2020年11月21日
重詰
「重詰」は、
料理などを重箱に詰めること、またその料理、
であり(広辞苑)、「重箱」は、
食物を盛る箱型の容器で、二重、三重、五重に積み重ねられるようにしたもの、多くは漆塗りで、精巧なものは蒔絵、螺鈿をほどこす、
で(仝上)、略して、
重、
ともいう(大言海)。「重箱」は、室町時代にその名が見られるが、
一般庶民に普及したのは江戸時代で、本格的に重箱が製造されてからである。武家や大名のもとでは、漆塗や蒔絵の豪華なものも作られた。また、狩りなどに出かけるときに持ち運びに便利なものも使用された、
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8D%E7%AE%B1)。もとは、
中国の食籠(じきろう、六角形や八角形の重ねて使用する容器)、
が、日本に伝来して重箱になった、とある(仝上)。
酒肴を、
鉢肴(はちざかな)、
と呼んだらしいが、それは、
鉢という器にさかなを盛ってだしたから、
という(たべもの語源辞典)。「会席料理」は「懐石料理」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/471009134.html)で触れたが、「会席料理」では、たとえば、
先付(さきづけ) 前菜
椀物(わんもの) 吸い物、煮物
向付(むこうづけ) 刺身、膾
鉢肴(はちざかな) 焼き物、焼魚
強肴(しいざかな) 炊き合せ等
止め肴 原則として酢肴(酢の物)、または和え物
食事 ご飯・止め椀(味噌汁)・香の物(漬物)
水菓子 果物
として出される(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%9A%E5%B8%AD%E6%96%99%E7%90%86)ように、「鉢肴」は、
会席料理に使われる言葉、
で、
食事の中盤に出される焼物、
で、懐石料理のメインの一品目にあたる。
魚の切り身を焼いたものや、一口サイズにカットされた肉などを出されることが多く、酒のつまみとして提供されるものであるため、ボリュームはそれ程多くありません、
とある(https://www.cookdoor.jp/japanese-food/dictionary/21471_japan_021/)。それが、やがて、「鉢肴」と並んで、酒肴として、
重肴(じゅうざかな)、
というものが現れる(たべもの語源辞典)。
重箱に詰めた酒のさかな、
の意である。で、
重箱肴、
という名称になり、
重詰、
となっていく(たべもの語源辞典)、という。「重詰」は、
時節の見舞いに贈ったり、花見遊山に携えたりした、
が(仝上)、「重詰」にする料理の品数は、基本的に、
三種、五種、七種、九種などの奇数とした、
とある(仝上)。
賀客饗応の用に供したものに、
喰積(くいつみ)、
というものがあった。江戸などで一般に用いられた、
取肴(とりざかな)、
で、「取肴」とは、
正式の日本料理の饗膳のとき、三度目に出す酒に添えてすすめる酒の肴。主人自身が漁猟したものや遠来の珍品などの心尽しの物を主人が取ってすすめるところからこの名がある、
とあり(精選版日本国語大辞典)、転じて、
酒の肴、
をもいうようになる(仝上)が、
食うべきものを集めて積み飾った、
ところから「喰積」の名がついた、とある(たべもの語源辞典)。
京坂では正月の床の間飾として据えおいたが,江戸では蓬萊のことを「喰積(くいつみ)」ともいい,年始の客にまずこれを出し,客も少しだけこれを受けて一礼してまた元の場所に据える風があった。蓬萊の飾物を少しでも食べると寿命がのびると信じられたのであった、
とある(世界大百科事典)。「蓬莱(ほうらい)」とは、
蓬莱飾、
の意で、
中国の伝説で、東海中にあって仙人が住み、不老不死の地とされる霊山、
とされる、
蓬莱山、
をかたどった台上に、松竹梅、鶴亀、尉姥(じょううば)などを配し、祝儀などの飾り物に用いるもの、
で、「すはま」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/473834956.html)で触れたように、
島台、
蓬莱台、
ともいう。関西では、
蓬莱飾り、
江戸では、
喰積、
といい、
三方の盤の上に白米を盛り、熨斗鮑・搗ち栗・昆布・野老(ところ)・馬尾藻(ほんだわら)・橙(だいだい)・海老などを飾った、
ようである(デジタル大辞泉)。
後に、これを、
重箱、
に詰めるようになった、ということらしい(仝上)。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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