「祇園豆腐」とは、
田楽豆腐の一つ、
で、
薄く切って串に刺した豆腐を焼き、味噌だれで煮て、麩粉をかけたもの、
とある(広辞苑・たべもの語源辞典)。また、
焼きてくずあんをかけたるものあり、
ともある(近代世事談・大言海)。
京都の祇園神社(今の八坂神社)の南の楼門前、東西の二軒茶屋にて調理する田楽豆腐の名、
故に、この名がある、とある(大言海・広辞苑・たべもの語源辞典)。江戸時代、祇園神社の楼門の前に、
東には中村屋、西には藤屋という茶屋があった。神社社殿造営の際に、公費で改築された店で、「二軒茶屋」と称された、
とあり(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%87%E5%9C%92%E8%B1%86%E8%85%90)、これらの茶屋で売られた豆腐料理が評判となり、各地で祇園豆腐の看板を掲出する店が出て、
江戸では明和頃、湯島に有名な祇園豆腐屋があった、
とある(仝上)。二百年前の献立に、
祇園豆腐に道明寺糒(ほしい)を振りかけて江戸料理に使っていた、
ともある(たべもの語源辞典)。
こがしの粉かけたるもの、
ともある(大言海)。「こがし(焦がし)」は、
米、麦を炒り焦がして、碾きて粉とせるもの、
で、
香煎、
の別名ともされる(広辞苑・大言海)。あるいは、
花柚(はなゆ)などで風味を添えることもある、
ともある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%87%E5%9C%92%E8%B1%86%E8%85%90)。
現在は、「祇園豆腐」は、
木の芽田楽、
をいう(デジタル大辞泉)、とある。「木の芽田楽」は、
山椒の芽を味噌にすりまぜて豆腐に塗り、火に炙ったもの、
をいう(広辞苑)。「木の芽味噌」というのは、
漉味噌を鍋に入れ、煮出汁にてのばし、酒と砂糖とを加へて、火の上にて煉り、おろす鍋に、木の芽を細かく切りたるものを加へて、ざっと煉り、火よりおろして、玉子の黄身を加へて、よく交ぜ合わせたるを、魚肉・蔬菜などに塗(まぶ)したる、
を言い(大言海)、これを豆腐にぬりて焼いたものを、
木の芽田楽、
というので、「田楽豆腐」には違いないが、「木の芽」は、
山椒の若芽をすり込む、
ともあり(大辞林)、特に「山椒」は、
三月ころから新芽を吹くが、この新芽や若い葉を〈木の芽〉と呼び、煮物の香りづけや汁物の吸口に用いる。木の芽みそ、サンショウみそはみそにすりまぜたもので、木の芽あえはこれでたけのこやイカをあえたもの、木の芽田楽は豆腐にこれを塗った田楽である、
とあり(世界大百科事典)、厳密にいうと、「祇園豆腐」とは、「味噌」が少し違うようだ。
(木の芽田楽 https://myvegerecipe.com/201603denngaku/より)
「田楽」は、「おでん」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/471576969.html?1573934882)で触れたように、「おでん」に始まる。「おでん」は、
御田、
と当てる。
田楽(でんがく)」の「でん」に、接頭語「お」を付けた女房詞、
である。御所で使われたことばが、上流社会に通じたもので、それが民間に広がった。
田楽とは、
豆腐に限って言った、
ので(たべもの語源辞典)、「おでん」は、
豆腐、
と決まっていた。
「豆腐を長方形に切って、竹の串をさして炉端に立てて焼き、唐辛子味噌を付けて食べた。初めは、つける味噌は唐辛子味噌に決まっていた」
のであり、これが、
おでん、
であった(仝上)。「田楽」という名前の起こりは、
「炉端に立てて焼く形が田楽法師の高足の曲という技術の姿態によく似ているので、のちに、豆腐の焼いたものを田楽とよぶようになった、ともいう」
とある(仝上)。「高足」(たかあし、こうそく)とは、
「田楽で行われる、足場の付いた一本の棒に乗って飛び跳ねる芸。鷺足(さぎあし)とも呼ばれる」
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E8%B6%B3)。高足を串に見立てた意味がよくわかる。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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