2020年09月25日

尾花


「尾花」は、

ススキの花、

の意であり、そのため、「尾花」の語源には、

穂に出たる状、獣の尾に似たれば(大言海)、
馬などの尾に似ているところから(デジタル大辞泉)、
ヲバナ(招花)の義(古今要覧稿)、
ホバナ(穂花)の転(名語記・言元梯・日本語の語源)、

等々あるが、いずれも、その花の形状に由来しているが、「尾花」からみれば、

花穂を尾に見立てた、

ということだろう。別に、

袖波草、

とも言い、また転じて、

ススキそのもの、

の意としても使う。秋の七草(萩・尾花・葛・撫子・女郎花・藤袴・桔梗)のひとつとされる。万葉集に、

多可麻刀能 乎婆奈(おばな)布伎故酒 秋風尓 比毛等伎安氣奈 多太奈良受等母

たかまとの乎婆奈ふきこす秋風に紐(ひも)解きあけな直(ただ)ならずとも、

という歌がある。

「ススキ」は、

薄、
芒、

と当てるが、

群がって生える草の総称、

であったものが、

尾花、

に特定しても使う(広辞苑)。また屋根を葺くのに使う。

茅・萱(かや)、

の主要な一種ともなっている(仝上)。かつては、

「茅」(かや)と呼ばれ、農家で茅葺(かやぶき)屋根の材料に用いたり、家畜の餌として利用することが多かった。そのため集落の近くに定期的に刈り入れをするススキ草原があり、これを茅場(かやば)と呼んでいた、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%B9%E3%82%AD

平安中期の倭名抄(廿巻)には、

薄、波奈須須岐、

とあり、安政六年(1859)頃成立の雅俗随筆には、

今は尾花を、すすきと云へど、古くは、群がり繁る草を、すべて、すすきと称ひ、爾雅、露草に、草聚生曰薄と云ふに従ひ、薄の字をすすきと訓ませたり、和名抄、廿巻草名、見可し、

とある。

尾花.jpg


「薄」(漢音ハク、呉音バク)は、

会意兼形声。甫(ボ)は、平らな苗床に苗の生えたことを示す会意文字で、圃(ホ)の原字。薄(ハク)は、甫を含んだ文字で、水が平らに転がること。薄は「艸+音符溥」で、草木が間をあけずにせまって生えていること。間がせまれば厚さが少なくうすく平らである、

とあり、「薄い」意であり、「すすき」に当てるのはわが国だけのようである。「芒」(漢音ボウ、呉音モウ)も、

会意兼形声。「艸+音符亡(ボウ みえにくい)」

とあり、「草の派穀物の先端の細い毛」の意はあるが、「ススキ」の意はない。「穂先」の意があるので、それで当てたものかもしれない。

「すすき」の語源も、所説多い。

ススは、スクスクと生立つ意、キは、木と同じく草の體を云ふ、ハギ(萩)、ヲギ(荻)と同趣。接尾語「キ」(草)は、芽萌(きざ)すのキにて、宿根より芽を生ずる義ならむ。萩に芽子(ガシ)の字を用ゐる。ヲギ(荻)、ハギ(萩)、
ヨモギ(艾)、フフキ(蕗)、アマキ(甘草)、ちょろぎ(草石蠶)、等々(大言海・日本語源広辞典)、
「スス」は「ササ(笹)」に通じ、「細い」意味の「ささ(細小)」もしくは「ささ(笹)」の変形、キは葉が峰刃のようで人を傷つけるから(東雅・語源由来辞典)、
スス(細かい・細い)+キ(草)、細かい草の意(日本語源広辞典)、
スは細い意で、それが叢生するところからススと重ねたもの、キは草をいう(箋注和名抄)、
ススキ(進草)の義(言元梯)、
スス(進)+クの名詞化、花穂がぬきんでて動く(すすく)意、つまり風にそよぐ草の意(日本語源広辞典)、
煤生の訓(関秘録)、
スはススケル意、キはキザスの略か(和句解)、
スクスククキ(直々茎)の義(名語記・日本語原学=林甕臣)、
茎に紅く血の付いたような部分があるところから、血ツキの轉(滑稽雑誌所引和訓義解)、
秋のスズシイときに花穂をつけるところから、スズシイの略(日本釈名)、
サヤサヤキ(清々生)の義(名言通)、
中空の筒状のツツクキ(筒茎)といい、ツの子交[ts]、茎[k(uk)i]の縮約の結果、ススキ(薄)になった(日本語の語源)、

等々諸説あるが、理屈ばったもの、語呂合わせを棄てると、「すすき」の「すす」は、

「ササ(笹)」に通じ、「細い」意味の「ささ(細小)」もしくは「ささ(笹)」の変形、

で、「き」は、

草、

と当てる接尾語、

ヲギ(荻)、ハギ(萩)、ヨモギ(艾)、フフキ(蕗)、アマキ(甘草)、

等々の「き」「ぎ」に使われているものと同じ、と見るのが妥当かもしれない。

なお、
「なでしこ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/464868151.html
「おみなえし」http://ppnetwork.seesaa.net/article/477396903.html?1600111405
「萩」http://ppnetwork.seesaa.net/article/477503011.html?1600629932
「葛」http://ppnetwork.seesaa.net/article/477451881.html?1600370947
については触れた。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 04:29| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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