「クチナシ」は、
梔子、
巵子、
山梔子、
等々と当てる(広辞苑)。漢名は、
梔子(シシ)、
これを当てた。
「梔」(シ)は、
会意兼形声。「木+音符巵(シ 水をつぐ器)」。くちなしの実が、水をつぐ器に似ていることから」
とある(漢字源)。「巵(卮)」(シ)が当てられるのは、「巵」が、盃の意だからであろうか、あるいは、「シ」という同音のせいだろうか。たべもの語源辞典は、
巵は酒を入れる器である。果実の形が巵に似ていることから、巵子あるいは梔(シ)という、
とする。
「クチナシ」は、別名、
木丹(ボクタン)、
とも言う。本草綱目に、
梔子、一名木丹、
とある(字源)。
熟した果実を採取し、天日または陰干しで乾燥処理したものは、生薬として、
山梔子(サンシシ)、
と称され、漢方では、
消炎、利尿、止血、鎮静、鎮痙(痙攣を鎮める)の目的で処方に配剤されるが、単独で用いられることはない、
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%8A%E3%82%B7)。
「クチナシ」の語原は、
口無の義、實、熟すれども、開かず、
とする(大言海)説が、大勢である。
クチニガシの義(名語記)、
キナス(黄為)の義(言元梯)
「殊に可愛らしい花」という意味でコトニハシキ(殊に愛しき)花といったのが、ニハ[n(ih)a]の縮約でコトナシになり、コの母交(ou 母音交替)、トの母交(oi)の結果、クチナシ(梔子)になった(日本語の語源)、
この実に細かい種子がたくさんあり、果実の梨に似ている、しかもこの実には自然にさけない嘴状の咢があり、これをクチとよんだ。クチのあるナシなので、クチナシといわれた(たべもの語源辞典)、
実の突き出した部分が容器の注ぎ口に似ていることから「口成(くちな)し」の意(由来・語源辞典)、
クチナワナシ(クチナワ=ヘビ、ナシ=果実のなる木)、ヘビくらいしか食べない果実をつける木という意味からクチナシに変化した(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%8A%E3%82%B7)、
等々諸説あるが、和歌では、
山吹の花色衣主や誰問へど答へずくちなしにして(古今和歌集)、
というように、「口無し」にかけて言うことが多い(和名抄)こと、また、
クリ・シイ・ザクロ・ツバキなど、からがあってその内に種子を包むものは、熟するとかならず口を開くものであるが、このクチナシだけが、熟しても口を開かない。熟しても口がないのは実に珍しいのでクチナシと称した、
という(たべもの語源辞典)ことから、
口無し、
説が妥当なのだろう。
なお、
梔子色、
というのは、
梔子染、
支子染、
の色を指し、
布帛を、クチナシの実にて染たるもの、色、黄なり、
とある(大言海)が、
赤みを帯びた濃い黄色、
である(岩波古語辞典)。ただ、厳密には、
クチナシで染めた黄色に、ベニバナの赤をわずかに重ね染めした色を指し、クチナシのみで染めた色自体は黄支子(きくちなし)と呼んで区別された、
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A2%94%E5%AD%90%E8%89%B2)。
(梔子色・染め上がり デジタル大辞泉より)
別名は、
謂はぬ色、
である。「口無し」からきている。
なお、襲の色目にも、
くちなし、
があり、
表裏共に、黄なるもの。四季を通じて着用す、
とある(大言海)。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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