2020年06月24日
雲居
「雲居(くもゐ)」は、
雲井、
とも当てる。
「居」は居座る意、
なので、
「井」は当て字、
とある(広辞苑)。
「雲居」は、
雲が居るほど高いところ、
すなわち、
大空、
の意であり、「雲の居る」ところは、すなわち、
雲、
の意ともなり、たとえば、
雲居隠り、
雲居路、
の「雲居」は、ほぼ「雲」の意であるが、さらに、それが比喩的に、
遠くまたは高くてはるかに離れているところ、
の意となり、
雲の上、
の意で、
宮中、皇居、
を意味する。万葉集の、
神の御面(みおも)と継ぎ来る那珂の港ゆ船浮けて我が漕ぎ来れば時つ風雲居に吹くに沖見ればとゐ波立ち辺(へ)見れば……、
は、「空」の意である。同じ、
雲居なる海山越えてい行きなば我れは恋ひむな後は逢ひぬとも
は、「はるかに離れた」という意になり、古事記の、
はしけやし我家(わぎへ)への方よ雲居立ち来も、
は、「雲」の意であり、「南殿の花を見てよみ侍りける」とある、
春ごとの花に心はそめ置きつ雲居の櫻我を忘るな(玉葉)、
は、「宮中」を指す。
大言海は、「雲居」を、
雲の集(ゐ)るところの義(仙覚抄)、即ち、中空(なかぞら)の意、万葉集、「三船の山に、居雲(ゐるくも)の」或は、雲揺(くもゆり)の約(地震を、なゐと云ふも、根揺(ねゆり)の約)、雲の漂うところの意、
と説く。「ゐ」は、
居、
坐、
と当て、
立ちの対、すわる意、類義語ヲル(居)は、居る動作を持続し続ける意で、自己の動作ならば卑下謙遜、他人の動作ならば蔑視の意が籠っている、
とある(岩波古語辞典)が、
琴頭(ことがみ)に來ゐる影姫珠ならばわが欲る珠のあはび白珠、
とある「ゐる」は、
(雲・霞・人・舟などが)動かずに同じ場所にじっとしている、
という意(岩波古語辞典)で、ニュートラルに思える。
集(ゐ)る(仙覚抄)、
雲揺(くもゆり)の約(大言海)、
とするまでもなく(日本語源大辞典)、
雲の居(ゐ)る場所、
でよさそうである。
なお「雲」については、「くもる」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/459727462.html)で触れた。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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