「伽羅蕗(きゃらぶき)」
蕗の茎を醤油で伽羅色になるまで煮しめた料理、
である(広辞苑)。たべもの語源辞典には、
フキの皮をむいて生醤油に粉唐辛子を少々加えて佃煮のように辛く煮たもの、
とある。
伽羅牛蒡、
もあった、とある。
「伽羅」は、
濃い茶色、
である。
(伽羅蕗(きゃらぶき) https://cookpad.com/recipe/1838390より)
「伽羅」は、梵語(古代インドの言葉)、
kālāguruの音写「伽羅阿伽嚧」の略。また、tagaraの音写「多伽羅」の略とも、
とあり(デジタル大辞泉)、
伽藍,
伽楠、
などとも書写され(百科事典マイペディア)、
香木の一種。沈香,白檀などとともに珍重された、
とあり(ブリタニカ国際大百科事典)、「沈香」(じんこう)は、
サンスクリット語(梵語)で aguru(アグル)またはagaru(アガル)と言う、
とあり(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%88%E9%A6%99)、香りの種類、産地などを手がかりとして、いくつかの種類に分類され、その中で特に質の良いものは伽羅(きゃら)と呼ばれるとあるが、
他の木所の呼称が産地や重要な交易の拠点の名称を彷彿させるのに比べて、伽羅だけは、別格とも言える扱いを受けています。それは、古来、伽羅が最上級の「沈(ぢむ=沈水香木)」とみなされ、殊更に尊重されて来たことを示していると考えられます、
とし(http://www.kogado.co.jp/archives/3352)、
「伽羅は、沈香とは明らかに異なる性質を具える香木である」。従って、「最上級の沈香を伽羅と称する訳では無い」ということです。言い換えますと、「どんなに上質でも沈香は沈香であり、どんなに低品質でも、伽羅は伽羅である」(仝上)のだが、伽羅の元になる植物(沈香樹)は沈香と同じくジンチョウゲ科アキラリア属であり、
広い意味では、伽羅は沈香の仲間であると表現できる、
が、同じベトナム産の沈香樹でありながら沈香に変質するものもあれば伽羅に変質するものもある理由も、解明されていないらしい(仝上)。同じように、
熱帯産のジンチョウゲ科の樹木が土中に埋もれ,樹脂が浸出し,香木となる(百科事典マイペディア)、
にしても、あるいは、
沈香の生木あるいは古木を土中に埋め、腐敗させて生産する(知恵蔵mini)、
にしても、あるいは、
風雨や病気・害虫などによって自分の木部を侵されたとき、その防御策としてダメージ部の内部に樹脂を分泌、蓄積したものを乾燥させ、木部を削り取ったもの(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%88%E9%A6%99)、
にしても、微妙な環境差が左右するものらしい。ちなみに、「沈香」は、
原木は、比重が0.4と非常に軽いが、樹脂が沈着することで比重が増し、水に沈むようになる、
ので、
沈水香木、
といい(http://www.kogado.co.jp/archives/3352)、「沈香」という言葉の由来となっている(仝上)。
この沈香を伽羅とを識別する根拠は、
沈香と伽羅と樹脂分の性質の違い、
にあり、それを見極めるには、体験を重ねる過程で様々な生きたデータを収集・整理した結果として得られる特殊なもので、言語で表現することも不可能に近いと思われます、
とし、
1.外見を観察する
2.触れてみる
3.鋭利な刃物で削ってみる
4.鋸で挽いてみる
5.確認のために聞香してみる
という作業を、できるだけ多くの香木の塊に接して実行するのが理想(http://www.kogado.co.jp/archives/3352)、としている。そして、油分が多く色の濃いものを、
kālāguru(カーラーグル)、つまり「黒沈香」
と呼び、これが「伽羅」の語源とされる。伽南香(かなんこう)、奇南香(きなんこう)の別名でも呼ばれる(仝上)。
ま、「伽羅」を見分ける技術は、専門家にゆだねるとして、「伽羅」は、『日本書紀』に、
推古天皇3年(595年)4月に淡路島に香木が漂着した、
とあるのが沈香に関する最古の記録であり、漂着木片を火の中にくべたところ、よい香りがしたので、その木を朝廷に献上したところ重宝されたとある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%88%E9%A6%99)。正倉院には長さ156cm、最大径43cm、重さ11.6kgという巨大な香木・黄熟香(おうじゅくこう)(蘭奢待とも)が納められている。鎌倉時代以前に日本に入ってきたと見られており、足利義政・織田信長・明治天皇の3人は付箋によって切り取り跡が明示されている(仝上)、とある。
「伽羅」の語源は、
サンスクリットのカーラーグルkālāguruまたはカーラーガルkālāgaruの語頭を音写した語。また,同じく香の一種であるタガラtagara(香炉木と訳される)を音写した多伽羅の語頭を省略したものである。黒沈香(香木)の意である、
とある(世界大百科事典)し、大言海も、
伽羅惡掲魯(キャラアグル)kālāguruの略、黒沈香木の義、
としているので、黒の意で尽きているようだが、微妙に解釈を異にし、
伽羅はサンスクリット語で黒の意。一説には香気のすぐれたものは黒色であるということからこの名がつけられた、
とか(ブリタニカ国際大百科事典)、もあり、その他、
伽羅の字音カラのカを延ばしてキャとする(類聚名物考)、
キエラ(気吉)の義(言元梯)、
もある。
「伽羅」は、沈香の高級品という意味か広がったのか、
立すがた世界の伽羅蕗よけふの春(隠蓑)、
というように、
極上、
という意味でも使う。江戸時代は、吉原隠語で、
金銭、
の意でも使ったらしい。
もと金銭を伽羅代と呼びしによる、
とある(江戸語大辞典)。広辞苑には、
今の俗、世事をいふといふ事を伽羅をいふ(用捨箱)、
の用例で、
おせじ、
の意を載せている。
因みに、いま「伽羅」は、1g、二万円から五万円している(https://yamadamatsu.shop-pro.jp/?pid=96943884)。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95