2020年07月14日

金柑頭


「金柑頭」は、

きんかあたま、

と訓ませる。江戸語大辞典には、

きんかんあたま(古今三通伝「本卦がへりの隠居どのも、……きんかんあたまをふりたてて」天明二年)、

で載る。「きんか」は、

きんかん、

の転訛である。ただ、「金柑」も、

きんかん、

ではなく、

きんか、

とも訓ませる(岩波古語辞典)。

「金柑頭」は、

はげあたま、

の意である。

毛髪がなくて金柑(きんかん)のように赤く光った頭、

の意である(広辞苑)が、

老人の赤くはげた頭、

と限定的な使い方とするものもある(江戸語大辞典)。

きんかつぶり、
やかんあたま、
蠅すべり、

等々とも言い、

其の禿げ残りたる神に用ゐる元結を、きんか元結と云ひき、

とある(大言海)。

織田信長が、明智光秀を打擲するとき、いかに、きんかんあたま、のまふかのむまひか、一口返事をせよ、と罵れることあり(室町殿日記)、
酒席で光秀が目立たぬように中座しかけたところ、「このキンカ頭」と満座の中で信長に怒鳴りつけられ、頭を打たれた(義残後覚)、

等々、光秀の渾名としても知られている。禿げていたのかもしれないが、信長は秀吉にも「はげねずみ」と(ねね当て手紙で)書いているので、「はげ」という呼称はよく言ったのかもしれないし、

「光秀」の「光」の下の部分と「秀」の上の部分を合わせると「禿」となることからの信長なりの洒落という説、

もあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%8E%E6%99%BA%E5%85%89%E7%A7%80ので、実際に「きんかあたま」だったかどうかははっきりしない。

閑話休題。

「きんかあたま」の語源として、

キンカはキンカハ(金革・金皮)の下略(近世事物考・守貞謾稿・大言海)、
「きんかり」光るさまから、

等々がある(精選版日本国語大辞典・日本語源大辞典)ともいわれ、弘化の頃(1845~48)の近世事物考には、

きんかは、金皮の略語にて、老人頭上、はげ光りかがやけるを、金色の如しと、譬へしなり、延宝四年(1676)類船集と云ふ本に、うるはしき黒髪に油ひきたる、憎からず、きんかあたまの剃りたて、夜光の玉かとも疑へり、などとあり、

とある、とか(大言海)。ただ、

この語の使用時期より古くキンカン単独での例が見られるところから、直接的には柑橘類の「金柑」の形状からの連想が考えられるが、光るさまをいう擬態語「ぎんがり」との音の類似、また、「金」と光るイメージの類似など、複合的背景のあることも考えられる、

とある(日本語源大辞典)。金柑に準えた、とみていい。「金柑」(きんか)のみにても、

頭髪がなくてはげた頭、またその人、

の意が載る(日葡辞書・岩波古語辞典)

きんかん.jpg


しかし、果物の「金柑」は、

きんかん、

と訓ませる。

ミカン科キンカン属の常緑低木、

であり(広辞苑)、

ひめたちばな(姫橘)、

ともいい、漢名は、

金橘(きんきつ)、

という。果実は民間薬として咳や、のどの痛みに効果があるとされ、金橘(きんきつ)と称することがあるのは、この故であるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%B3

「きんかん」の名の由来は、

黄金色のミカン(蜜柑)の意味から金橘、金柑の中国名が生まれて、日本ではそれを音読みしてキンカンとなった、

とある(仝上)。

中国から古く渡来したのはマルミキンカンで、江戸時代にナガミキンカンが入ってきた、

とある(たべもの語源辞典)。

皮に芳香があって、実は酸味を帯びるが、果皮は甘いので皮とともに生食する、

が(仝上)、果皮のついたまま甘く煮て、砂糖漬け、蜂蜜漬け、甘露煮にする。甘く煮てから、砂糖に漬け、ドライフルーツにすることもある、とか(仝上)。

熟した金柑の果実.jpg


参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:02| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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