2021年03月09日

糝薯


「糝薯(しんじょ)」は、

真薯、
真蒸、
真丈、

とも表記しhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E8%96%AF

糝蒸、

と書くものもあり(たべもの語源辞典)、

しんじょう、

とも呼ぶhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E8%96%AF

エビ、カニ、魚の白身などをすりつぶしたものに、山芋や卵白、だし汁などを加えて味をつけ、蒸したり、ゆでたり、揚げたりして調理したもの。お吸い物やおでんの具にしたり、直接薬味をつけて食べるなどする(仝上)、
魚、鳥、蝦などの肉のすりみに、すった山の芋・粉類を加えて調味し、蒸しまたは茹でたもの(広辞苑)、
魚をすりつぶし、すったヤマノイモを加えて調味し、蒸したり揚げたりゆでたりした練り物(デジタル大辞泉)、
すり身にした魚や鳥肉に、卵白やだし汁で味をつけてすりまぜ、固めて蒸したもの。わさび醤油でそのまま食べたり、吸いものの実にする(精選版日本国語大辞典)、

等々とあり、

糝薯を油で揚げたものを揚げ糝薯、海老を使ったものを海老糝薯、

といい、糝薯の上物とされた、という(たべもの語源辞典)。川柳に、

野田平がけに親玉の海老糝薯、

とある。野田平は蒲鉾屋、親玉の海老は団十郎にかけている、とある(仝上)。

「糝薯」の「糝」は、「糝粉」http://ppnetwork.seesaa.net/article/480366901.html?1615060023で触れたように、「糝」(シン、サン)は、

こながき。米の粉をかきまぜて煮たてたあつもの、

の意だが、

米粒、

意でもあり(字源)、「糝粉」は漢語で、

粳米の粉、

の意である(仝上)。もともと、「糝薯」は、

古くは米の粉とヤマノイモを原料としたことからこの名がある(「書言字考節用集(1717)」)、

ので(精選版日本国語大辞典)、本来、

糝薯、

と思われる。「糝薯」の「糝」は、

ねばるという意味から用いられている、

という(たべもの語源辞典)のは、確かに、

魚肉をすり鉢ですったところに、薯(山の芋)を加えてさらにすったものは粘ったものになる、

けれども、

この状態をあらわしたのが糝であり、薯を加えてつくったものであるから、この字が用いられた、

とする(仝上)のは、「糝」の意味から考えると、後世のこじつけではないか。むしろ素直に、

古くは米の粉とヤマノイモを原料とした、

からこそ、「糝」(こめつぶ)と「薯」(山の芋)と当てたと見るべきではないか。

「いも」http://ppnetwork.seesaa.net/article/479827829.htmlで触れたように、「薯」(漢音ショ、呉音ジョ)は、

会意兼形声。「艸+音符署(ショ 集まる、中身が充実する)」。根が充実してふといいも、

とある。「藷」と同じで、「いも」の意。「薯蕷」(ショヨ)は「ナガイモ」、「蕃薯」(バンショ)、「甘藷」は「さつまいも」になる(漢字源・字源)。「とろろ汁」http://ppnetwork.seesaa.net/article/479813734.htmlで触れたように、「やまいも」は、

山芋、
薯蕷、

とあて、

ヤマノイモ(山の芋)、

と同じである。鎌倉時代に編纂された字書『字鏡(じきょう)』には、

薯蕷、山伊母、

と載る。山野に自生するので、

自然生(じねんじょう)、
自然薯(じねんじょ)、

と言った。これは、里芋に対して、山地にあるから

ヤマイモ、

と言ったのである。漢名は、

薯蕷(じょよ)、

とされるが、牧野富太郎が、これはナガイモの漢名としている(たべもの語源辞典)のは、

古くは中国原産のナガイモを意味する漢語の薯蕷を当ててヤマノイモと訓じた、

からである。「糝薯」「糝」「薯」の字を当てたのには意味があるはずである。

「糝薯」が創めて出るのは、元禄時代(1688~1704)、文化・文政(1804~30)頃に大流行した、という(仝上)。

八百善の四代目当主、栗山善四郎によって著された江戸料理の献立集、『料理通』(1822年)によれば玉子(たまご)の白みだけを加えたものを蒲ぼこ、薯蕷(やまのいも)と鶏卵(とりのこ)の白みを加えて練ったものを真薯というとされている、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E8%96%AF。似たものに、

はんぺん、

があるが、これはすり下ろした白身魚に山芋を加えて練ったもので、主に関東で食されていた(仝上)。なお、「はんぺん」http://ppnetwork.seesaa.net/article/479729382.htmlについては触れた。

えび真薯揚げ.jpg

(えび真薯揚げ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E8%96%AFより)

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:糝薯
posted by Toshi at 04:45| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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