「釈迦豆腐」は、
葛粉揚げ、
釈迦揚げ、
とも言う。江戸時代の料理本『豆腐百珍』に、佳品のひとつとして、
釈迦とうふ、
中骰にきり笊籬(いかき)にてふりまはして角とり葛をあらりと米粒ほどに碎き豆腐に纏しつけ其まゝ煠るなり、
とある(http://www.chinjuh.mydns.jp/cgi-bin/blog_wdp/diary.cgi?no=1127)。
豆腐をサイの目に切って角を取り、葛を米粒大に砕いて豆腐にまぶし、油で揚げるものである。別に、
豆腐を中賽に切って、ざるに入れて振り回して、角をとる、
とある(たべもの語源辞典)が、これは、後述の「霰豆腐」と混同したもののようである。
葛を米粒大に砕いて豆腐にまぶし、油で揚げる、
とあるが、
米粒大位の大きさに砕いて豆腐にまぶしてくっつけてから、卵白をといてとうふにまぶしつけてから、油で揚げる、
ともある(仝上)。
「釈迦豆腐」は、
葛粉の粒々を釈迦の螺髪に似せた、
ところからの命名らしい(仝上)。「螺髪(らほつ 呉音で「ホツ」と訓む)」は、
螺(にし)状をした、仏像の髪型、
をいう。
螺髻(らけい)、
ともいう(広辞苑)。
(東大寺大仏の螺髪 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%9E%BA%E9%AB%AAより)
同じ『豆腐百珍』の尋常品の一つとして、
霰豆腐(あられどうふ)、
というのがある。これは、
よく水をおししぼり小骰(さい)に切り笊籬(ゐかき)にてふりまはし角とりて油にてさつと煠(あけ)る也 調味好ミしだひ、
とあり(http://www.chinjuh.mydns.jp/cgi-bin/blog_wdp/diary.cgi?no=1127)、
少し大きなるを松露(しやうろ)とうふといふ、
とある。
この系譜では、今日、
揚げ出し、
と言われるものがある。豆腐だと、
揚げ出し豆腐、
になるが、近世においては、
豆腐に限らず、茄子、大根、芋などについても衣をつけずに揚げ、これを「揚げ出し」と呼びました、
とある(語源由来大全)が、現在では、
揚げ出し、
は「揚げ出し豆腐」を指すのが一般的のようである。「揚げ出し豆腐」は、
片栗粉を豆腐にまぶして揚げたものと、小麦粉をまぶして揚げたものがある、
ようだが(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8F%9A%E3%81%92%E5%87%BA%E3%81%97%E8%B1%86%E8%85%90)、その「揚げ出し」の由来は、
油で揚げただけで他に手を加えずに出すところから、
揚げることによって水分を出すところから、
出し汁につけて食べることに由来する、
等々ある。
揚げただけで出す、
というところかもしれない。戦前まで、東京都台東区下谷元黒門町(現在の上野池之端)にあった老舗料理屋「揚出し」は、朝早くから揚げ出し豆腐を供し、風呂にも入れるということで吉原帰りの客に有名だった。同店は洋画家の小絲源太郎の生家、
とある(仝上・https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1038693185)。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95