2021年01月25日


「枝」(漢音シ・キ、呉音シ・ギ)は、

支、

とも当てる。

幹の対、

であり、

会意兼形声。支(キ・シ)は「竹のえだ一本+又(手)」で、一本のえだを手に持つさま。枝は「木+音符支」で、支の元の意味をあらわす、

とある(漢字源)。手足の意では、

肢(シ)、

指の意では、

跂(キ)、

の字が同系である。

小篆  枝.png

(小篆「枝」説文(後漢) https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%9E%9Dより)

和語「えだ」は、もとは、

かき数(かぞ)ふ二上山(ふたがみやま)に神(かむ)さびて立てる栂(つが)の木幹(もと)も枝(え)も同じ常葉にはしきよし……(万葉集)、

と、一語であり、平安時代以後は、

梅が枝(え)、
花の枝(え)、

等々と、複合語に残った(岩波古語辞典)。

「えだ」は、もちろん、和名抄に、

枝、條、衣太、

とあるように、

幹から分かれた部分、

の意だが、これをメタファに、

四肢、

の意でも、

本家から分かれた一族、

本体から文脈したもの、

の意でも使う。和名抄には、

肢、衣太、

とあり、

さらに、その他、

雉ひと枝奉らせたまふ(源氏)、

のように、

木の枝につけた贈物を数えるのや、

いづくともなく長櫃一枝持ち来たり(御伽草紙)、
一柄、ヒトエダ、長刀(饅頭屋本節用集)、

というように、

細長いものを数えるのにも使う。

枝.jpg


古へは、心葉(ココロバ)として、贈物に生花、造花の花枝を添えたれば云ふ、

のが、始まりのようである(大言海)。で、大言海は、「えだ」を、

枝、
肢、
枝(接尾語)、

の三項に分ける見識を示す。

「えだ」は、もともと「え」一語だったとすると、語源はなかなか難しいが、「え(枝)」+「だ」の「だ」をどう考えるかになる。

エ(枝)にからだ(体)のダのついた語(岩波古語辞典・日本語源広辞典)
本言はエなり、エダは、枝出(えで)の轉か、小枝(コエダ)をコヤデとも云ふ、肢をもエと云ふは、身体の枝(エ)の義、又エダとも云ふは、枝手(エデ)の轉か(柄(エ)を、テとも云ふ)、ウタテ、ウタタ(大言海・日本語源広辞典)、

のいずれかと思われる。「うたた」http://ppnetwork.seesaa.net/article/477890130.htmlで触れたように、

うたた→うたて、

うたて→うたた、

の転訛は、結構古く、両用されてきたことを思わせるので、あり得るとは思うが、それよりは、「て(手)」の古形は、

於子之中、自我手俣(タナマタ)、久岐斯(くきし)子也(古事記)、
天皇(すめらぎ)の神の御子のいでましの手火(たひ)の光そここだ照りたる(万葉集)、

にあるように、

た、

であった。とすれば、

枝(エ)+手(タ)→枝+手(ダ)

なのではあるまいか。古形「た」は、

手(た)玉、
手(た)力、
手(た)枕、
手(た)挟む、

等々複合語の中に生きているのだから(岩波古語辞典)。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 05:06| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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