「餡掛け」は、「餡」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/475943050.html?1593196838)で触れた「餡」の意味の、
水またはだし汁に葛粉、片栗粉などのデンプン粉を加えて加熱しとろみをつけたもの。または、これに野菜や挽き肉などを加えたもの、
を掛けた料理の意である。江戸語大辞典には、
葛溜(くずだまり)をかけること、またその料理、
と載り、
初鮭のあんかけ、
を引く(天保四年・壽御夢相妙薬)。「葛溜」とは、
くずあん(葛餡)、
の意である。「葛餡」について、
葛を入れてとろみをつけた餡。調味した出汁に葛粉を用いてとろみを出したもの。南禅寺蒸しなどの蒸し物や、煮もの(炊きあわせ)、茹でた料理、うどん(あんかけうどん・ 京都のたぬきうどん・のっぺい、等)やそば(あんかけそば)などにも用いられる。葛餡をかけた料理は、見た目に透明感があって品がよく見え、口当たりが滑らかで、料理の温かさを保つ効果もある。餡を下に敷いている場合もあり、その場合は敷餡とも呼ばれる、
とあり(https://japan-word.com/kuzuan)、葛餡を用いた料理は、
冬瓜の葛あんかけ、
湯葉の葛あんかけ、
胡麻豆腐の葛あんかけ、
といった「~の葛あんかけ」と呼ばれる(仝上)、とある。
大言海に、「餡掛け」は載らないが、
餡掛饂飩、
餡掛豆腐、
が載る。「餡掛豆腐」について、
豆腐を好きほどに切りて煠(ゆ)で、葛餡をかけたるもの、古くはアンドウフとも云ひき。饂飩をおなじやうに製したるものを、アンカケウドンと云ふ、
と載る。江戸初期の『大草家料理書』に、
アンドウフと云ふは、二寸許に切りて、葛煮をして、皿に入れて、上に葛溜をかけて、
とある(大言海、精選版日本国語大辞典)、という。
「今出川豆腐」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/475718816.html?1592505906)でも触れたが、天明二年(1782)刊行の、豆腐を題材にした料理「豆腐百珍」に、「尋常品」の一つとして、
高津湯(こうづゆ)とうふ、
が載り、
絹ごしとうふを用い、湯烹して、熱葛あんかけ、芥子おく。又、南禅寺ともいふ、
とあり(https://ttms.exblog.jp/6672512/)、
大坂高津の廟の境内に、湯とうふ家三、四軒あり。其料に用ゆ豆腐家、門前に一軒あり。和国第一品の妙製なり。京師に南禅寺とうふあり。江戸浅草に華蔵院といふとうふあり、
と付言されている(仝上)。更に、「奇品」の一つとして、
縮緬とうふ、
が載り、
ところてんの突き出しに豆腐を入れて押し出し、茶碗蒸しの中に入れます。葛のあんかけとおろしわさびを添えます、
とある(http://www.toyama-smenet.or.jp/~tohfu/tofuhyakutin.html)。江戸時代、夜に、
茶飯と葛かけ豆腐を売っていた、
とある(たべもの語源辞典)。いまは、
かつおぶしのだしを煮たてて味醂と醤油を加え、味かげんしたものに水どきした葛を杓子でだし汁にかきまわしながらときこむ。豆腐は、沸騰した湯の中に入れてゆで、網杓子ですくい上げて、椀に入れ、あんをかけて、上におろしたワサビを添えて出す、
が(仝上)、昔は、
餡豆腐、
と呼び、
湯煮した豆腐の上に葛だまりをかけて、ケシ・粉胡椒、胡桃の実を上置きした、
とある(仝上)。
豆腐の真ん中をさじですくいとって、その中に生卵を落とし込み、蒸して半熟程度にして「葛餡」をかけた「玉蒸豆腐」、
は、石川県の郷土料理、とある(仝上)。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:餡掛豆腐
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