「いも」は、
芋、
薯、
藷、
蕷、
等々と当てる(広辞苑・大言海)。
サトイモ、ツクネイモ、ヤマノイモ、ジャガイモ、サツマイモなどの総称、
で(広辞苑)、
植物の根や地下茎といった地下部が肥大化して養分を蓄えた器官である。特にその中で食用を中心に利用されるものを指すことが多い。但し、通常はタマネギのような鱗茎は含めない、
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%8B)。
(ジャガイモの塊茎(地下茎) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%8Bより)
「芋」(ウ)は、
会意兼形声。「艸+音符于(ウ 丸く大きい)」
とあり、「いも」の総称。とくにサトイモをさす、とある(漢字源)。
「薯」(漢音ショ、呉音ジョ)は、
会意兼形声。「艸+音符署(ショ 集まる、中身が充実する)」。根が充実してふといいも、
とある。「藷」と同じで、「いも」の意。「薯蕷」(ショヨ)は「ナガイモ」、「蕃薯」(バンショ)は「さつまいも」、「甘藷」も「さつまいも」になる(漢字源・字源)。
「藷」(ショ)は、
会意兼形声。「艸+音符諸(ショ あつまる、中身が充実する)」、
とあり、「薯」と同じで、根が充実したいも、を指し(漢字源)、「甘藷」(カンショ さつまいも)と使う。「藷藇」(ショショ)は「やまのいも(やまいも)」の意になる(字源)。
「いも」は、鎌倉時代に菅原為長によって編纂された字書、字鏡(じきょう)に、
蕷、芋、伊毛、
と載り、古く、
使掘薯蕷(武烈紀)、
とあり、この場合、
山芋、
を指すと思われる(岩波古語辞典)。古くは、「いも」は、
山芋・里芋をさし、江戸時代中頃からさつま芋、末期からじゃがいもをいう、
とある(仝上)。
和語「いも」の語源は、古くは、
うも(芋・薯蕷)、
と言ったとあり(大言海・岩波古語辞典)、
沖縄にては、ウム、
とある(大言海)。語源説は、古名「うも」なら、
ウモの転(岩波古語辞典)、
ウモの転、ウヲ、いを(魚)、根塊に就きての名か(大言海)、
ウモ(埋も)の音韻変化(日本語源広辞典・日本古語大辞典=松岡静雄)、
ウヅムから埋むの転。土に埋めて蓄えるから(滑稽雑誌所引和訓義解)、
が、大勢のようだが、
ウヅマリミ(埋実)の義(日本語原学=林甕臣)、
も同趣と見ていい。
うむ(埋)の転訛、
とするのが妥当だろう。ただ、異説はある。
子をもつから、イモ(妹)となぞらえた(和訓栞・和句解)、
オモ(母)の転呼(言元梯)、
ウマシ(旨)の転(和語私臆鈔)、
イモのイはイキ(息)、イノチ(命)、スカル(怒)などのイとは共通で、内在するちからをいう。モはモモ(桃・腿)、モミ(籾)などのように、まるみのある身、まるい実をいう。イモはモが本体で、内容の充実したまるい物をいう意味になる(南島叢考=宮良当壮)、
しかし、どうしても、語呂あわせの屁理屈にしか見えない。複雑に考えれば考えるほど実態から乖離するのは、語源論の基本だと思う。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95