2020年10月28日

濃い


「濃い」(濃し)は、

「浅し」「薄し」の対、

とあり(岩波古語辞典)、

物の濃度・密度が大きい、

意であり、

色が深い(⇔淡い 高向利春「花の色はただひとさかり濃けれども 返す返すぞ 露は染めける」古今和歌集)、
味・匂い・化粧などが強い(⇔「淡い 苦く渋くして滋(こ)き味はひ無けむ」金光明最勝王経平安初期点)、
生えているものの密度が高い(「果実も並に滋(こ)き繁くして大地に充満せしめ」仝上)、
液状の濃度が高い(「見れば沈丁子を濃く煎じて入れたり」宇治拾遺)、
霧やもやなどの濃度が大きい(「霧が濃い」「濃い靄」)

さらに、それをメタファに、

物事の程度が強い、

意に広がり、

何かの様子が強く表れている(「疲労の色が濃い」「敗色が濃い」)、
可能性・必然性の度合が大きい(「犯罪の疑いが濃い」)、
情愛の気持ちが強い(「情が濃い」)、
その人の個性がはっきりしていて、強い印象を受ける。目鼻立ちがはっきりしている顔や、特異な個性を持つ人など、広範に用いられ、必ずしも不快感を伴うとは限らない(「濃い顔」「濃いいメンバーが集まる」)、

さらに、

人間関係が密接である。交わりが深い(「などてかくはあひがたき紫を心に深く思ひそめけむ、濃くなりはつまじきにや」源氏)、

や、特に

紅色・紫色が深い(「かのしるしの扇は、桜の三重がさねにて、濃き方に、霞める月を書きて」源氏)、

意で使う等々といった意味の広がりをもつ(広辞苑・大辞林)

上代には、語幹「こ」の複合語がみられるのみで、形容詞としての確例は見えない。中古以降は、主として色や味について用いられる、

とある(日本語源大辞典)。「こ」は、

濃、

と当て、接頭語として、

濃紫(こむらさき)、
濃酒(こさけ/こざけ)、
濃染(こぞめ)、

等々色や液汁のこいことを示す(大言海・岩波古語辞典)。「こさけ」は、

醴、

とも当て、

濃い酒、

の意で、

ひとよざけ、

とも言うが、字類抄は、

醴、あまざけ、

とある(大言海)。「濃紫」は、

濃い紫色。赤みが少なく、ほとんど黒または紺に見える紫色、

で、とある(岩波古語辞典)。

三位以上の袍(ほう)の色などに用いた、

とある(デジタル大辞泉)。「濃染」は、

濃く染めてあること、

で、

ふかぞめ、

とも訓ませる(岩波古語辞典)。「こい」は、この「こ」の形容詞化とみられる。

その語源を、

こる(凝る)と語根、相通ずる、

とする(大言海)のに似ているのが、

「コ(凝固)+シ」で、煮凝りのように濃い意、

で(日本語源広辞典)、古く、江戸後期に、

コリシキ(凝如)の義(名言通)、

という説があった。「凝る」の語源には、

コはコ(濃)の義で、コム(込)のコと同じ(国語の語根とその分類=大島正健)、

という説があり、

物の濃度・密度が大きい、

意の「濃い」と通じる気がする。

コマヤカと義通い、細かい物の密集する有様をいう(国語の語根とその分類=大島正健)、

とも通じるのではないか。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 04:30| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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