2020年11月27日
さわす
「さわ(は)す」は、
醂す、
と当てる。「味醂」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/478678846.html?1606334116)で触れたように、
柿の渋を抜く、
水に浸して晒す、
の意があるが、この他に、
黒漆で光沢のないように塗る、
意もあり、その場合、
淡(さわ)す、
とも当てる(広辞苑)。また、
醂す、
淡す、
は、
あわす、
と訓ませて、
柿の渋を抜く、
意になり(広辞苑)、
さわす、
と重なる。だから、
渋を去った柿の実、
を、
さわし柿(醂柿)、
というが、
あわしがき(淡柿・漬柿)、
とも言い、
あわせかぎ(「あわしがき」の音轉)、
とも言うのは、憶説だが、
sawasu→awasu、
と子音「s」が脱落したのではないか。
なげすつ(投げ棄つ)→なげうつ(投げうつ)、
さばく(捌く)→あばく、
等々の例もある(日本語の語源)。岩波古語辞典には、「さはし」は、「さはしがき」(醂柿・淡柿)しか載らず、「あわし」(醂し)は、
アハ(淡)と同根、
とのみ載る。しかし、大言海は、
爽(さは)を活用せしめたる語(熟(うむ)す、腐(くさ)す)、
とする。「淡い」は、意味からは、渋が淡くなった、という意味で重なるが、
(雪などが)今にも消えそうである、
の意であり、それをメタファに、
淡白である、
転じて、
情愛や関心が薄い、
意で使う。「濃い」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/478150705.html)で触れたように、「淡い」は、
濃いの反、
である。「淡」とは考えにくい気がする。和訓栞に、「さわす」は、
醂の字を訓めり。物の渋みを去りて、サハヤカにするをぃへり、
とある。
漢字「醂」(リン・ラン)は、
会意兼形声。「酉+音符林(つらなる)」
とされ、
たらたらと垂れる発酵した汁、
の意で、「醂柿」は、酒を垂らして渋を去ったたる柿の意とある(漢字源)。ちなみに、「たる柿」とは、
渋柿を空いた酒樽に詰め、樽に残るアルコール分で渋を抜いて甘くした柿。樽抜き、
の意である(デジタル大辞泉)。ために、「醂」には、「ほしがき」の意もある(字源)。「さらす」に、
醂す、
と当てるのは、「醂」の本来の意味に適っている。
因みに、
さわ師、
とあてる「さわし」は、隠語で、
詐欺行為をするもの、
を言うとある(隠語大辞典)。「醂し」とはちょっと無縁に思えるが。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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