2020年08月19日

たまげる


「たまげる」は、

魂消る、

と当てる(広辞苑)。今日、あまり使われないが、

おったまげた、

ぶったまげた、

という言い方に残っている。

魂が消える、

意から、

非常に驚く、
びっくりする、

意味で使われる。たとえば、

半ば読みさしおおきにたまげ(浄瑠璃・心中宵庚申)、

といったように使われる。同じく、

魂消る、

と当てて、

たまぎる、

と訓ませ、やはり、

びっくりする、
非常に驚く、
びくびくする、

意でも使う(広辞苑)。こちらの方が、用例は古く、

主上よなよなおびへたまぎらせ給ふ事あり(平家物語)、
いとほしやさらに心の幼(をさな)びて魂切れらるる恋もするかな(山家集)、

とあり、

魂切る、

とも当てている。そのためか、

たまげるは漢字で「魂消る」と書くように、魂が消えるほどの思いから、驚きを意味する言葉として江戸時代から使われている。「消る(げる)」は、「消える(きえる)」が縮まったもの。「たまげる」と同じ意味、同じ漢字が使われる「魂消る(たまぎる)」という言葉がある。本来「たまぎる」は「魂切る」と書き、怯える意味で鎌倉時代から使われ室町時代から「驚く」という意味に転じたため、「たまげる」と同じように扱われるようになった語で、元は別の語である、

という説もある(語源由来辞典)が、

魂消る
魂切る、

は当て字にすぎず、

たまぎる→たまげる、

と転訛しただけではあるまいか、用例を見る限り、平安末期も、「驚く」意味でも使われているのだから。大言海は、

たまきえを約めて活用す、

とし、日本語源大辞典は、

たまげるの「げる」は、「きえる」の変化したもの、

とあるので、

たまきえ→たまきえる→たまぎる→たまげる、

と転訛したと考えていいのではあるまいか。安斎随筆には、

強く驚くを云ふ田舎詞に、タマゲルと云ふ、キユを約めたるなり(キユの切音、ケなり)、古歌に、雪消をユキゲと云ひ、消えぬが上にと云ふを、ケヌが上にと詠める類なり、

とある(大言海)。あるいは、

たまきゆ→たまぎる、

たまきゆ→たまげる、

は別々に転訛したのかもしれない。

ところで、「たまげる」の「たま」(魂)は、「魂魄」http://ppnetwork.seesaa.net/article/456697359.htmlで触れたことだが、和語では、

たましい、

に同じとされ、「たま」は、

「タマ(玉)と同根。人間を見守り、助ける働きを持つ精霊の憑代となる、丸い石などの物体が原義」

とある(岩波古語辞典)。今日の「たましい」の意味は、たとえば、

人の生命のもとになる、もやもやとして、決まった形のないもの。人が死ぬと、肉体から離れて天に上ると考えられていた(広辞苑)

と、人のそれを指すが、「たま」は人を守る精霊を指す。「精霊」は、たとえば、

草木・動物・人・無生物などにここに宿っているとされる超自然的な存在、

ということになる(広辞苑)。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:たまげる 魂消る
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posted by Toshi at 04:00| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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