萩
「萩」は、
芽子、
生芽、
等々と当て、尾花・葛・撫子・女郎花・藤袴・桔梗とともに、秋の七草花の一つとされている。別に、
タマミグサ(玉見草)、
ツキミグサ(月見草)、
ニハミグサ(庭見草)、
ノモリグサ(野守草)、
ハナヅマ(花妻)、
シカツマグサ(鹿妻草)、
シカナキグサ(鹿鳴草)
フルエグサ(古枝草)、
ハツミグサ(初見草)
等々の異名を持つ(http://hanatomidorinoki.seesaa.net/article/128624763.html・大辞林・大言海)。「ハナヅマ」とは、
鹿の起き伏しして親しむものであるところから、萩を鹿の妻に見立てた語、
とされるように、「鹿」と関わらせる異名が多いことに気づく。平安時代中期の和名抄には、
鹿鳴草、萩、波木、
宝永七年(1709)の大和本草には、
天竺花(てんじくか)、ハギ、花史云、観音菊、天竺花是也、五月開至七月、花頭細小、其色純紫、枝葉如嫩柳、其幹之長與人等、
と載る。漢名は、
胡枝花(こしか)、
胡枝子、
という(和漢三才図会・精選版日本国語大辞典)。
普通には、
ヤマハギ、
センダイハギ、
を指す(広辞苑)、とある。漢字「萩」(漢音シュウ、呉音シュ)は、
会意兼形声。「艸+音符秋」で、秋の草のこと、
とあり(漢字源)、
よもぎ、くさよもぎの一種、川岸や荒れ地に自生する、かわらにんじん、
の意とされ(字源・漢字源)、
はぎ、
に当てるのはわが国だけ、とされる(仝上)。しかし、牧野富太郎によると、これは、
「艸+秋」という会意による国字であり、ヨモギ類の意味の「萩」とは同形ではあるが別字、
という説もある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%AE)。
しかし、1717年刊の書言字考節用集には、
萩、ハギ、万葉用芽子字、今案、萩、蒿(ヨモギ)之類也、本朝俗、以天竺花為萩、謬來舊矣、
とあり、平安時代に編纂の漢和辞典、天治字鏡には、
萩、波支、蕭(よもぎ)類也、
とある。「蕭(蒿)」とわかっていて、「ハギ」に「萩」を当てたのではないか。ただ、
ハギに「萩」の文字が使われるのは『播磨国風土記』が早い例とされていますが、唯一の伝本である平安末期の写本では「荻」(禾ではなく犭)となっているため再考の余地がある、
という指摘もある(http://www.pref.nara.jp/36960.htm)、とか。万葉集では、
秋萩に 恋尽くさじと 恩へども しゑやあたらし またも逢はめやも、
と詠われていますが、万葉仮名では、
秋芽子 戀不盡跡 雖念 思恵也安多良思 又将相八方、
と「萩」に「芽子」を当てて、「はぎ」と訓ませている(https://art-tags.net/manyo/ten/m2120.html)。
このため、「はぎ」の語源には、
生芽(ハエキ)の意、宿根から芽を生ずればなり、故に芽子の字を用ゐる(大言海・日本語源広辞典)、
とする説がある。これは、
刈りとった根からでも、毎年のように新たな芽が出るという性質をあらわした用字であると考えられています。ちなみに若い葉や茎は栄養価が高く、食べることができる、
らしい(http://www.pref.nara.jp/36960.htm)。
確かに、「芽」の語原は、「め」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/453951631.html?1599006843)で触れたように、
モエ(萌)の約(名語記・古事記伝・言元梯・松屋筆記・菊池俗語考・和訓栞・言葉の根しらべの=鈴木潔子・大言海・日本語源広辞典)、
萌の字音から(外来語辞典=荒川惣兵衛)、
と、萌え出てくる感じはある。しかし、それが「はぎ」だけか、となると疑問を感じるのだが、しかし、「はぎ」の「ぎ」は、接尾語「キ」(草)、
芽萌(きざ)すのキにて、宿根より芽を生ずる義ならむ。萩に芽子(ガシ)の字を用ゐる。ヲギ(荻)、ハギ(萩)、
ヨモギ(艾)、フフキ(蕗)、アマキ(甘草)、ちょろぎ(草石蠶)、
と思われ(大言海)、「はぎ」の「ぎ」は「き」の転と考えると、「生芽(ハエキ)」も捨てがたくなる。
「はぎ」の語源には、その他、
茎が這うようにのびることからハクエキ(延茎)の義(日本語原学=林甕臣、国語の語根とその分類=大島正健)、
養蚕の時に用いる雑木小枝を束ねたものをいう「ハギ」から、多枝細条であるから(遊相医話)、
芽が早く黄色くなるからハヤクキバム(早黄)・ハキ(葉黄)(和句解・日本釈名・滑稽雑誌所引和訓義解・言元梯)
ヤマハギの朝鮮語名no-hyongt(牝荊)から転じた(植物和名の語源=深津正)
等々がある(日本語源大辞典)。どうも理屈ばっているのが気に入らない。もっとシンプルだと思う。日本語の語源は、
アキノ(秋の)花は(hの添加で)ハギになった、
とする(和語私臆鈔)。
Aki→haki→hagi、
と。もし、「萩」の字が、
艸+秋、
の国字とするなら、なおのこと、この説に魅力がある。
因みに、襲の色目にも「萩」がある。六月から八月にかけて秋に着るものとされ、表が蘇芳、裏が青である。
なお、秋の七草のうち、「なでしこ」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/464868151.html)、「おみなえし」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/477396903.html?1600111405)、「葛」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/477451881.html?1600370947)、については、触れた。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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