2020年10月29日

凝る


「凝る」は、

こる、

と訓ませるが、

こごる、

とも、

しこる、

とも訓ませる。「こる」は、

散り散りにある同質のものがひとつに寄り固まる(広辞苑)、
液体など、流動性をもって定まらないものが、寄り固まって一体となる(岩波古語辞典)、

意であり、

ひとところに集まり寄る、凝結する、
冷えて固まる、凍る、

の意から、それをメタファに、

傾注する、熱中する、

意となり、

意匠などに工夫を施す、
筋肉などが張ってかたくなる、

という意となる。「こごる」は、

固まって堅くなる、

意だが、

コゴユ(凍)・コゴシ(凝)と同根、

とあり(岩波古語辞典)、「こごゆ」は、

コゴシ(凝)・コゴリ(凝)と同根、

で、

寒さで身体の各部分が堅くなる意、

であり、「こごし」は、

コゴゆ(凍)・こごる(凝)と同根、

で、

凝り固まっている、

意で、それから、

ごつごつしている、
けわしい、

という意で使われる。「しこる」は、

痼る、

とも当て、

固まる、

意だが、それをメタファに、

意地を張る、

意でもあり、また、

飲みしこる、

というように、

一事に夢中になる、
ふける、

意であり、「こる」「こごる」「しこる」「こごゆ」はつながっている。当然、「こほり」(氷)とも関わるとみていい。「こる」の語源諸説をみると、その関係が見える。

コル(固)の義(言元梯)、
コはコ(濃)の義で、コム(込)のコに同じ(国語の語根とその分類=大島正健)、
コは所、学ぶ所や好む所に心が集中することをいうところから(国語本義)、
コホル(氷)の義(名言通)、
コオ(冱)に諧調のラ行音を添えた語コオリを活用した語コオルから(日本語原学=与謝野寛)、
カル(離)から(続上代特殊仮名音義=森重敏)、

等々の中で、「こほり」との関係が注目される。抽象度の高い解釈よりは、具体物を表現したものの方が、和語にふさわしい。「こほる」は、

氷る、
凍る、

とあて、

平安仮名文では、コホリ・ツララは、水面に張り詰めた氷にいうことが多く、ヒ(氷)は固まりの氷に言うことが多い、

とある(岩波古語辞典)。「こほり」の語源諸説は、

水が凝り固まったものであるところからコル(凝)の転(滑稽雑誌所引和訓義解・類聚名物考)、
コゴリから(円珠庵雑記)、
コリヒ(凝氷)の義(和訓栞)、
ココリ(氷凝)の義(言元梯)、
コリヲレ(凝折)の転(柴門和語類集)、
コハリ(強)の義(名言通)、

等々と、どうやら「こる」「こごる」とつながる。

「こごる」の語源諸説をみると、

コイコル(凍凝)の義(大言海)、
コイコユ(凍凍)の義(和訓栞)、
語幹コゴは動詞クグム(屈・曲)のクグに由来する(続上代特殊仮名音義=森重敏)、
コゴエ・コゴシと同根(岩波古語辞典)、

等々、「こごゆ」との関係が気になる。

「こごゆ」の語源諸説を見ると、

コイコユ(凍凍)と重ねて意を強めた語で上二段活用が下二段活用に変化した語(大言海)、
コゴユルは古くコイといい、コホリイル(氷入)の義(名言通)、

等々、「こい」「こゆ」とつながる。「こい」は、

寒い、
凍い、

と当て、

凍える、

意であり(岩波古語辞典)、「こゆ」は、

此語(下二段)活用は違えど「凝る」(四段)と通ず、

とあり、「こる(凝)」へと戻ってくる。ちなみに「しこる」は、

シ(接頭語)+コル(凝る)、

のようである(日本語源広辞典)。

こう見てくると、抽象的な言葉より、具体的な指示に基づいた言葉の方が古いのだとすると、

こる→こゆ(氷)→こほる、

よりは、具体的な「凍る」のを見て、

こゆ→こほる→こる、

という変化なのではないか、という気がする。すくなくとも、「凝る」は、

凍ゆ(凍える)、
あるいは、
氷る(氷る)、

とつながり、それが語源のように思われる。憶説ではあるが。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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