2020年11月13日

こじり


「こじり」は、

鐺、

と当てる。「鐺」(漢音ソウ・トウ、呉音ショウ・トウ)は、

会意兼形声。「金+音符當(あてる、おしあてる)」

で、

こて、
なべ、

といった意であり、

こじり、

の意で用いるのは、我国だけである(漢字源)。

金文 鐺.png

(後漢・説文解字・小篆 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%90%BAより)

「こじり」は、

璫、

とも当てる(広辞苑)。「璫」(トウ)は、「みみかざり」の意だが、

椽頭(たるきのはし)の飾り、

の意があり、中国では、「こじり」の意は、「璫」の字を当てる(字源)。

さて、「鐺(こじり)」は、ふつう、

刀の鞘の末端につける装飾の金具、

の意で使う(仝上)が、もともと

垂木(たるき)の端、またその飾り、

の意である(仝上)。その意の「こじり」に、大言海は、

木尻、

と当て、

椽(たるき)の端、榱(スイ たるきの意)端、

とする。和名抄には、

榱、椽、太流岐、

とある。垂木(たるき)は、

古くは垂木(たりき)、又は、へぎ、

とある(大言海)。建築における小屋組構造材で、軒桁-母屋-棟木の上に等間隔に渡され、

頂上の棟木から垂らすように斜めに取り付けられているから「垂木」と呼ばれる、

とあるhttp://www.yaneyasan13.net/rafter

垂木.jpg


一つ草堂あり、津堂と云ふ、其の堂の軒の椽の木尻、皆焦がれたり、

と(今昔物語)ある。たとえば、仏教建築で、

十餘閒の瓦ぶきの御堂あり、たるきのはしばしは金の色なり(栄花物語)、

とあるように、

我が国の垂木は朱色を塗るだけで、一切の文様はありません。ただ、垂木の「鼻・木口」には銅板の透かし彫りに金メッキした「飾金具(青矢印)」を取り付けるかまたは、黄色で装飾いたしました、

とあるhttps://www.eonet.ne.jp/~kotonara/tarukinooha.htmのが、「椽端」である。

それが転じて、

木尻の飾りもの、

の意とも使われ(大言海)、

璫、

を当てるのは、もともと「こじり」の意で使うのは、「璫」の字をもってするからである。たとえば、班固・西都賦に、

裁金璧以飾璫、

とあり、その註に、

璫、椽端の飾り、

とあり、和名抄にも、

璫、古之利、

とあるところを見ると、「璫」と「鐺」が混同された、とみられる。しかし、「璫」が、

刀剣の鞘尻、多くは、其端を、金属(かね)、角、等々にて包み、飾りたるものに云ふ、

ようになって、あるいは、

金當の合字、

という(大言海)のが正解なのかもしれない。「鞘尻」の意の「鐺」には、

小尻(広辞苑)、
戸尻(図録日本の甲冑武具事典)、

とも当てる。

刀①.jpg

刀②.jpg

(鐺 デジタル大辞泉より)

「こじり」と似た意味で、

石突(いしづき)、

がある。もっぱら、

矛・槍・長刀(なぎなた)の柄の端を包んだ金具、

の意で使われるが、もともとは、

太刀の鞘尻を包んだ金具、

の意であった(広辞苑)。「太刀」http://ppnetwork.seesaa.net/article/464272047.htmlで触れたように、佩刀が,

太刀(たち),

であり、腰に佩く。腰に差すのは、

打刀(うちがたな)、

であり、太刀が主に馬上合戦用なのと違い、徒戦(かちいくさ)用に作られた刀剣である。武士の主流になっていく。

太刀は、後下りに佩くものなり、……太刀を佩きて蹲踞すれば、鞘尻は必ず石へつく、……庭上には、必ず甃(いしだたみ)あるべきゆえ、石づきと云へルカ(刀剣略説)、

とある(大言海)。さらに、

鐺の字を書きたるあるは、かなものの當るといふ二合字なり、

とし(仝上)、「いしづき」にも、

鐺、

を当てていることになる。古くは、

鐺金(こじりがね)、

ともいった(図録日本の甲冑武具事典)らしい。

石突(槍).jpg


これが転じて、

戈、槍、長刀などにも云ふ、

ようになる(仝上)。これがさらに転じて、今日、

杖、蝙蝠傘などの柄の地に突く部分に嵌めた金具、

にも云うが、既に古く、

樫の木の棒の一丈余りに見えたるを八角に削って両方に石突をいれ(太平記)、

という用例もある。

山中鹿之助幸盛 月岡芳年画「芳年武者无類」.jpg

(山中鹿之助幸盛 月岡芳年画「芳年武者无類」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A7%8Dより)

なお、「長刀」は、
「薙ぐ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/467233028.html
「槍」は、
「やり」http://ppnetwork.seesaa.net/article/451696531.html
「刀」は、
「かたな」http://ppnetwork.seesaa.net/article/450320366.html
「太刀」は、
「太刀」http://ppnetwork.seesaa.net/article/464272047.html
で、それぞれ触れた。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:こじり 垂木 石突
posted by Toshi at 04:47| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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