5%AD%90)、
鎌倉時代から建武政権期、後醍醐天皇が行幸の際、御手洗池(みたらしいけ)で水を掬おうとしたところ、1つ大きな泡が出、続いて4つの泡が出てきた逸話による説がある。この泡を模して、串の先に1つ・やや間をあけた4つの団子を差して、その水泡が湧いた様を表している(仝上)、
下鴨神社の糾の森に井上の社というお宮があるが、その前に清水が湧き出ている。この手洗いの池の水が、まず一つ湧き出て、つぎに四つ続けて出る。そのさまをとって、団子を、一つと四つに分けてつけたという。団子は、熊笹に包んで、扇形にしてあった。古くは、北野社頭の茶店でも売っていた(たべもの語源辞典)、
とあり、五個の団子の、一つ目とそれ以下の区別も、別の根拠となる。しかし、水泡由来よりは、厄除けの意味の方が、五平餅(http://ppnetwork.seesaa.net/article/474063861.html)がそうであったように、神饌団子の由来としては、いいように感じる。
もっとも、
関東では団子が4個の方が多い。これは四文銭ができたことによるとする説が有力である(団子1個が1文。四文銭で団子1串)、
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BF%E3%81%9F%E3%82%89%E3%81%97%E5%9B%A3%E5%AD%90)。
飛騨高山にも、
御手洗団子、
というものがあるが、これは、
下鴨神社糺の森で売られていた御手洗団子が、高山に伝わった、
ものとされる。ただ、
みだらし、
と濁る(たべもの語源辞典)。なお、精進料理の台引(お土産用の膳)で、御手洗団子、というのは、クワイや山の芋を小さい団子にして一串に五つ刺したものをいうが、これは御手洗団子をまねたものである(仝上)。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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