「鹿の子(かのこ)餅」は、
和菓子の一種、
略して、
鹿の子、
とも呼ばれる(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B9%BF%E3%81%AE%E5%AD%90%E9%A4%85)。関西では、
小倉野(おぐらの)、
ともいう(デジタル大辞泉)。
現在の「鹿の子餅」は、
餅・求肥・羊羹のうちいずれかを賽形に切ったものを中心にして、小豆餡で丸く包み、そのまわりに柔らかく煮た金時小豆を粒のまま鹿の子のように付ける、
とあり、隠元豆を用いるものは、
いんげん鹿の子、
といい、(仝上)、
京鹿の子、
ともよぶ(デジタル大辞泉)。栗を茹でて甘く煮つけたものは、
栗鹿の子、
という(たべもの語源辞典)。
「鹿の子餅」は、
宝暦(1751~64)のころ、歌舞伎俳優の道化方の名人として知られる嵐音八という役者が人形町東側中程に恵比寿屋という菓子屋を開店して売り始め、江戸名物になった、
とある(仝上)が、
嵐音八という役者の実家、
ともあり(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B9%BF%E3%81%AE%E5%AD%90%E9%A4%85)、
役者手製の餅菓子として評判を呼び全国に広まった、
という(仝上)。天保期(1831~45)の『寛天見聞記』に、
寛政の末まで、此所(人形町)に、……鹿子餅を売りける、後、此店を、囃子頭の太田市左衛門と云へる者譲受けたりと云ふ、
とある(大言海)。その後、芯に餅の代わりに求肥や羊羹を用いることも行われるようになった。鹿の子という名の由来は、
整った粒が隙間なく並ぶさまが鹿の背の斑点を思わせることからつけられた、
とある(仝上)。文政年間(1818~30)の川柳に、
鹿の子餅釈迦の天窓(あたま)の後向き、
とある(仝上)。明和七年(1770)『辰巳之園』には、
鹿の子餅は、又太郎が見世、
とある(江戸語大辞典)。
なお、富山県高岡に名物「鹿の子餅」があるが、
白色の羽二重餅で、大きさは五センチ角で高さ三センチくらい、下部にあたるモチの中にウズラ豆の蜜漬が散らしこまれて、鹿の子の背の斑紋を模している、
とある(たべもの語源辞典)。
(富山不破福寿堂「鹿の子餅」 http://www.kanokomochi.com/okashi.htmlより)
「鹿(か)の子」というのは、
鹿(しか)の子、
を指し、薄茶色の毛色に
鹿の子模様、
という白い斑点が出る。
シカの子は生後2年くらいの間,赤みがかったくり色の体に白い斑点が多くできる。これは保護色の作用をするものである、
とある(ブリタニカ国際大百科事典)が、
この模様は、子鹿だけでなく、大人の鹿にも毎年出て、
人間の指紋のように1頭1頭違い、模様は一生変わらない、
という(http://naradeer.com/blog/2015/06/28/%E3%80%8C%E9%B9%BF%E3%81%AE%E5%AD%90%E3%80%8D%E6%A8%A1%E6%A7%98%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/)。この鹿の背のように斑点が散在する様を指して、伝統的に、
鹿の子斑(かのこまだら)、
と呼び、この含意から、「鹿の子」には、鹿の子斑の略以外にも、伝統的な絞り染めの柄の一種である、
鹿の子絞り(かのこしぼり)の略、
にも使う。総じて、鹿の子餅のように、
霜降り状のもの、
をそう呼ぶ。ために、「鹿の子」のつく言葉は多い。和装、和手芸関連では、
「鹿の子地」「鹿の子帯」「鹿の子編み」「鹿の子刺し」「鹿の子繍(ぬい)」「鹿の子織り」
生物名にも、
「鹿の子百合」「鹿の子草」「鹿の子蛾」「鹿の子貝」「鹿の子魚」
その他、
「鹿の子打ち」「鹿の子摺り」鹿の子切り」等々(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B9%BF%E3%81%AE%E5%AD%90)。
「鹿の子絞」は、
布を白い粒状に隆起させて染め出したもの、
で、
鹿の子染、
鹿の子目結い、
鹿の子結、
ともいい、京都が主産地なので、
京鹿の子、
ともいう。
布地を指先または鉤針(かぎばり)を用いてつまみ,その先を糸でくくって絞る。これを染めると小さいやや不整形の絞染の中で最も古くから行われたもので,正倉院の纐纈(こうけち)の中にもこれに類するものが見られる。この絞りが,斜めに45度の線につめて絞られると,上りが角ばった形となっていわゆる一目絞の詰(つめ)となり,これがさらに方形の疋田絞(ひつたしぼり)へと進展する、
という(マイペディア・世界大百科事典)。これは、
表面に凹凸(細かい隆起)があって肌に触れる面積が少なくなり、風通しが良く、肌触りが軽いのが特徴、
である(https://www.modalina.jp/modapedia/w/e9b9bfe381aee5ad90/)。
因みに、「鹿の子」は、
カノケ(鹿毛)の略(言元梯・大言海)、
とされる。生涯班点が変わらないとするなら、妥当に思える。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:鹿の子餅