2020年11月04日

伝法焼


「伝法焼」というものがある。

転法焼、
天保焼、

とも書く、とあり(たべもの語源辞典)、

土器焼、

ともいいhttps://www.recipe-ru.com/denpo-yaki-sample

たべもの語源辞典には、

伝法焼という一種の陶器があって、この陶器で焼いた料理、

を指す(仝上)、とある。伝法とは、

焙烙(ほうろく)という器の名称、

でありhttps://temaeitamae.jp/top/t2/kj/99_M/020.html

京都伏見稲荷山の伝法が池の底土で作った土器を使って料理したこと、

が「伝法」の由来とする伝承もあるらしい(https://www.recipe-ru.com/denpo-yaki-sample・日本語源大辞典)。「伝法焼」とは、その焙烙に、

ネギを敷き、その上にカツオ・マグロなどの刺身を並べて焼いた料理、

とある(デジタル大辞泉)。後に、

土器で料理したもの、

を一般に伝法焼というようになり、また

貝殻に詰めて焼くもの、

も「伝法焼」と呼ばれることもある(日本語源大辞典)。

「焙烙」とは、

素焼の浅い皿型の土器。灰焙烙といい,茶道で用いるものもある。火のあたりがやわらかいので,茶,ゴマ,豆などを炒るのに適する、

茶葉・豆・ごま・塩などをいるための土鍋。

とあり(百科事典マイペディア)、素焼きの浅く丸い皿形のものの他、

やや小型の丸い鉢形で筒状の持ち手のついたものがある、

ともある(食器・調理器具がわかる辞典)。

炮烙、炮碌、

とも書き、

ほうらく、

とも訓ませ(関東では「ほうろく」)、

炒鍋(いりなべ)、

ともいう(仝上・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%99%E7%83%99)。

伝法焼の原型は、

焙烙焼、

ともあるが、伝法焼は、

焙烙焼、

とはかなり異なる、ともあるhttps://temaeitamae.jp/top/t2/kj/99_M/020.html

焙烙.jpg


「焙烙焼」は、正確には、

焙烙蒸、

といい、

焙烙という素焼きの平たい土鍋を用いて材料を蒸し焼きにするから、

焙烙蒸、

という(たべもの語源辞典)、とある。京都では、文字通り、

ホウラク、

といい、

焙烙の底に塩と松葉を敷いて、松茸と骨切りしたハモを入れて焙烙をかぶせて蒸し焼きにし、果実酢をしぼりかけて熱いうちに賞味する、

とある(仝上)。讃岐には、瀬戸内海のタイ・サワラ・マツタケ・ハマグリ・クルマエビ・タマゴなどを並べ入れて蒸し焼きにした名物料理がある、という(仝上)。

まつたけのほうろく焼き.jpg

(まつたけのほうろく焼き https://www.bob-an.com/recipes/detail/04383より)

大言海には、「焙烙蒸」は、

多く松茸に云ふ、

とある。

因みに、「焙烙」は、

火炙器(ホイロキ)の義(燕居雑話)、
炒り焦がすことをホイロ(火色)をかけるなどというところから、ホイロキ(火色器)の義(物類称呼・俚言集覧)、
ホイログ(火色具)の義(名言通)、
焙炉具の字音から(外来語辞典=荒川惣兵衛)、
中国古代に殷の紂王が行った火炙りの刑を炮烙といい、あぶり焼く意から(語源大辞典=堀井令以知)、

等々の語源説があるが、たべもの語源辞典は、

炮は、ヤクとかアブルで、焙もアブルなので、同じに用いられている。烙はヤクである。火であぶって焼くということで、炮烙(あぶりやく)の字音そのままの名称、

とする。

炮烙、

は漢語で、

炮烙之刑、

があり、史記・殷紀に、

紂乃重辟刑、有炮烙之刑、

とある(字源)。しかし、ここから採ったとすると、ちょっと首をかしげる。

一方「伝法焼」は、

土器(かわらけ)、

で料理したものを指す(たべもの語源辞典)。享和元年(1801)の『料理談合集』には、伝法焼とは、

ごとうかわらけに、ねぎの白根をせんに切って敷いて、これを火にかけて少し焼いてから、カツオ・マグロなどを刺身のように切って、その上に並べて焼く。色が変わったら返して、下地をこしらえておいてかける、

とある(仝上)。『料理早指南』(1801)には、

焙烙にネギの白根を敷き、その上に鰹、鮪などの作り身を並べて焼き、煮返した下地をかけた料理、

とある(精選版日本国語大辞典)。確かに、「伝法焼」と「焙烙焼」は、別物である。しかし、

現在では玉子に具を入れて蒸し焼にしたものが多く、炮烙や貝殻を器に使うこともある、

とあるhttps://www.recipe-ru.com/denpo-yaki-sampleので、差はなくなっている。なお、

伝法な、

で使う「伝法」http://ppnetwork.seesaa.net/article/478236132.html?1604259879とは、まったく由来が異なる。

伝法焼(伊勢海老、鮑、銀杏、鼈甲餡掛け、山葵).jpg

(伝法焼(伊勢海老、鮑、銀杏、鼈甲餡掛け、山葵) https://www.recipe-ru.com/denpo-yaki-sampleより)

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:40| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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