2021年01月21日

どぶろく


「どぶろく」は、

濁酒、
濁醪、

と当てる。

滓を漉しとらない酒、

の意で、

もろみ酒、
濁り酒(にごりざけ)、
濁酒(だくしゅ)、
白馬(しろうま)、

等々ともいう(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A9%E3%81%B6%E3%82%8D%E3%81%8F・広辞苑)。

日本の伝統的な酒のうち、米と米麹と水を原料として発酵させただけで漉す工程を経ていない酒、

である(仝上)。ただ、「どぶろく」と「濁り酒」とは区別される。「どぶろく」は、

米と米麹、水を発酵させただけのもので、しぼりやろ過を一切行っていない、もっとも簡単な造られ方をしているお酒、

で、清酒の定義は、

米と米麹、水を発酵させてこしたもの、

なので、どぶろくは清酒ではないが、「にごり酒」は、

透明ではない白く濁った酒であり、

発酵したお米をしぼる時、酒袋の目をわざと荒くして澱を残したままにされたもの、

で、清酒の一種とされるhttps://macaro-ni.jp/3299、とある。

どぶろく.jpg

(どぶろく https://www.senjyo.co.jp/dobucol/より)

「白酒」http://ppnetwork.seesaa.net/article/478932688.htmlは、

しろき、
しろさ、
しろささ、

と訓み、

御神酒(おみき)の一種、

を指す。「さけ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/451957995.htmlで触れたように、「き」は「さけ」の古名。

新嘗祭、大嘗祭に供え、

黒酒(クロキ)、

と並べ称す、とある(大言海)。白酒(しろき)、黒酒(くろき)は、

白貴、
黒貴、

とも書くhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E9%85%92

古醸なるは、詳らかならず、

としつつ、

或は云ふ、荒稲(アラシネ 平精(ヒラシラゲ))にて醸せるが黒酒にて、和稲(ニコシネ 眞精(マシラゲ))なるが白酒なるべしと、

とある(大言海)。「荒稲(アラシネ)」とは、籾のままのもの、「和稲(ニコシネ)」は、「にぎしね」ともいい、殻を取ったものを指す。

『延喜式』によれば、

白酒は神田で採れた米で醸造した酒をそのまま濾したもの、黒酒は白酒に常山木の根の焼灰を加えて黒く着色した酒(灰持酒)である、

と記載されている、とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E9%85%92。後に、

平安朝の頃は、白酒は常の酒にて、これに常山(クサギ)の焼灰を入れたるを黒酒とす。室町時代なるは、醴酒(アマザケ)を白酒とし、これを黒胡麻の粉を入れて黒酒を作れり、

とあり(大言海)、今日では、

清酒と濁酒(どぶろく)の組を白酒・黒酒の代用、

とすることも多いhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E9%85%92、という。

ところで、「濁醪」の「醪」(ロウ)は、

会意兼形声。翏(リョウ)は、入り交じる意を含む。醪はそれを音符とし、酉を加えた字。かすが入り交じっている濁酒、

とあり(漢字源)、

醸造してまだ濾過していない、どろどろの酒、

の意で、

濁醪(ダクロウ)、

は漢語である。因みに、甘酒は、

醴(レイ)、

といい、

一晩だけ醸してつくった酒、白酒、

である(仝上)。

醴酒(レイシュ)、

という(字源)。

で、「どぶろく」は、

濁醪(ダクロウ)の訛りなりと云ふ、また、どびろく(酴醿醁)の転訛と云ふは鑿(いりほが 穿ち過ぎ)ならむ、

とある(大言海)。梅園日記(1845年)に、

濁醪、俳諧新式に、ドブロクとあるを、俳諧通俗志には、酴醿漉と見えたれども誤りなり、(中略)松岡怡斎(恕庵)の詹詹(せんせん)言にも、ドブロクは、酴醿漉の転語なりと云へるも、その子松岡洙が按語に、ドブロクは、濁醪の轉語歟とある説あたれり、

とある(大言海)。「濁醪」は、和名抄には、

もろみ、

とあり、室町時代の辞書、下學集には、

濁醪(ダクラウ)、

とあり、江戸時代の節用集大全には、

濁醪白酒也、

とあり、方言辞典「物類称呼」(1775年)には、

関西にてどびろくと云ふ、関東にてはどぶろくとも、濁り酒とも云ふ、

とある(たべもの語源辞典)。「とびろく」というのは、

その色が酴醿(とび)に似ているので、酴醿漉(とびろく)と言い、清酒に対しての名である、

とある(仝上)。「酴醿」とは、

頭巾薔薇(トキンイバラ)の別名、

とある。頭巾薔薇は、

バラ科の落葉小低木。高さ約1メートル。葉は3~5枚の小葉からなる複葉。5、6月ごろ、八重咲きの白い花を開く、

とある(デジタル大辞泉)。物類称呼は、

酴醿漉、

を、

どぶろく、

と訓んでいる。「どぶろく」に、

酴醿漉、

と当てたのではあるまいか。

トキンイバラ.jpg

(トキンイバラ http://mie0123.blog44.fc2.com/blog-entry-440.htmlより)

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 05:03| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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