2020年09月13日

代表


内村鑑三『代表的日本人』を読む。

代表的日本人.jpg


「代表」というのは、それでもって全体を示すものになるようなものを指す、果たして、これが日本人を示していることになるのかどうかは、僕には確信がないが、ここには芸術家が入っていないのは、如何なものだろうか。入っているのは、

西郷隆盛、
上杉鷹山、
二宮尊徳、
中江藤樹、
日蓮上人、

の五人である。それが代表しているのは、

武士、
大名、
農民、
儒者、
僧侶、

である。言い方を変えれば、

統率者、
統治者、
農業家、
教育家、
宗教家、

であり、それが表現しているのは、

維新指導者、
仁政体現者、
農業改革者、
市井の聖賢、
宗教改革者、

ということだろうか。人選は、著者の価値観なので、この五人で、当時(明治末)の日本への反照、あるいは対照として示していたのかもしれない。それにしても、

運慶、
快慶、

はともかくとしても、

雪舟、
光悦、
光琳、
広重、
北斎、

等々、我国の芸術家が挙がっていないのはなぜなのだろう。

著者は、西郷隆盛を、

クロムウェル、

に擬し、上杉鷹山を、

君子、

に擬し、

二宮尊徳を、

ピューリタン、

に擬し、中江藤樹を

聖人、

に擬し、日蓮を、

マホメット、

に擬した。その是非はともかく、日本人を、世界に比肩させて紹介しようとする意図は見える。特に日蓮については、

みずから日本におけるキリスト教の日蓮たらんとした志、

を、訳者(鈴木範久氏)は汲み取っている。

本書を書くことにより、キリスト教を受容した日本人である内村自身の、アイデンティティの確立、

をはかろうとしている、と。

敢えて、ちょっと背伸びして、西欧人に擬しているところには、そんな含意があるのかもしれない。ただ、

鷹山、
尊徳、

に見る、

仁政期待、

の思いが透けて見えるところは、時代背景はあるが、少し気になる。

「『仁政』期待」http://ppnetwork.seesaa.net/article/474047471.htmlで触れたように、

仁政イデオロギー、
仁君への期待、

は、水戸黄門を見るまでもなく、大衆化され、いまだ隅々にまで我々の心の奥底にまで浸透している気がする。

徳川時代に植え付けられた「仁政」期待の心性は、そのまま、維新後、

日本国家の支配イデオロギーとして近代天皇制イデオロギー、

へと接続し、やはり「仁政」「仁君」を期待し、いまだに、日本人を縛り付けている気がする。お上意識、あるいは、お上に逆らうことへの心理的抵抗は、他方で、

仁政、

を期待する他力頼み、御上頼みの奴隷根性につながっている気がしてならない。その意味では、逆に日本人のもつ心性を、照射してくれている感じがなくもない。

参考文献;
内村鑑三『代表的日本人』(岩波文庫)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:08| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください