2020年12月15日

あざとい


「あざとい(あざとし)」は、

思慮が浅い、小利口である(広辞苑)、
無知浅薄だ、小利口だ、大人が子供っぽい浅はかな言動をする形容(岩波古語辞典)、

意で、

なま才覚あるをあざとしと云ふ(志不可起)、

とある(岩波古語辞典)。大言海は、「あざとい」に、

稚、

と当て、

あざとし「俗語なり、浅く聡しの義なるべし」(和訓栞後編)、

を引き、

児童に云ふ、関西語なり、

とある。どうやら、「あざとい」は、

子供の小才、

を言ったものらしい。それが、

大人の浅はかな言動、

を、子供ぽいとして「あざとい」といったものと想定される。それが最近では、

あざとい商法、

というように、

押しが強くて、やり方が露骨で抜け目がない、

と、より貶めた意味に転じて使われるようになっている(広辞苑)。

どうも「あざとい」は、近世に使われた言葉ではないか、という気がする。江戸語大辞典には、「あざとい」を、

気が利いているようで思慮が浅い、子供らしい、ばかばかしい

の意とし、

あざとさは雪見の留守で湯を沸かし、

という川柳を載せる。「ばかばかしさ」に意味のウエイトがある。その意味で、

幼稚、
稚拙、

の「稚」を当てたのは意味がある。「稚(穉)」(漢音チ、呉音ジ)は、

会意。もと「禾(イネ、作物)+遅(チ 成長が遅い)」で、稚はその俗字。成長が遅れて小さい作物、

とあり、「おさない」「ちいさい」意だが、どこかに「まだ伸び切らない、丈が小さい」という含意がある(漢字源)。

アサ(浅)くサトシ(聡)の義(和訓栞後編)、

が、「稚」を当てた含意に近い。しかし、

動詞アザル(戯れる意)と形容詞トシ(疾)の複合語(語源辞典・形容詞篇=吉田金彦・日本語源広辞典)、
アは接頭語、ザルは戯れる。トシは疾しでアザリトシの略か(上方語源辞典=前田勇)、

とする説もある(日本語源大辞典)。

アザル+トシ→アザトシ、

アサ+サトシ→アザトシ、
か、

何れかと決める根拠はない。ただ、

子供っぽい、

という含意と、

稚、

を当てた意味から見ると、

浅い+聡し、

を採りたい気がする。江戸語大辞典には、

あさどい、

という言葉が載る。

小利口だ、
小癪だ、
ばかばかしい、

と、「あざとい」とほぼ意味が重なる。

「へゝ、矢兵衛に頼ま待伏するとは浅どい奴」(文政六年(1823)小脇差夢の蝶鮫)、
「山家の猿の浅どい智慧で」(文政十年(1827)契情肝胆粒志)、

浅どい、

という当て字から見ても、また「あざとい」を、

「おはつどん聞ねへ、安さんはまたいつあさとひ事を言ひなんすよ」(寛政元年(1798)南極駅路雀)、

と、

あざとい→あさとい、

という転訛が見られることや、

あざとい→あさどい、

と転訛したものとみられることなどから、

浅い+聡し、

の証のように思える。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:32| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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