2020年09月29日

藤袴


「藤袴」は、秋の七草(萩・尾花・葛・撫子・女郎花・藤袴・桔梗)の一つである。中国名は、

蘭草(ランソウ)、
香草、
香水蘭、

と表記され、日本でも、古くは「蘭」とよばれ、『日本書紀』の允恭天皇記における「蘭」の字が初めて記された名であるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%B8%E3%83%90%E3%82%AB%E3%83%9E、とされる。蘭草は、『神農本草経』に、

「味辛平。主利水道殺虫毒…。一名水香」、

載り、生薬として知られているhttps://www.uchidawakanyaku.co.jp/tamatebako/shoyaku_s.html?page=085。『大戴礼記』(戴徳・前漢)に、

(五月五日)是日採蘭以水煮之為沐浴、令人辟除刀兵攘却悪鬼、

フジバカマを入浴剤にして沐浴すると、魔除けになるとありhttps://costume.iz2.or.jp/column/530.html、『宋書』にも、

釁浴、謂以香薫草薬沐浴也、韓詩曰、鄭国之俗、三月上巳、釁両水之上、招魂続魄、秉蘭草払不祥、此則其来甚久、非起郭虞之遺風。

と、やはり魔除けとして載る。また口臭予防にも用いられ、帝の前に出るときには蘭草を口に含んだ、とも言われている、とある(仝上)。香りが特徴らしい。

『源氏物語』には、

かかるついでにとや思ひ寄りけむ、蘭の花のいとおもしろきを持たまへりけるを、御簾のつまよりさし入れて、「 これも御覧ずべきゆゑはありけり」とて、とみにも許さで持たまへれば、うつたへに思ひ寄らで取りたまふ御袖を、引き動かしたり、同じ野の露にやつるる藤袴 あはれはかけよかことばかりも、

とあり、「蘭」と「藤袴」とのつながりがよくわかる。本草和名、和名抄には、

蘭草、布知波加萬、

とある。ただ、「蘭」は、

香草の総称であった、

が、中古以降はもっぱらフジバカマのこととされ、歌語として用いられた。「源氏‐藤袴」でも、地の文では「蘭」といっていても和歌中では「ふぢばかま」である(精選版日本国語大辞典)ともある。

また、「藤袴」は、

コメバナ、
ウサギノサトーグサ、
モチバナ、
スケホコリ、

等々の地域ごとの名を持つhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%B8%E3%83%90%E3%82%AB%E3%83%9E

フジバカマ.jpg


「藤袴」の語原は、

花の色、藤に似て、花辨の筩(つつ)をなすこと袴の如き意なり、

とする説(東雅・箋注和名抄・名言通・和訓栞・大言海・日本語源広辞典)、あるいは、

花の色が藤の花に似ている、

とする説(名語記・重訂本草綱目啓蒙)、

の他、

ブヂバナカフクミグサ(藤花香含草)の義

とする説(日本語原学=林甕臣)、

クンハカマ(薫袴)の義、

とする説(言元梯)等々があるが、「香り」や「藤色」だけではなく、「袴」についての説明がないと、語原を説いたことにはなるまい。

なお、「藤袴」は、その花の名から、

襲(かさね)の色目の一つ、

として「藤袴」の名がある。室町中期の『胡曹抄』(一條兼良)に、

衣色異説少々注之……八月 藤袴<表紫裏同>、

とあり、表裏とも紫色である(精選版日本国語大辞典)。

襲の色目・藤袴.gif


その他、「藤袴」には、「蘭」と書いて、香木の名にもある。分類は新伽羅。一木三銘香の一つとされる(仝上)。

また、寛平四年(892)に完成した、編年体である六国史の記事を中国の類書にならい分類再編集した歴史書『類聚国史』に、

天皇行幸下・大同二年(807)九月乙巳「幸神泉苑〈略〉四位已上、共挿菊花、于時皇太弟頌歌云、美耶比度乃、曾能可邇米豆留、布智波賀麻、岐美能於保母能、多乎利太流祁布、

とあり、「菊」の異名として使われている(仝上)、とか。

さらに、朝鮮茶碗の一つにも「藤袴」の名があり、筒状の胴外側の上辺に崩れた雷文帯を、下辺に二本の筋をめぐらし、その間に菊丸紋四顆を象嵌したもの、とある(仝上)。

なお、秋の七草、
「なでしこ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/464868151.html
「おみなえし」http://ppnetwork.seesaa.net/article/477396903.html?1600111405
「萩」http://ppnetwork.seesaa.net/article/477503011.html?1600629932
「尾花」http://ppnetwork.seesaa.net/article/477574893.html?1600975798
「桔梗」http://ppnetwork.seesaa.net/article/477609929.html?1601236693
「葛」http://ppnetwork.seesaa.net/article/477451881.html?1600370947
については触れた。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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