2021年02月28日

しめじ


「しめじ」は、

シメジダケ、

といい、

占地、
湿地、
占地茸、
湿地茸、
王茸、

等々と当てる食用キノコであるが、「原野湿地に生ずる」ので、

湿地蕈(しめじきのこ)

とも名づけられた(たべもの語源辞典)。だが、分類学的には定義が曖昧で、

キシメジ科シメジ属ホンシメジ、
キシメジ科シロタモギタケ属のブナシメジ、
ヒラタケ科ヒラタケ属のヒラタケ、

が含まれるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A1%E3%82%B8、とあるように、

千本シメジ、
カブラシメジ、
ヌノビキ、

等々の異名も多く、

(白色の)シロシメジ、
(黄色の)キシメジ、
(黒ずんだ)シモフリシメジ、

などがある(たべもの語源辞典)。総称的にシメジと呼んでいるが、植物学的には、「しめじ」は、

キシメジ科のキノコ、とりわけキシメジ科シメジ属のホンシメジ、

を指しhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A1%E3%82%B8

匂いマツタケ味シメジ、

といわれるのは、ホンシメジである。別名、

ダイコクシメジ(大黒占地)、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A1%E3%82%B8。ホンシメジは、生きた木の外生菌根菌であるために栽培が非常に困難であり、ほぼ天然物に限られ稀少なため高級品とされる。ほとんど流通していない(仝上)。しかも、

ホンシメジはとった翌日になると味が落ちる、

とある(たべもの語源辞典)。

ホンシメジ.jpg


場合によっては、漠然と他のキシメジ科のキノコ、

シメジ属のハタケシメジやシャカシメジ(センボンシメジ)、
シロタモギタケ属のブナシメジ、

等々も含めた総称とされることもある(仝上)。かつて「ホンシメジ」の名で流通していたのは、キシメジ科シロタモギタケ属のブナシメジの栽培品である。スーパーなどで必ずと言っていいほど販売されている「シメジ」は、ブナシメジであるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A1%E3%82%B8

ブナシメジ.jpg

(ブナシメジ 菌床栽培品 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A1%E3%82%B8より)

ホンシメジは、菊の花が咲くころ、松のまじったミズナラやナラの雑木林に五、六本ずつかたまって列をなし、毎年同じ場所に生える、

とある(たべもの語源辞典)。ために、「シメジ」の名は、

コナラなどの根元に群生し、地面を占領するところから「占地」

とする説がある(仝上)。他に、

湿出(しめい)づの約(大言海・日本語源広辞典・たべもの語源辞典)、
湿地(しめぢ)に生ずるところから(衣食住語源辞典=吉田金彦)、
茅(ちがや)の多く生えた地にあるところから、シメヂタケ(標茅茸)の義(本朝食鑑)、

その他、

シジムレイデタケ(繁群出茸)、
鎌倉時代の書物に夏の異称として「しめじ」があることから「夏頃に発生するきのこ」の意、
ソヒ、ムレ、タケの反シメテの転、

等々とする説もあるが、常識的には、「湿地」とも当てるので、

湿ったところから出る茸ということでシメイズ(湿出)、
湿地(しめぢ)に生ずるところから、

というところに落ち着くのだろうが、「占地」と当てるところから、

「しめじ」とはもともと「標地」、つまり菌輪をつくって生えるきのこのことではなかっただろうか、

とする説を見つけた。

「しめる」(古語「しむ」)という言葉は、現在の「占める」とはニュアンスが違うので、折口はわざと「標めた」と書いている。『日本国語大辞典』によれば、「しめる」の古い意味は「標(しめ)を張って自分の占有であることを示し、他人の立入りをとめる」こと、そして「標」とは「神の居る地域、また、特定の人間の領有する土地であるため、立入りを禁ずることを示すしるし」であった。「標」にはいろいろな形があるが、その代表は縄で周囲を囲うもので、それが「縄張り」の語源である、

とするものである(三浦励一「『しめじ』の語源について」)。

あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る(万葉集)、

の「標野」(しめの)は、一般人立ち入り禁止となっている野原のことである、と(仝上)。これは、

占地、

の「占」に特殊な意味を持たせたものである。これは、

地面を占領するほど一面に生える、

という意味であるが、「占」(セン)は、

会意。「卜(うらなう)+口」。この口は、くちではなく、ある物ある場所を示すむ記号。卜(うらない)によってい、一つの物や場所を選び決めること、

とある(漢字源)。あるいは、

「卜」(甲骨の割れ目の象形、うらない)+「口」の会意、説文解字に「視兆問也」とあり、うらないの結果を口述すること。「口」は神器とも(白川)。うらないの結果により物事が決まることから、確定し動かないことを意味する、

ともあるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%8D%A0。わざわざ「標」に当てなくても、「占」には、ただ「占有」という意味だけではなく、「占卜(センボク)」ともいい、ある意味特別な地である意味がある。穿ち過ぎではないか。

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
三浦励一「『しめじ』の語源について」http://chibakin.la.coocan.jp/kaihou34/p19-21shimeji.pdf

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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