2020年06月29日
飯鮨
「飯鮨」は、
飯寿司、
飯酢、
とも当て(大言海・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%AF%E5%AF%BF%E5%8F%B8)、
いずし、
あるいは、
いいずし、
と訓ます(たべもの語源辞典)。
飯(いい)はご飯で、御飯の鮨を飯鮨、
という。今日では、
飯を主とした押鮨(広辞苑)、
乳酸発酵させて作るなれずしの一種(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%AF%E5%AF%BF%E5%8F%B8)、
米麹、魚、野菜を樽の中に入れて漬け込み、乳酸発酵させたなれずしの一種(http://takemoto-suisan.com/user_data/whats.php)、
等々を指すが、
古い時代、鮨は、自然に酢味をもたせた魚ばかりのものであった。その後、早ずしとか一夜ずしといって飯を使って鮨をつくるようになったが、これは発酵作用のために飯を利用したもので、食べるのはやはり魚ばかりであった、
とあり(たべもの語源辞典)、飯は、捨ててしまったのである。つまり、
動物の生肉を塩と合わせ、それを飯の間に漬け、数日たつと飯が発酵して酸味を生じたものを食べた。…飯は食べずに、肉だけを食用とした(日本食生活史)、
冬場、雪に閉ざされる北海道や東北地方の港町ならではの食べ物で、冬の保存食として年末やお正月には欠かせない郷土料理として食べられてきました。魚をどのように美味しく保存できるのか考えられ開発されたのが「飯寿し」です(http://takemoto-suisan.com/user_data/whats.php)、
等々とあるように、あくまで主役は、魚であった。
近江の鮒ずし、
北海道のニシンずし、
等々。『今昔物語集』にも、
「鮨売りの女が酔いつぶれて、売り物の鮨桶の中に嘔吐してしまったので、あわててかき混ぜてごまかした」
「三条中納言朝成は肥満に悩み、医師に減量法を尋ねたところ、『夏は水漬け飯、冬は湯漬け飯を召しあがればよい』と教えられた。そこで瓜の漬物や鮎の鮨をおかずに湯漬け飯を食べたが、食べる量があまりにも多いので結局痩せなかった」
等々の記述があり、飯部分を除去して食されていた(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%BF%E5%8F%B8)ことがわかる。のちには、飯(いい)も食べるすしができ、現在の飯鮨は、それである。
鮒ずしは、
日本古来の“鮓すし(なれずし)”の代表的一種、
古代から琵琶湖産のニゴロブナ(煮頃鮒)などを主要食材として作られ続けている滋賀県(近江国)の郷土料理である。今日では「ふなずし」「鮒鮓」「鮒鮨」「鮒寿司」「鮒寿し」などとも記し、「鮒寿司」が最も一般的となっている、
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AE%92%E5%AF%BF%E5%8F%B8)。
「鮒鮓」「鮒鮨」「鮒寿司」「鮒寿し」「鮒寿司」等々と表記しているが、「鮒のなれずし」という特徴を的確に表せるのは「鮒鮓」、
である(仝上)とあるのは、「鮨」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/456254952.html)で触れたように、
「鮨」の字は
魚の鰭,
うおびしお,魚のしおから,
を意味し,我が国だけで,
酢につけた魚,
酢・塩をまぜ飯に,魚肉や野菜などをまぜたもの,寿司,
の意で使う。「酢」は,
塩・糟などにつけ,発酵させて酸味をつけた魚。たま,飯を発行させて酸っぱくなった中に魚をつけた込んだ保存食,
の意で,「華南・東南アジアに広く行われた」(『漢字源』)物を指す。これは,
なれずし(熟れ鮨・馴れ鮨),
と重なる。「酢」を「鮨」と同様の意味で使うのは,我が国だけである、という背景からと思われる。
表記については,『十巻本和名抄-四』に「鮨(略)和名須之 酢属也」とあり,「鮨」と「鮓」は同義に用いられていた可能性がある。ただし,飯の中に魚介類を入れて漬けるのが酢で,魚介類の中に飯を詰めて漬けるのが鮨であるとも言われている、
とあり(日本語源大辞典)、また、
スシのスは酸であり,シは助辞である。すなわち「すし」とは「酸(ス)シ」の意である。古く延喜式の諸国の貢物のなかに多く「すし」が出てくる。これは「馴れずし」で魚介類を塩蔵して自然発酵させたものである。発酵を早めるために,飯を加えて漬けるようになったのは,慶長(1596‐1615)ころからと伝えられる。飯に酢を加えて漬けるようになったのは江戸時代になってからで,江戸末期に酢飯のほうが主材となって飯鮨とよばれるようになり,散らしや握り鮨が生まれる、
とあり(たべもの語源辞典)、
最も古い表記は「鮓」で、元々は塩や糟などに漬けた魚や、発酵させた飯に魚を漬け込んだ保存食を意味した漢字であるため、発酵させて作るすしを指し、馴れずしが当てはまる。「鮓」の漢字は、鯖鮓や鮎鮓、鮒鮓などで使われる、
ともある(https://chigai-allguide.com/%E5%AF%BF%E5%8F%B8%E3%81%A8%E9%AE%A8%E3%81%A8%E9%AE%93/)。
平安時代中期に制定された延喜式には、西日本各地の調としてさまざまななれずしが記載されているが、
アユやフナ、アワビなどが多いが、イノシシ、シカといった獣肉のもの、
も記述されている(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AA%E3%82%8C%E3%81%9A%E3%81%97)、とある。
大言海の「すし」の項を見ると、
古へ、飯と鹽とにて魚を蔵し、酸味を生ぜしめたるもの、即ち源五郎鮒の酢の如し。又、魚介の肉に鹽を加へおき、数日を歴て、自然に酸味を生じたるもの、即ちみさご酢の如し、
とあり、「鮨」の古形、「酢」を示している。「みさご酢」というのは、みさご(鶚)という鳥は、
其捕りたる魚を、海上の巌の間、又は、深山の巌陰に貯へ、宿を経しめて食とす、みさご酢と云ひ、鹽、醤を加へずして食ふべく、味、人の作れる酢の如し、
という(大言海)伝説があり、
ミサゴが貯蔵した魚が自然醗酵し、酢漬けのような状態になって旨味が増したものを人間が見つけて食したのが寿司の起源である、
ともされ、そのため、
みさご鮨の屋号、
を持つ寿司屋は全国に少なからず点在する(https://washimo-web.jp/Report/Mag-Misagozushi.htm)のだとか。
「なれずし」は、
北陸以北の日本海側と北海道の寒い地域に集中した分布圏がみられる、
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%AF%E5%AF%BF%E5%8F%B8)ように、
冬の保存食、
の性格がよく出ているが、「飯鮓」の語源は、
飯鮓(いいずし)の転訛、
魚鮓(いおずし)の転訛、
の二つの説がある(仝上)ようだ。ただ、
日本のなれずしは、弥生時代に稲作が渡来したのと同時期にもたらされたものとする見解があるが、これは飯に漬けて発酵させるという製法から米に結び付けて説明されており、明証があるわけではない、
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AA%E3%82%8C%E3%81%9A%E3%81%97)ように、米とつなげるのは後で、
魚鮓(いおずし)、
の転訛で、後に、
飯酢、
と当て、
飯に酢を加えて漬けるようになったのは江戸時代になってからで,江戸末期に酢飯のほうが主材、
となるようになって(たべもの語源辞典)、
飯鮨、
と当てたのではないか、と思われる。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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