擬製豆腐
「擬製豆腐」(ぎせいどうふ)は、
水切りした豆腐に野菜や卵などを加えて調理し、厚焼き卵のように焼いた料理、
を指す(広辞苑)。
義性豆腐、
義省豆腐、
とも当てるらしい(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%93%AC%E8%A3%BD%E8%B1%86%E8%85%90)。
ぎせどうふ、
ぎせ焼き、
とも言う。
精進料理の一種、
ともある(たべもの語源辞典)。
豆腐を用いた精進料理。崩した豆腐に下煮をしたごぼう、人参、椎茸、木耳、卵などを加えて焼くか蒸した料理、菰(こも)豆腐とも言う、
とある(http://gogen.bokkurigoya.com/archive/006553.php)。一般的には、
豆腐以外の材料を混ぜて豆腐のような形に仕上げる、
あるいは、
豆腐を原料としながら卵焼きのような別の料理に見せる、
から「擬製」という字を当てる、
とされる(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%93%AC%E8%A3%BD%E8%B1%86%E8%85%90)。だから、
ほぐした豆腐を元のような四角い形に作る(世界の料理がわかる辞典)、
いちどこわしてしまった豆腐を、もとの豆腐のように似せてつくる(たべもの語源辞典)、
ところから「擬製」の名がついた、とするのである。しかし、江戸時代の国語辞書『俚言集覧』には、
江戸山王神社の別当、勧里院の僧正、義性がこの豆腐を考案した、
とか、
奈良県円照寺の義省尼が作った、
からとする説もある(大言海・http://gogen.bokkurigoya.com/archive/006553.php)。刺身の切れ端や野菜の面取りなどをする時に出てくる屑のことを「手くず」というのだそうだが、
その手くずを上手に利用するのが精進料理の真骨頂。お寺では豆腐に手くずを混ぜて、焼く、蒸す、揚げるなどの料理を生み出してきた。擬製豆腐、五目豆腐、けんちん揚げ、飛竜頭、けんちん汁など、表彰ものの手くず料理が勢ぞろいしていて、しかも脈々と受け継がれている、
ともあり(仝上)、「精進料理」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/474633245.html)の系譜であることを考えると、寺院料理が発祥という説も考えられる気がする。確かに、
「がんもどき」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/476040938.html)、
に似た感じがして、「精進料理」っぽい。となると、「擬製」は、
僧侶が卵のような動物性食品を食用とすることが禁じられていたとき、豆腐の中にひそかに卵を入れてわからないようにして用いていた。カムフラージュしてつくったという意味で擬製の字が使われた、
ということになる(日本大百科全書)。ただ、
中国などにも類似の料理が存在することから外来の調理法である可能性も高い、
ともあり(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%93%AC%E8%A3%BD%E8%B1%86%E8%85%90)、「飛竜頭(がんもどき)」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/476040938.html)、「けんちん汁」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/477345064.html)、「けんちん揚げ」等々と考え合わせると、「普茶料理」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/474648427.html)なのかもしれない。
なお、天明二年(1782)に出版された料理本、『豆腐百珍』では、
ふはふは豆腐、
として、
鶏卵(たまご)ととうふ等分にまぜ、よくすり合せ、ふはふは烹(に)にする也。胡椒(こせう)の末(こ)ふる。鶏卵のふはふはと風味かわることなし。倹約を行ふ人専ら用ゆべし、
と載る(http://textview.jp/post/cooking/30383)。
もとの豆腐のようであるが、遥かにおいしい豆腐になる、
とある(たべもの語源辞典)。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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